- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652204306
作品紹介・あらすじ
祖母が飼っていた犬の豆蔵が死んでひと月あまり。海斗は豆蔵の空のリードを持って散歩をすると、「ボーダー」になった豆蔵や町角にいる「ボーダー」の姿が見えることに気がつく。「ボーダー」とは、死後の世界へ行かずに生と死のはざまに立っている存在。海斗は、ボーダーの生前の思いを調べ、時にはその思いを遂げる手伝いをするようになる。そして、気になるボーダー、中学生の「セーラ」について調べ始めると……。
ささやかな思いの一つ一つが人生のかけがえのない一コマだと気づかせてくれるハートウォーミングな物語。
感想・レビュー・書評
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大学の夏休みの間、認知症のおばあちゃんのケアを母にバイトとして頼まれてすることになった海斗。
おばあちゃんの日課はもうすでに死んでしまった飼い犬・豆蔵のリードを掴んで豆蔵の散歩をすること。
最初はなんとなく同行していただけの海斗だったが、そのリードを握ると豆蔵を始め、死んだけれど心残りがあって死にきれない人や境目にいるボーダーという存在が見えるようになり、ボーダーの中でも異色なセーラー服の中学生女子、セーラとも出会った。
ケアをする人に自分が向いているのではないかと思った海斗は、ヤングケアラーことボーダレス・ケアラーを自称し、様々なボーダーに関わってゆくが…その結末は?
一気に読み終えた。
深刻すぎず、でもなにか胸にあたたかなものが残る読後感で、読んで良かったと思える。
海斗とセーラのやり取りは見ていて微笑ましいし、海斗の様々なボーダーや生きている人との出会いを、あたたかな気持ちで読める。
他人のために必死になれる海斗の性格も気持ちいい。
生きてても、生きてなくてもお世話します。という副題が柔らかく胸に沁みる。
世代を問わず読んでほしい作品だ。ドラマで見てみたい気もする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
児童書だけど、大人も楽しめる。
タイトルからヤングケアラーの話かと思ったが、意外なボーダーレスだった。
認知症が始まったおばあちゃんの世話をすることになった少年、でもおばあちゃんの不可解な言動には、ちゃんと理由があるようで、、、。
弱い立場の人に寄り添った話が多い山本悦子さんの小説は、ぜひ親子で読むのがいい。 -
タイトルからどんな話なのかな…と思っていたが、思っていた以上に面白かった。
介護施設に入る予定の、初期認知症のおばあちゃんが、死んだ飼い犬のリードを持って散歩している、と近隣住民から連絡があり、仕事をしている母に代わって、施設に入居するまでの数ヶ月間、夏休みのバイトを兼ねて同居して見守ることとなった海斗。
ばあちゃんは、「豆蔵」が今も生きていると信じていて、決まった時間にリードを持ち出すのだが、なんとリードを触った海斗にも、うっすら透けている豆蔵が見えたのだ。
それから、海斗のボーダレスケアラーとしての日々が始まった…。
(あの世とこの世を分ける線、そこに立ち止まったまま、どちらにも行けない「人=魂」をボーダーという)
主人公の大学生、海斗の語りで進む物語。
単純で前向きな海斗のおかげで、暗くなりがちな設定も引きずられることなく、サクサクと読める。
ボーダーを超えて旅立つ魂、ボーダーに残る魂、色々な思いを受け止める海斗の語りが優しい。
2021.1.7
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死を扱う作品だったので、
重たいかなと思いきや
全体を通してほっこりする話で
読み終わったあと、幸せな気持ちになりました
何度か泣きそうになりました -
夏休みの間、一人暮らしで少し認知症の祖母の世話をすることになった海斗。死んだはずの祖母の愛犬、豆蔵のリードを持つと豆蔵や心を残した亡くなった「ボーダー」が見える。うん、良かった。いい物語。海斗の優しさが人を救う。
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好きな児童書作家の山本悦子さんまとめ読み中。
暗く重すぎず、それでいてさりげなく戦争や図書館にも触れられていて、中高生におすすめ。
「ボーダー」という言葉は初聞きでしたが、『ぼくにだけ見えるジェシカ』を思い出しながら読みました。
随所に出てくる方言も親近感。(他地方の方、すみません) -
夏休みに認知症の祖母の世話を頼まれた大学生の海斗
祖母の愛犬だった豆蔵の空のリードを持って散歩していると、セーラー服の中学生が見えることに気づく
「幽霊なの?」
「ちがう」
「じゃ、なんなのかな、その……」
「ボーダー」
ボーダー──生きてる人と死後の世界を分ける境目の上に立っている、何かの事情でボーダーラインを越えられずにいる存在
海斗は、事故で死んだ同級生や急死した売れっ子漫画家などボーダーたちの思いをたどり、願いをかなえる手伝いをするようになる
そして、セーラー服の中学生ボーダー“セーラ”について調べていくと……
第55回野間児童文芸賞『神隠しの教室』(童心社、2017年)の山本悦子が贈るひと夏の“ボーイミーツボーダーガール”の物語、2021年5月刊 -
祖母が老人ホームに引っ越すまでの間、介護をすることになった大学生の僕は、祖母の死んだはずの愛犬「豆蔵」の散歩をすることになる。何も繋がっていないリードを手に、散歩をする祖母。初めは、祖母がボケてしまったのかと思う僕だったが、リードを手にすると、その先には、確かに「豆蔵」がいた。
「豆蔵」の散歩をきっかけに、「ボーダー」と呼ばれるあの世とこの世の境にいる人たちが見えるようになった僕は、彼らを成仏させるため、出会った「ボーダー」たちの過去を調べる。
「ボーダー」たちが生前にやり残したことを、僕の助けを借りて達成することで消えていく一つひとつの物語は、どれも感動的で、とても面白かった。特に「黄色い帽子の神様」は、「ボーダーにとって、やり残したことを遂げて消えることは、本当に幸せか」という割と明確なテーマがあり、個人的に好きな作品。
生前、横断歩道の交通整理をしていたおじさんは、子どもたちから「イットイデン」というあだ名をつけられ人気のおじさんだった。死んでしまい、誰からも姿見えなくなってからもなお、「イットイデン」のおじさんは、幸せそうに子どもたちを学校に送り出し続ける。
メインのストーリーにあたる中学生のボーダー「セーラ」の真相や、過去を調べる僕の様子など、後半のストーリーにやや失速感を感じた。ただ、一人ひとりの人間にとって、幸せに生きるとはどういうことか、それを考えさせられる素敵な物語だった。
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ヤングケアラーの類かと勘違いをし読み始めた。表紙からは想像できない明るい話。
夏休み、惚けたばあちゃんを見守るバイトをすることになった。ばあちゃんは毎日律儀に死んだ愛犬の散歩をする。
付き添う海斗がリードを持つと、そこには尻尾を振る愛犬が居た!
ボーダレスとはこの世に何かしらの未練のようなものを残して彷徨う者のこと。
海斗は自ら、ボーダレス・ケアラーとなり、セーラが彷徨う理由を探すことにした。
合間に行く海の家のバイト先での会話も楽しい。
#中高生