銀婚式

著者 :
  • 毎日新聞社
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感想 : 70
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107752

感想・レビュー・書評

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  • なぜタイトルが銀婚式かってそう来ましたか。篠田節子は女性なのに良くここまで男性の半生を書くなと。海外勤務の長いサラリーマンって設定も篠田節子多用するよな。リストラ、鬱、介護とか色んな現代的な要素が出てくるけど全体的にはぼんやりした印象。

  • 一流大学卒業、証券会社入社後に留学、MBAの資格を取りニューヨーク勤務。
    一人息子ができ、マンハッタン暮らしも順風満帆に思えた・・・。

    が、妻の体調不良からすれ違い、離婚。
    証券会社も不況のあおりで破たん。
    日本に戻り、友人の紹介で保険会社に勤めるが、リストラ処理で自ら精神を追い詰めることになり、退社。
    そして9.11で友人を亡くす。

    新しい仕事は、地方の三流私立大学の講師。

    経済学はもとより、高校レベルの数学も英語もままならない学生。
    学部長ににらまれながら補習授業を行い、学生たちに基礎を叩き込む。

    学生への人気取り、セクハラ、学長をめぐる派閥争い。

    そして息子の成長と交流。
    自分の道を歩み出した息子。
    元妻の両親の介護問題、そして自分の両親の死、弟夫婦との軋轢。

    離婚してから気ままな一人暮らし、男の本文は仕事だと、人一倍仕事に打ち込んだ。
    そして彼に最後に残ったものは。。。

    気楽な単身男性の仕事や恋やそれにまつわる挫折やら、

  • モーレツサラリーマンの離婚と挫折と再生物語。
    気がついたときは、銀婚式の年月が経っていた。

  • H25/3/31

  • 2013 2/20

  • 「隣の芝生は決して青くはない」

    エリート証券マンとしてニューヨークに勤務していた高澤修平は、海外での生活に疲れた妻が息子を連れて帰国ししまったことをきっかけに離婚することになる。以来、独り身となった高澤だったが、転職、若い恋人への失恋、息子の受験、親の死、など波乱の人生は続く。

    一般的な家族や家庭を描いたら、自分が読んでいる中では奥田英朗さんとともに篠田節子さんは絶品だなあと思う。そのリアリティーの見事さに舌をまく。

    異界の話ではない。けっして突拍子もない出来事が起こるわけでも、鮮やかなトリックが繰り広げられるわけでもない。どこの家でも起こりうる一つの家族の風景を描く。

    にも関わらず、自分が高澤の人生から目が離せず一気読みしてしまったその理由を思うとき、これは「他人の家の内情を覗き見する気持ち」にほかならない。

    「隣の芝生は決して青くはない。」と篠田さんは断言する。どこの家にも他人様には口にできないような悩みや問題は一つや二つあるものだろう。他人の不幸を知って「ウチのほうがまだマシ」と思うことがいかに卑しいことか頭ではわかっていても、人の気持ちの中では多かれ少なかれやっているのもまた真実なのだ。でも現実でそれを口にしたら友達無くす…。

    だからこそ小説という形で、そういう気持ちを消化させてくれる篠田さんの作品は世の中に欠かせないものだと思う。「銀婚式」は毎日新聞の日曜版に連載されていたものらしい。けっして前向きな形ではないかもしれないけれど、隣の芝生はけっして青くはないーと、篠田さんに断言されて、勇気づけられた人は多くいたのではないだろうか。

  • 長編で一貫して単一視点というのは珍しいかも?
    篠田節子の描くエリート中年サラリーマンの典型みたいな主人公。最初のほうはオシゴト小説風で、盛り上がってぐんぐん読めた。が、ふと気づくと、主人公、挫折を繰り返しているようで、実は結構ラッキーな境遇。そんなうまくいくもんかね、と、ちょっとしらける。主人公はいわば敗北を重ねているのだが、負け方がカッコよすぎるんだよね。あと、うつ病はあんな簡単に治らないような…。実際には抑うつ状態になっちゃったくらいだったんだろう。
    さらに、本人の境遇だけでなく、保険会社時代の個人代理店の老人たちや、大学時代の学生たちとの交流が、イイ話だなあ風になっていて、そんなうまくいくもんかね、と鼻白む。それで後味いいのはいいんだけど。
    そして「銀婚式」というタイトルを考えると、主人公の仕事人生を描いているようで、実はそれは単なる枠組みに過ぎず、いろいろ苦労を重ねているようなのに、プライベートな関係の相手に対する身勝手さが全然変わっていないのに驚くのであった。でもまあそういうものかもね。
    銀婚式という言葉は、一時恋愛関係になる若い(といっても30代)女性と、離婚した元妻が発するのだが、2人はよく似ていて(楚々として育ちがよく、決して自分の要求を声高に言ったりしないタイプ。それが好みのようだ)、かなり苦い離婚を経た後(仕事上も苦労を重ねた後)の若い女性との恋愛においても、主人公は自分の都合で相手が何を考えているかに思いを馳せることなく、破局するのでった。別れを告げられる場面のイタさは、『ヴィリ』(山岸凉子)で、自分がプロポーズされると思い込んだ主人公が娘との結婚を申し込まれる場面に匹敵するわ。また、元妻が老両親の介護を抱えた状態のため、受験を控えた息子を預かろうと言うところも、いや、息子は大変な状態の元妻の唯一の心のよりどころ(実際上の助けでもあろう)、それを奪っちゃって、介護だけやらせようなんて、その酷薄さにびびった。
    主人公視点でしか描かれないため、元妻はめんどくさい女、恋人はずるい女に見えるっちゃ見えるのだが、実親&実家の面倒を押し付けた弟夫婦(特に弟嫁)の辛辣な言葉を見ると、主人公アゲが目的ではないんだろう。
    ラスト、元妻と復縁するのかな、と思わせつつ、お互い大変な時にバラバラで苦労も分かち合わなかったんだから、年数だけたっても、銀婚式にはならないんだろうな、と、索漠たる思いになる。

    どうでもいいんだが、主人公は1960年頃の生まれのようだが、それで、1回寝たら即相手の親に会う(結婚想定して)ってちょっと違和感あったのだが(しかも相手は30代の大人の女)。

  • 今までの篠田節子の作品とは少し雰囲気の違う作品。
    真面目で不器用な主人公の高澤の半生を描く。
    勤務する大手証券会社の米国支社勤務中に妻から離婚を告げられ、さらにその会社のまさかの倒産。それに続く残務処理。苦労の末に転職した保険会社の不況下での経営戦略やリストラの先頭に立ち、その結果鬱病になり退職を余儀無くされる。
    新たな求職活動中に偶然再会した知人から紹介された地方の私立大学の講師の職が主人公の最後の職業となる。
    教授職につき恋人も出来るのに、別れて暮らす息子の大学受験にかまけているうちに恋人と疎遠になってしまう。挙げ句恋人からも別れを告げられる。
    全く要領の悪い人である。しかも題名の「銀婚式」って誰との?、と疑問を抱きながら読み進めるといる別れた妻と何と無く寄り添って行く姿にやっと題名の意味を理解する。
    いつもテーマが大きな割に終わり方が何となくしりすぼみ感の否めない作品が多かったが、これはまあまあかと思う。年齢が近いからそう思うだけかも知れないけど。

  • 結婚をしてから25年めを銀婚式と言うそうだ。
    この25年は、結婚して順調に子供が産まれたらその子が大学を卒業して社会人となるまでの年月と等しい。この年月の間、人はみな平和に暮らしていられるのだろうか。

    作者は人生の罠に翻弄する男性をテーマに書くのがお得意の篠田さんである。この作品ももちろん、一人の男性の波乱万丈の人生を書き綴っていた。

    大手証券会社に就職し海外勤務になったのもつかの間、妻の病気がもとで離婚をし、長男も妻にあずけて文字通り単身になった主人公。さらに親会社が倒産し、失意のうちに帰国して、再就職を捜す。中堅損保会社勤務をへて主人公が得た職業は、東北地方の三流大学の派遣臨時講師だった。「都落ち」のように東京から東北へ移り住む。ときおり尋ねて来る長男の成長ぶりを見守りながら、大学で仕事をしているうちに、10年、20年がたった。そして25年目に…。

    人生のワナにはまり込んでいく男性の姿はある意味滑稽だが、今回は現実的な社会問題もテーマになっていた。離婚、受験、病気、死、介護などだ。小説だからとは思えない問題、明日はわが身かもと思う問題などが、主人公と離婚した妻の間に次から次へと出てくる。
    離婚しているのになぜ?とも思うが、長男の進学問題などはやはり実母と実父でないと対処できないのだ。親子の絆は切れないということだろう。

    こうして、主人公の25年を考えると、
    よくまあこんなに問題があるものだと感心する。
    ある意味、この25年は辛抱の年月なのだろうか。
    銀婚式を迎えるとき、
    お互いに「御苦労さま」「ありがとう」などと口をついて出るようだが、
    なんだかわかるような気がする作品だ。

  • 主人公は男性だけど、考え方とか似ているのかも…私。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

篠田節子の作品

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