- Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9784769020028
作品紹介・あらすじ
仲間たちが冬に備えて食べ物を貯えているのに、フレデリックだけは何もせず、ぼんやりしていました。やがて寒い冬が来て…
感想・レビュー・書評
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オランダの絵本作家、レオ・レオニの1967年作は、まさに谷川俊太郎さんの訳がぴったりな、目には見えないものの大切さを、私に教えてくれた。
副題の『ちょっと かわった のねずみの はなし』からも連想される、野ねずみの「フレデリック」は、他の四匹が厳しい冬に向けて、せっせと食料を集めては、彼らの隠れ家へ運んでいる中、ただあらぬ方を向いて動かずにいたが、その真相を知った後になれば、それは『ちょっとかわった』ではなく、『世界の見方が、ちょっと違う』ということに、きっと気付くだろうと思う。
そして、その見方の違いによって、彼らが実感したことは、体だけが満たされても、やがては力尽きてしまうが、決して尽きないであろう、それさえあれば、きっと、どんな困難も乗り越えられるのではないかという、心が満たされることの大切さであり、それを為し得るものが、言葉と想像力である。
絵本に於いての想像力の素晴らしさは、数え切れないほど感じてきたが、ここでの言葉は、フレデリックから他の野ねずみたちへ伝わることで、初めて想像力が育まれる、その流れを知ることで実感出来る素晴らしさであり、そんな言葉を生み出すのが、『ちょっとかわった』ものであるのならば、その呼び名も中々、捨てたものではないと思えてくる、その人ならではの個性の素晴らしさである。
また、想像力に関しては、本書でまたまたレオニがやってくれたと感じたのが、以前読んだ、「あおくんときいろちゃん」や「スイミー」とは異なる、切り絵のコラージュ技法と水彩画で描かれた、手作り感漂う温かみを感じさせつつ、それがアートにまで昇華したような世界観であり、その最初の見開きは、独特な模様の草原や木、一つ一つを異なる色合いと大きさで丹念に描いた石たちで構成された石垣だけの、まだフレデリックたちが登場していない、背景だけの絵でありながら、既に魅せられてしまうものがあり、特に、草原の中にぽつぽつとある花は、貼っているのがよく分かるような紙の厚みを実感出来るので、気になった方は、是非確かめてみてほしいし、ここの本文の『うしが ぶらぶら あるいてる。うまが ぱかぱか はしってる』には、牛や馬が描かれていなくても、この素敵なコラージュに合うのは、いったいどんなものかなと、想像力を働かせるのに充分な効果があり、こうした点には、レオニが子どもたちの気持ちに立ち、狙って書いていることが実感出来る、彼の絵本作家としての素晴らしさである。
ちなみに、紙の厚みを実感出来るのは、フレデリックたち、野ねずみもそうであり、その立体感ある独特な存在感の面白さは、今見ても、とても新鮮に感じられる普遍性に溢れているし、ネットで調べてみたら、彼らの体の輪郭からは、手でちぎった跡が見られるとのことで、改めて見ると、なるほど確かにと、そんなラフな感じが、また彼らの存在感をより増して、柔らかいものにしてくれているようで、そのレオニの、まるで子どもの頭の中から生まれたような想像力には、とても惹き付けられるものがあり、今後も彼の作品を読んで、その独特な作家性や人間性をますます知りたくなった。
それから、ネットで調べている過程で知った、1904年にノーベル文学賞を受賞した、フランスの詩人、フレデリック・ミストラルと、本書との関連性はあるのだろうか? 調べてみたが分からなかった。ちなみにバラの名前にもなったということで、気になっていたのだが。
いずれにしても、詩人と花はよく似合うと思う。何故ならば、どちらも言葉にし尽くせない思いを抱かせながら、それを言葉として浮かび上がらせてくれる、奇跡のような存在であるのだから。
本書は、aoi-soraさんとのコメントのやり取りで、読むことが出来ました。
ありがとうございます。 -
恥ずかしながら初めてのフレデリック。
読んでいてなんだかアリとキリギリスを思い出してしまったよ。-
猫丸さん
Xのさるかに合戦もう一度と思って観てみたら、削除されたのか見つけられませんでした。。残念。
他にも色々調べてみたら、トラウマ級だと...猫丸さん
Xのさるかに合戦もう一度と思って観てみたら、削除されたのか見つけられませんでした。。残念。
他にも色々調べてみたら、トラウマ級だという人の多いメトロポリタン美術館も岡本忠成さんの作品だったんですね!
私あの歌結構好きで子どもの頃よく観てましたけどねぇ。
猫丸さんの教えてくださった例外は怖そうなので調べないことにしておきますね…(-_-;)2024/02/15 -
翠さん
> トラウマ級だという人の多い
そんな風に言われているとは知りませんでした。
E.L.カニグズバーグの名作「クローディアの秘密...翠さん
> トラウマ級だという人の多い
そんな風に言われているとは知りませんでした。
E.L.カニグズバーグの名作「クローディアの秘密」(岩波書店)が元ネタ。あの話を1本の映像作品にするのは難しいかな?(アメリカではTVドラマになっているようですが)
> 例外は怖そうなので
あー
子ども向けとは言えないだけです
"人間いじめ"シリーズは落語が元で駄目大人を懲らしめる小品です。
「虹に向かっては」辛いシーンについて書きましたが、ウルウルしながら観るコトになる筈です。
及川恒平(六文銭のフォークシンガー)が作中で歌う「機織り歌」は民謡風でジーンとなります。
歌詞の一部を
『泣いて心が晴れますならぁば、おらぁも おらぁも 泣きたいことがある』
『糸はぁ千本切れても繋ぐ、切れたぁ切れたぁ情けは繋がれぬぅ』2024/02/19 -
猫丸さん
「虹に向かって」観てみたかったです。
過去に特別上映されていたんですね。
予告編だけ観ましたが、結構愛嬌があって可愛いんですね。
...猫丸さん
「虹に向かって」観てみたかったです。
過去に特別上映されていたんですね。
予告編だけ観ましたが、結構愛嬌があって可愛いんですね。
クローディアの秘密は面白そうなので図書館で探して読んでみようと思います(^^)2024/02/20
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「フレデリック」
作 レオ・レオニ
訳 谷川俊太郎
1969年 2020年10月2日 第82刷
みんな役割があって
意外な時に役に立ったりする。
自分の価値観をねじ曲げなくて良い。
それもきっと役に立つ。
それにしても絵本は良い。
優しくて良い。
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「ちょっとかわったやつ」は何のためにいるのか
いきなり自分語りで申し訳ないが、私の親族はいわゆる「ちょっとかわったやつ」(明言は避ける)ばかりで、
きちんと診断書を受け取っている者も多い。
だいたい皆アーティストであり、企業戦士としてはとてもやっていけない人々ばかりだ。私も含め。
さて、この「ちょっとかわったやつ」は一定の割合で生まれるらしいが、
一体何のために生まれてくるのか?
少し研究文献も漁ってみたが、どうやら一定の環境下で彼らの存在とその特殊な能力が集団を救うこともあるらしかった。
さて、フレデリックの話に戻るが、
フレデリックは冬に向けて一般的に必要とされる勤労(食糧集め)をせずに、
日がな一日ぼんやりと日向ぼっこをしているだけである。
なぜ働かないのか?と聞かれても、常人には凡そ理解できない理屈を説明するだけなのであった。
この物語の総括は「やっぱりアートって大事だよね」「生きるには心の栄養も大事だよね」というところに集約されることが多いようだが、
私自身としては、冒頭の「ちょっとかわったやつは、なぜ生まれるのか」についての答えの一端を見た気がした。
フレデリックは、おそらく他のねずみほど効率よく食糧集めをすることはできないだろう。
きっと彼は彼の心の声に従って、自分にできること、そして自分にしかできないことをしたのだ。
ちょっとかわったやつを代表して言えば、(本人に自覚があるかはともかく)フレデリックは飢え死にする可能性もあった。
ちょっとかわったやつを貫くのは、命懸けである。
自分自身の魂を信じて輝かせること、それがちょっとかわったやつに課せられた使命である。常人に変装し、できもしない勤労をする前に。振り切る勇気が出なければ、ほんのちょっと食糧を集めながらでもいい。
暫定、「ちょっとかわった」子どもに贈りたい絵本ナンバーワン。 -
同調圧力に負けないで、
「自分が暮らしで大切にしたいこと」を大切にするフレデリック。
それにより、バカにしていた仲間たちも救われていくストーリー。
だからといって、他のねずみたちがまちがいだったかと言えば
そうではなくて、彼らの働きがなければ、冬眠も越えられなかったしね。
それぞれがそれぞれの働きをして、みんなちがってみんないい。
レオ・レオニさん&谷川俊太郎さんという最強タッグ。 -
ああ。なんてかわいいの。そしてそれだけじゃない。なんにもしてないんじゃない。だいじなことをしていたのだな…次女も大好きな絵本。季節のうつり変わりがいい。冬は寒いけど。フレデリックを思い出して今から本を読んだりきれいな景色を見たりしておこう。
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怠けているようにしか見えないフレデリックだけど、彼は彼自身の役目を全うする。「はるねずみ、なつねずみ、あきねずみ、ふゆねずみ」の詩がすばらしい。
正月に息子がフレデリックのブロックカレンダーを買ったので、妻が借りてきた。 -
さいごのフレデリックが得意気でかわいい!
「そういうわけさ」♪ -
一見アリとキリギリスみたいだけど
なまけてるんじゃない
本当に大切だと思うものを求めて
流されず
自分の軸を大切にする心
色と言葉を集めて
最後は仲間をハッピーに
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Bunkamuraの「レオ・レオニ 絵本のしごと」展の予習のために、図書館で予約した
実際によんだのは、美術館から帰ってからだった
来たる冬に備えて、食べ物を用意するのねずみたちに対して、フレデリックが用意していたものとは?
冬を老年期と捉えてしまい、私は何を蓄えるんだろう?と考えてしまう
少しずつ年を重ねるにつれて、私も考え方が変わってきた
私も、今が楽しければ、それはかけがえのない記憶や事実という財産になると思う
備蓄の必要性や適材適所などの問題もあるけれど、私もフレデリックのように生きていけたらいいな、と思う
終わり方が、またかわいい
いえ、気にしておりませんよ。
記憶違いは私も、よくあるので(^_^;)
それでも、谷川俊太郎さんに依頼した方こそ、もしかしたら、レ...
いえ、気にしておりませんよ。
記憶違いは私も、よくあるので(^_^;)
それでも、谷川俊太郎さんに依頼した方こそ、もしかしたら、レオニの作品に詩的なものを見出していたのかもしれませんよね。
確かに慧眼だったと、私も思います。
お気になさらず^_^
お気になさらず^_^
ありがとうございます、、、
ちょっと曖昧だと思ったら調べてからにしよう、、、過信しないように。。。
ありがとうございます、、、
ちょっと曖昧だと思ったら調べてからにしよう、、、過信しないように。。。