貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える

  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622076513

感想・レビュー・書評

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  • 本書は最新の開発経済学の潮流をわかりやすく説明したものである。本書では、近年開発経済学の研究で見られるランダム対照試行の研究結果概要を、従来の開発経済学での議論と比較した上で解説している。結果として、従来の開発経済学での議論に整合的なものもあれば、そうでないものもあり、開発経済学での議論のリアリティを付与しているという意味で意義のある一冊である。もちろん、ランダム対照試行のいう分野が発展的であり、国や人種が違えば異なる結果が出ることだってありうるわけだから、本書で示されてるランダム対照試行の結果やその解説を鵜呑みすることは危険である。
    ランダム対照試行は、大雑把に言えば開発経済学に行動経済学の手法を取り込んだものであるが、それのみならず(本書ではあまり解説されていなかったが)ミクロ計量経済学の分野とも非常に密接な関係にある分野なのだろうと感じた。具体的には、ミクロ計量経済学には、例えば教育政策といった政策に対する政策評価分析を行う分野があるが、そこで扱われるサンプルの仮定などは、まさにランダム対照試行におけるサンプルの仮定の議論と同質である。
    もちろん、このようなランダム対照試行に対する批判もある。具体的には、その試行によってどこまで説明できるか、といった批判である。この批判は先述したミクロ計量に関わるものでもあり、ミクロ計量や行動経済学の発展にともないこれらの社会科学としての在り方が問われてくるのだと思う。

  • 机上の理論じゃわからない実態は大変面白く読めるが、なぜ、となると首を傾げ、更にどうするか、になると腰砕けというかほぼ何も言っていないに等しい。
    ちょっとタイトルが大上段に構えすぎたか。エッセイにした方が気楽に読めたのでは。

  • 長年かけて集めた具体例が多く紹介されているため、経済学など知らずとも現状がよくわかります。

    個人レベルで聞くと、貧困生活者が貧困から抜けられない理由にとても納得がいきました。私も彼らも、大差はないということが。

  • 貧困から抜け出す為の特効薬はない。周りも貧困だから貧困になる。つまり、環境が一番の要因である。けれども皆が知恵を出し合って、より良い社会を作る努力はしなければならない。

  • 本書は、途上国の大部分を占める貧困層を、特に意思決定の方法に焦点を当てて彼らの生活を分析し、それを開発政策に組み込むことを主張するものである。

    ODAなどの開発政策を議論するに当たって、大まかに2通りの意見がある。一つは、イースタリーが代表的な論客であるように、途上国そのもののボトムアップ的な成長を志向するものであり、そのためにはODAは不要だとする意見である。他方、サックスが代表するように、途上国の成長には紛れもなくODAが不要であり、ネックとなっている構造を変革するためにビックプッシュ的なODAの活用を求める立場にある。

    バナジーとエスターはこれらを批判的に検討する。といっても、それら2つの意見が無意味だというのではない。そうではなく、双方ともに正しい部分はあるといえる一方で、途上国を語るにあたって決定的な視点が抜け落ちていると指摘する。それはすなわち、途上国の貧困層が持つ視点である。このように、貧困層とおなじ目線で、どんなに些細な行動からでも彼らの意思決定パターンを把握し、それを開発政策に取り入れよ、というのがバナジーとエスターの主張である。

    貧困層とおなじ目線に立つことで、私たちが信じている通説に誤りがあることがわかってくる。例えば、飢えに苦しむ人でもぜいたくはするし、マイクロファイナンスは思ったよりすごくないといったものである。これらを明らかにする分析ツールとしてRCTの有効性を主張するのである。RCTを開発の現場に取り入れたその斬新さはさることながら、意思決定に着目している点で行動経済学の応用であり、これらは本書の貢献だと言えるだろう。

  • 大分前に、あまり中身を確認せずに、貧乏人の面白おかしい話と勘違いして買った。読み始めて、しまった、と思ったけど、これが面白かった。

    著者は、貧困の現場で、いかに実効性のある対策プログラムを開発するかというお仕事をされている人たち。

    ばらまけばよいというものではなく、人々をいかに動機づけるか、ということが問題になってくるという面は、少し、経営などの問題とも似ていると感じる。

    貧困と聞くと、またかわいそうなアレとかやるせないアレを聞かされるのじゃないか、と身構えてしまっていたのだけど、僕は、貧困に対するという事がどういう事なのか、実は全くわかっていなかった。これは予想以上にサイエンスだ、と思った。

  • 各所で評判の"Poor Economics"、評判に違わず物凄く面白かった。一度読み始めたらページを繰る手が止まらなかった。

    一見不合理な選択を続ける途上国の人々の意思決定の裏にはどんな論理があるのか。そしてその論理に耳を傾けることで、はじめてどんな援助が有効なのか答えが得られる。

    「サックス・イースタリー論争」をRCTの快刀で乱麻していく爽快感。色んな人に勧められたけど、自分からもオススメ。

  • 読書日:2012年8月8日-14日
    Original title:Poor Economics T Radical Rethinking of the Way to Fight Global Poverty.
    貧乏と定義されている人の日常を、
    銀行口座開設、保険加入、子供の予防接種施行、学校教育、健康、自然災害、政府と都市の視点から
    考察している。
    成功して裕福になった中国人の徐愛華と
    貧乏は企業家が多い事が印象に残りました。

  • 経済学のけのじも知らないですが…
    政府などが行う、ボトムアップ的な施策には対象者が豊かになることに寄与しないものもあるということを分かりやすく解説してくれていた。

  • 目から鱗とはこのこと。
    従来までの貧困研究における見方は、政府(サックスなど)VS市場(イースタリーなど)という図式が大方のところだったが、もっと現場重視の、理論と実践に基づいた書籍である。
    行動経済学と密接に関係しているとは思わなかった。
    これからイースタリーやサックスらの書籍も読んで、それを踏まえて改めて本書に戻ってきたい。

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