- Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794970237
作品紹介・あらすじ
写真は世界の断片を収集し、世界を模写する。多くの写真映像が氾濫する今日、写真について語ることは世界について語ることだ。
本書は、絵画や文学との違いを明確にしつつ、写真が「現実と創造力の交差」という現代文化の中心テーマをとく鍵であることを指摘する。アッジェ、アーバスらの作品世界を通して「写真時代」の文化構造を読み解く最もラディカルな批評家の本格的写真文化論。
感想・レビュー・書評
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シュルレアリスムと写真の関係性(特にアーバス)から、アメリカ文化、民主主義の変遷まで、幅広い知識を用いながら写真を論ずるソンタグらしい本。
前半は彼女のペース感を掴むまでに時間がかかり苦労したが、後半、特に写真が登場して絵画にどのような影響が及んだのか、現実を写真として記録することで現実そのものの価値はどのように変化するのか、などの論述はかなりのめり込みながら読むことができた。
アーバスの写真をソンタグがどれほど愛していたのかがよくわかる。彼女の写真集買ってみようかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
写真の登場が絵画にどのような影響を与えたのかが見えて面白い。
今の時代にも通じる考察。 -
プラトンの洞窟で
写真の意味、成果は?
写真は世界の断片を収集したもの?
写真は「現実と想像力の交差」?
写真はひとつの文法である?
写真は見ることの倫理?
写真の成果は、私たちが世界を映像のアンソロジーとして頭の中に入れられる感覚を持つようになれたこと?
人々は写真により世界を収集したい?
写真とは世界を捕まえた経験?
写真を撮るとは被写体を自分のものにするということ
世界との一定の関係に自分を置く、知識や力が必要
人間が世界を活字に抽象したことが疎外のきっかけとなった。
写真家のやる仕事は、真実と芸術とのあいだでおこなわれる曖昧なやりとり。
写真家が現実を捉えようとしている時でさえ、趣味や良心が命ずる無言の声につきまとわれている。写真は絵画やデッサンと同じように世界についての一つの解釈なのである。
写真は郷愁をかきたてる。写真術は挽歌の芸術、たそがれの芸術なのである。被写体は写真に撮られたということで哀愁を浴びる。美しい被写体も歳をとり朽ちて哀愁の対象となる。写真はすべて死を連想させるものである。写真を撮ることは他人のあるいは物の死の運命、儚さや無常に参入するということである。まさにこの瞬間を薄切りにして凍らせることによって、すべての写真は時間の容赦ない溶解を証言しているのである。
写真で見る暗いアメリカ
写真は理想化された映像というのが大方のアマチュアの目標である。美しい写真とは夕日のような何か美しい者の写真のこと。
多くの者は写真を通して「醜」ではなく「美」を発見してきた。人々が写真を撮る気になるのは何か美しいものを発見した(したい)からである。
ポートレート作品はどれも写真家の「自画像」、風景写真は「内的風景」である。
引用の小冊子
写真は世界中どこでも理解される唯一の「言語」であり、あらゆる国家と文化のかけ橋となって人類を結びつける。写真は政治の影響を受けず、人間が自由なところでは、人生や出来事を忠実に映し、他人の希望や絶望に仲間入りすることを許し、政治的、社会的状況を浮き彫りにする。そして我々は人類の人間性、非人間性の目撃者となる。(ヘルムート・ゲルンシャム「クリエイティブ・フォトグラフィー(1962))