海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること
- 山と渓谷社 (2021年7月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784635062954
感想・レビュー・書評
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科博の研究員さんの話。高校生の時に読んでいたら絶対に進路変わってたと思う。
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海岸にクジラ類が打ち上げられるストランディング、それは海獣学者にとって解剖の貴重な機会。死因から環境破壊を推測したり地味な研究を語る。
実は日本国内では年間300件ほどのストランディングが報告される海洋国。ニュースを知ると現地に駆け付けて処分される前に解剖を依頼する。ご存知のとおり多くの海獣類は巨大な体躯。解剖はガテン系の肉体労働、臭いも凄いという。
海の哺乳類の生体と環境を解剖を通じて探る学者の楽しい1冊。 -
海獣学者の仕事は想像以上に肉体労働で、クジラのような大型生物の解剖では特にそうだ。そんな海獣学者の汗まみれの毎日が写真や図を見ながら楽しく読める内容の本である。
扱っている海獣はクジラだけではない。アザラシやジュゴンなどに対する章もあり、海の哺乳類の分類についても勉強になる。
興味深いのは、3章のストランディングについてだ。日本では年間300件近くも水中から陸に海の哺乳類が打ち上げられるとは驚きだ。
環境の変化でストランディングが起きているのは間違いないだろう。海獣学者やクジラのことだけでなく、環境についても考えさせられる内容の本だった。 -
世界一クジラを解剖している女性とも言われる海獣学者の著者の20年以上の研究生活をもとに、クジラ、イルカ、アザラシ、ジュゴンなどの海の哺乳類の生態を紹介するとともに、その海の哺乳類が海岸に打ち上げられる現象である「ストランディング」の謎に迫る。
クジラなどの海の哺乳類や、解剖などを通じてその研究を行う「海獣学」の知られざる世界を垣間見られて、とても知的な面白さを感じる内容だった。クジラなどの解剖は悪臭などたいへん過酷な状況の中で行われていることを知ったが、そんな状況も気にならないくらい夢中になって解剖に邁進する著者などの研究者の姿に、一種の憧憬の念を覚えた。 -
大動物の研究者には女性が多い、と女性研究者の著者が述べている。それにしてもクジラは心臓も消化管も、何から何まで大きい。悠々と海を泳いでいるはずの彼らが時々浜辺に打ちあがって命を落とす。なぜか。その理由にはまだまだ謎が残されているらしい。興味深い本でした。
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驚きがいっぱいの研究の現場をユーモラスに描いた好著。
最近、生物系の研究者の肩の力が抜けた面白い本が多いなー -
打ち上げられたクジラの臭いって、ものすごいという話は想像するだけで… 一方でマッコウクジラの腸で作られる龍涎香(りゅうぜんこう)は、シャネルの5番だという。ぜひ嗅いでみたい!!鳥羽一郎の兄弟船のくだりには、思わず笑った。
科博のレジェンド渡邉さんの話や尊敬する山田先生エピソードは、とても面白く羨ましくさえ感じた。
「おうちで体験!かはくVR」これからは全く違う視点で楽しめそうだ。色々知ることができて良かった。 -
国立科学博物館でクジラなど海の哺乳類の調査や研究をしている研究者のフィールドワーク記。
フィールドワーク系の研究者のエッセイは好物。最近の研究者は文章も上手!バード川上さんやダイナソー小林さんのエッセイはとてもおもしろいし、どちらも女性研究者による「キリン解剖記」「もがいて古生物学者」もおもしろかった。
クジラやイルカなどが海岸に打ち上げられる「ストランディング」の連絡がくると、日本各地の海岸に駆けつける。生きているものは救おうとし、死んでいるものはニオイと戦いながら解剖し、部位を回収し、死因や生態などを調査する。体力と精神力勝負。ガテン系。
クジラの解剖に使う大包丁の大きさ。骨格標本のために骨を煮込む鍋の大きさ。クジラが大きいがゆえの面白くも大変なエピソードが満載。クジラ愛が伝わってきて、応援したくなる。 -
骨格標本が好きな私にとっては非常に読んでいて楽しい本だった。将来は標本をつくる業者に就職したいと思った。
直近では科博にいってみたい。