貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

  • みすず書房
4.09
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感想 : 111
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076513

感想・レビュー・書評

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  • 内容は非常に素晴らしい。が、訳が少し残念。

  • V・バナジー、E・デュフロ(山形浩生訳)『貧乏人の経済学』みすず書房、読了。貧困からの脱却は経済学の主要なテーマ。本書は理論の単純な解答と論争より、現場取材と実験経済学の手法から等身大の解決を提案する。貧乏人は非合理でも怠惰でもない。状況下で合理的選択をしているが限界もある。

    貧乏人は非合理でも誘惑に弱い怠け者でもない。目下の条件の中で合理的に行動しているにすぎない。では問題はどこにあるのか。例えば、子供たちを違う環境へ送りたい。しかしその選択は必ずしも合理的ではないということだ。

    よくも悪くも教育が脱出へのチャンスとなる。しかし親たちには、子供を教育に通わせる魅力がないのも事実。勉強させるよりも働かせた方が収入は増えるし、教育とは金持ちエリートの特権という思いこみも存在する。

    貧困撲滅の特効薬は存在しない。先ずは、貧乏人の声に耳を傾け、彼らの選択の論理と現状を理解することから始めよと著者はいう。貧困は不可避に再生産される。だとすれば「目の前の不正義を解決する知恵を出す」(セン)しかない。

    途上国の犠牲の上に活動が成立する先進国の人間には(勝ち組でも負け組でも)貧困の実態はよく分からない。本書は副題の通り「もういちど貧困問題を根っこから考える」。経済学の素人でも読みやすい一冊。支援か自立かの二元論の襞に分け入る。

    スピヴァクの言葉を思い出す。「フーコーらは資本主義下での抑圧構造を分析し、抑圧される側が社会変革の主体であるかのように説いた。しかしその理論は、経済発展を遂げた先進国でしか妥当しないという。しかも、先進国の住民は金持ちも貧乏人も、第三世界の経済的犠牲の上にいる『勝ち組』だ」。

    声は奪われ続けていく。

  • 貧困の経済学ではない点に注目する。
    マクロ経済における「貧困」問題が、個別の事象においてし実態を表していないことについて細かく述べている。合理主義的な個人の経済活動ででゃまく、バイアスや購買心理、保険や貯蓄に対する姿勢について、個別の事象に詳しく、その対比の中で我々の購買活動の心理への洞察が深まる点が面白かった。

  • 貧困にあえぐ人たちが、貧困から抜け出せない理由を分析した本。今日の食料に困るほどの貧困であれば別であるが、一般に稼ぎの一部を翌日に繰り越せれば貧困から脱出できるはず。しかし、実際には一定以上の収入がなければ、貧困のスパイラルから抜け出せないことをデータから示している。なかなか興味深い。
    定期的に貯まった貯蓄で投資出来れば段階的にステップアップ出来るはず。しかし、収入の多少にかかわらずテレビのようなものの購入意欲は変わらないので、本来向けられるべきものにお金が使われないことあげられている。
    多くのデータを提示して、説得力のある説明である。

  • 供給ワラーと需要ワラーという視点を比較しながら、マクロな社会調査データと、ミクロな実地調査を組み合わせることで、貧困の真実に迫る貴重な書籍。

    私自身、知らず知らずに国連のミレニアム目標を盲目的に信じていたが、先進国の援助モデルは「貧困の罠」と言われる「貧困であるのは、特別な地理的/歴史的条件があるからであり、その罠から抜け出すためのビッグプッシュを行うべき」という(供給サイドの)論理に偏りがちである。

    しかし、本書では、貧困であるがゆえに、多少の収入の増加があっても、それを将来の健康、教育などに投資することよりも、嗜好品によった食品、娯楽に投資しがちであることや、QoLを高めるといっても、情報の不足、(なにがQoL向上につながるかの)信念の稀弱さ、問題の先送り(デブスモーカー問題:分かっちゃいるがやめられない)が起きやすいと指摘している。

    つまり、貧困の現場の行動原理と、私たちの身近な行動原理は、同じ人間だもん、変わらないよという見え方も生まれてくる。

    だからこそ、大事なのはよい行動を「あと押し」するデザインであるという切り口には大変共感した。

    本書では、供給/需要いずれかに偏ることなく、供給ワラーのアプローチではそれを受け取る側のマインドセットによってうまく機能しない場合を考慮すべき、需要ワラーのアプローチでは自由意思と市場原理が機能しない要因があることを想定すべき、と両者の弱みをみきわめつつ、強みを組み合わせるアプローチを提唱しているように思う。

  • 読みたいと思っていたらちょうどレポートの課題に!期待以上の内容。
    根底にある考え方は変わらないにも関わらず、環境や制度によってこれだけ消費者行動は変わるものなのかと考えさせられる。

    とにかく、レポートやばい…笑

  • 331.87||Ba

  • ファンダメンタルな理論の意見対立から現場の試行錯誤まで幅広く取り上げられて、貧困支援とか開発経済の問題意識を知るにはいい一冊。でもちょっと記述がだらだらしてかったるいかなー。アマルティア・センのほうがまだ読みやすかったか。

  • 有効な援助方策を見出さんがために、いくつもの貧困社会で「実験計画法」を使う、というのは、ちょっとアブナイ話ではないのか。レヴィ=ストロース的「民俗学」という西洋至上主義がにじみ出ているぞ。

  • 貧乏人も、与えられた環境化で合理的な判断をして生活している。だから援助をする場合には、現場での人々の判断基準や、ささいな障害を正確に捉えることで効果的な援助が期待できる。
    また、援助が無い状態では貧困の罠にはまってしまう場合には、最低限の援助を行うことは効果的であり、何も援助せずに住民の自由に任せるだけでは何も生まれないことが想定される。

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