味の台湾

著者 :
  • みすず書房
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622090458

作品紹介・あらすじ

担仔麺に小籠包、臭豆腐、茶葉蛋、豆花…。台湾を代表する現代詩人が民間に根づいた食べものを題目に冠し、その味わいを綴る六十篇。

感想・レビュー・書評

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  • 台日文学交流フォーラム 『味の台湾』刊行記念  焦桐氏×池澤春菜氏ライブトーク 開催決定|台北駐日経済文化代表処台湾文化センターのプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000086.000042392.html

    台湾飲食文学のバイブルを日本語版オリジナル構成で | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/news/topics/09045/

    味の台湾 | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/09045/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      歴史刻むソウルフード 亡妻を思う [評] 酒井充子(映画監督)
      <書評>味の台湾:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hok...
      歴史刻むソウルフード 亡妻を思う [評] 酒井充子(映画監督)
      <書評>味の台湾:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/625091?rct=s_books
      2021/12/20
  • 詩人としても知られる著者が「『台湾の味』とはなんなのか」を考えながら魅力的な台湾料理の思い出を語るうち、記憶と味の結びつきに深く分け入っていくエッセイ集。


    本書で取り上げられるのはどれも屋台や家庭の味。焦桐は自身が愛着を持つ類いの料理を「労働者階級の美食」と呼んでいる。一見粗野に見えるものにも料理人の美学が宿っていることを丁寧に説きながら、それでいて心理的ハードルは限りなく低い庶民の味を称揚する。露店の雰囲気を伝える挿画もいい味をだしている。
    台湾は移民の国であり、先住民と漢民族はもちろん、オランダ・スペイン・日本の統治時代を経て混淆された食文化が「台湾の味」をなしているという。日本版まえがきでは「ポスト植民地時代の飲食文化」と言い表されている。「天婦羅」と表記される料理が「さつま揚げのおでん」だという衝撃。冬瓜を砂糖漬けにしてお菓子として食べたり、未熟なパイナップルを漬物にしてスープに入れたりする食べ方も知らなかった!フルーツの使い方ではやっぱり和食は大陸に勝てない。鶏肉とパイナップルとゴーヤのスープ美味しそうだなぁ。
    食いしんぼうとしての焦桐のスタンスにはかなり親しみをおぼえた。「情欲に満ち、人を魅惑する封肉(客家風角煮)のかたまりがあるのに一杯のあつあつの白飯がなければ、どんなに寂しいことか」なんていう一文に、いい意味での暑苦しさと少しの気持ち悪さと嫌いになれない食いっぷりの良さが表れている。恋人として初めて妻の実家に行って食事したときのエピソードも強すぎる。客家というエスニシティの話も面白かった。
    取り上げられる料理はどれも著者の個人的な思い出と結び付いているが、特に後半で生き別れの兄と再会したエピソードのあたりから〈記憶と食〉の関係性が一段深堀りされていく。父とは再会しないまま亡くなり(この章の気持ち全体的にわかりすぎる)、妻のガン発症と死が食の記憶と共に語られる。できたての料理が並ぶ湯気の立つ食卓はどうしようもなく生者の領域だが、同時に味の記憶で死者とつながれる空間でもあるのだ。
    邦訳にあたって160篇(!)あった原書から60篇を抜きだし、食材別になっていた収録順を並び替えたという。完全な時系列順ではないものの、著者の人生を辿るような順番にしたのは正解だと思う。滋味深いスープのような食エッセイの良作だった。

  • 図書館。
    仕事で何度か高雄から台北まで行ったけれど、台湾のごはんは現地で食べるととても美味しい。
    臭豆腐なんかは日本ではきっと食べられないけれど、あの場だからこそ食べられる「何か」がある。
    その「何か」を感じられた本。

  • やばい。どれも美味しそうで、お店を検索しながら読んだら、1ヶ月かかった。
    日本にもお店はいっぱいあるけど、やっぱり台湾に行きたい。

  • 中華の食の華やかな多彩と深い文化を伝える『中国くいしんぼう辞典』も楽しかったが、台湾の詩人の手になるこちらは、この国の複雑な歴史と、また著者の亡き妻への想いをからめて綴られており、そこはかとなく漂う哀しみや苦みが全体を引き締め、格調すら与えているようだ。
    ああしかし、調理と美味を表現する言葉の広さ豊かさ!
    チマキを縛るには「まるで初恋の相手の手を握るように、柔らかく、だがしっかりとしめていく」。
    豚スペアリブのスープから出汁の生姜や葱は捨て、「ただ大根だけが残って、明星が月に寄り添うように、白く清らかに姿を現すのだ」。
    少食のくいしんぼというタチの悪い食い手の私ですが、こんなふうに食を表せたらなあ。
    いやいや、美味を追うだけの書物ではないですよ。 
    米干(幅広の米麺)が雲南に根づく事情を探れば過去の内戦に行きつき、夜市の栄枯盛衰を見れば発展する台湾が捨てていかざるをえない風情への嘆きを感じる。
    そしてそして、出会った頃の妻と食べたスナック、岳母の絶品の手料理、子育ての食事の思い出、妻の看病を支えた味、そして、彼女を偲びつつ食べるもの…亡き人への食を通じたラブレターでもあって心に迫る。
    何を食べたかじゃない、誰と食べたかだとは言いますが、大切な人と一緒にする食事をより丁寧に味わい大切にしていきたいと思えたのでした。

  •  元は2015年に台湾で出版された食のエッセイ集。著者は台湾の文学者だ。
     台湾の食を扱うが、当然ながら豆花など大陸特に南部と共通するものが少なくない。更に、日本語由来の甜不辣と黒輪(オーレン)、国民党老兵が伝えた川味牛肉麵や雲南・タイ・ミャンマー風味の米干のように、台湾近代史との関連もある。著者はそれらを「文化的混淆」「外省人の故郷の味は既に内面化されて台湾の味となった」とする。
     著者自身の人生をうかがわせる内容も多い。大学入試に落ちた失意の若い頃、癌を患い既に他界した妻、50年ぶりに再開したがまた疎遠になり他界した兄、などほろ苦い。人生とは茶葉蛋のようなもの、苦味、甘さ、渋み、楽しみがしみこむ、との記述が意味深い。

  • 現代詩と料理のレシピを融合させた詩集をだしたため美食家だと誤解されたのがきっかけで台湾の食文化を研究し始め、フィールドワークにも出かけるようになった台湾の詩人・焦桐さんの台湾の料理にまつわるエッセイ
    原書となる本には160篇収録されているそうですが、この日本版には60篇選ばれていて、たくさんの台湾の食べ物が紹介されています。

    知らないものがほとんど!
    食材も日本にはないものが多く、丁寧に作り方や材料が紹介されているので、想像しているととても楽しくなります。
    食べてみたいな〜。

    著者の生い立ち、人生、家族が合間合間に食べもののエピソード共に語られ、それがまた心に響いてきます。
    特に奥様への愛情がにじみ出るエピソードに温かい気持ちになりました。

    「人生とはやはり茶葉蛋のようなものだ。ときに傷跡や欠損があり、茶葉を煮こんだように、かすかに苦味がある。苦味の中に甘さがあり、渋みの中に楽しみがある。それはほほえみの中に涙がきらめくようなものだ。茶葉蛋は味のしみこむことによるうまさを表現したもので、ひび割れが多ければ多いほど味が入る。」

    ちょうど菜脯蛋(干し大根のオムレツ)を読んでいておいしそう〜と思っていた翌日、台湾料理屋さんに行くことになり、メニューにあったので食べることができました。
    まさに「シンプル」で「外はさくっと中は軟らか」くてとってもおいしかったです

  • 読みながら近隣の台湾小吃(シャオチー)を食べられる店を探し、鹹豆漿(シェンドウジャン)にいたっては家で作るほどになってしまった。台湾の詩人が書く料理エッセイ…と簡単に言ってはいけないと思うくらい文章は表現力に富み、台湾の歴史と作者の人生を垣間見ることができる本。
    日本版は160篇から60篇を抜粋してあるようで、全部読んでみたかった。味覚も嗅覚もすべて人生と深く繋がっている。

  • 描かれているイラストが味わい深い。何度でも食べたくなる、行きたくなる、台湾よ!

  • とにかく読んでいてお腹が減る。
    食いしん坊というより食を大いに堪能する著者の情熱が凄い。
    朝市に何度も行くのに奥さんに浮気を疑われたり、挨拶の場で1人黙々と食べ続ける笑ってしまう場面もあれば、
    パートナーが亡くなってしまい悲しみに暮れながら食べ物を思い出すほろ苦い場面もある。
    人生は食事とともにある。
    悲しくても嬉しくてもお腹は減る。

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著者プロフィール

詩人、文学者、編集者。1956年台湾高雄市生まれ。本名葉振富。台湾を代表する現代詩人の一人であり、詩とレシピを融合させた詩集『完全強壮レシピ』(台北:時報出版、1999年。邦訳書は池上貞子訳、思潮社、2007年)を発表以来、台湾の食文化に関する研究・執筆を進める。出版社「二魚文化」を立ち上げ、台湾で発表された飲食についての散文を年度ごとに編集・出版。また国立中央大学中国文学科で教える教授としての顔も持つ。詩集・散文・研究書も含め著作多数。近著に野菜と果物に関するエッセイ『蔬果歳時記』(2016)、二人の娘との日々を書いた『為小情人做早餐』(2020)など。

「2021年 『味の台湾』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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