ビジネスに「戦略」なんていらない (新書y 195)

著者 :
  • 洋泉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862482679

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  • 一回半ひねりのコミュニケーション
    ビジネスする動物が人間である

  • [ 内容 ]
    「戦略」に踊らされるな!
    ビジネスは敵を出し抜き、勝負を決める戦争なのか?
    新自由主義的な競争戦略思考、利益至上主義は世界から乗り遅れないための唯一の道なのか?
    否、そんなことはない!
    なぜなら、経済のグローバル化とグローバリズムは本来、同一視されるものではないからだ。
    いま一度、会社や組織、働く理由や評価、仕事におけるゴールやプロセスなどの、原理的・現場的な場からビジネスを捉え直す。

    [ 目次 ]
    序章 わたしがビジネスを戦争のアナロジーで語らない理由
    第1章 ビジネスと言葉づかい-戦略論を見直すために
    第2章 ビジネスと面白がる精神-会社とは何か
    第3章 見えない資産としての組織-組織とは何か
    第4章 プロセスからの発想-仕事におけるゴール、プロセスとは何か
    第5章 モチベーションの構造-人が働く本当の理由
    第6章 一回半ひねりのコミュニケーション-なぜ、「なぜ働くのか」と問うのか
    第7章 それは何に対して支払われたのか-評価とは何か
    第8章 攻略しないという方法-新しいビジネスの哲学として
    付章 内田樹君とのビジネスをめぐるダイアローグ

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    [ 参考となる書評 ]

  • >人が力を発揮するためには、自らの仕事への敬意と自らがフルメンバーであるところの会社に対する信頼が必須の条件であると考えています。そして、この敬意とか信頼というものの源泉こそが、フルメンバーが共有している「会社の哲学」なのです。会社のフルメンバーである社員は「会社の哲学」を共有することにより、その「哲学」に対する責任を引き受けます。
    ――
     企業の目的が「利益」であれば、社員は「報酬」を目的にする。顧客満足の結果として得られるものが「利益」であり「報酬」であるという感覚が失われる。
     企業価値が高く、利益を持続する企業には、社員が共有する「哲学」がある。

  • 世のビジネス書の類はつまらない。そもそもそう感じてはいたが、最近、とみにつまらない。そこには、凡庸なトートロジーが充ちている。

    実学という名でかたられるものが表層を撫ぜることが耐え難い。

    たしかに、秀逸な着眼のものもないわけではない。だとしても、それが、事業を行っている生身の自分の肉にささってくることはほとんどない。

    ビジネススクール出身者ほど、採用するときに、心を動かさないものたちもいない。

    日経もウォールストリートJもつまらない。

    その理由は、戦略的志向というもののつまらなさにあるというのが、著者平川克美さんによれば、ビジネスの本質の中心に置いてとらえることがないからだという。

    平川さんは、内田さんの高校時代からの親友である。

    内田さんというのは、現代先端思想を、日常的なあらゆることに適用して休むことのない、ブログ評論家の王者の内田樹さんである。

    本の最後に、内田さんとのダイアローグを含む、この本は、徹底して、ビジネスという、人類の起源にまでさかのぼることのできる現象の、構造分析を行おうする、非常に非実務的、非戦略的で、だからこそ言葉の本質的な意味において実践的な試みだ。

    平川さんがビジネスをとらえようとする次数が高いせいか、必ずしも彼の思考を追い続けるのは容易ではないが、商品を迂回した一回半ひねりの コミュニケーションとしてのビジネスなどいう思考には根源的なものを感じる。

    わかりやすいところでいえば、

    《ビジネス上の成功について精緻に組み立てられた「ビジネス書」がつまらない理由は、短期的な成功の「秘訣」は書かれていても、長期的な成功の「意味」についてはあらかじめ目を瞑っているからだ。》

    ビジネス書はルールブックに過ぎず、そのルールブックである戦略本をいくらよんでも、ビジネスの本当の面白さはわからないなどというところだ。

    たしかにゲームのルールブックを何冊も読んでわけしり顔のMBAが、24時間スクリーンに向かい続けてきた、古参のゲーム馬鹿たちに一蹴されていくのと同じような構造だろう。

    戦略書の本質的な問題は、問題にはあらかじめ解答が存在するという前提にある。しかし現実のビジネスを生きるうえで、「機知への事象への還元」という方法が役に立たないのは実感としてわかる。

    《今必要とされるのは、生起する問題を既知に結びつける専門的、分析的、事実確認的な知性ではなく、新しい事態に対応して自ら未来を切り拓いて行く、汎通的、統合的、遂行的な知性であると思っています。ひとことで言うならば、自分の頭で考える力を養うということです。》

    より本質的な分析になると容易には理解できなくなる。そこでプロの教育者の内田先生が入ったダイアローグになってくると、哲学の思考と対象である事業の分析はうまくシンクロしだす。沈黙交易を手がかりにしたビジネスの本質分析は秀逸だ。

    言葉も通じない部族同士がそれぞれの共同体の周縁で、それぞれの持ち寄った交易品を、それぞれの荷物がなくなるまで交換しつづけるという、交易の原初的形態のことだ。

    この古代に行われた謎めいた儀式を文化人類学者のサーリンズは交易の原型ととらえたのである。曰く、人々は適切な等価交換が行われたように思えないときには、もう一度出会わなければならないと感じたというのである。そしてこの腑に落ちなさが交易を動機づけたのである。

    交換されたものの価値がわからないからこそ、交易を継続しなければならないという心理的圧力のなかに、現在にまで至るビジネスの本質を見るのだ。

    だからこそ、すべて解答が用意されているような戦略には、ビジネスの謎の部分は決して見えない。そして、その論理的延長に存在するグローバリズムの非生産性へとロジックは繋がっていく。

    なぜ、人はビジネスを続けるのか。そんなシンプルな質問だが、交換する主体としての人間の本質を見据えることなしには、何も見えてこない。

    これから、ビジネスの世界に入る人も、ビジネス書など何冊も読むより、哲学や社会学の本質的な書物を1冊でもいいから熟読すべきだ。

    その方がはるかに今後のビジネス人生にとって実践的な意味を持つ。これは数十年ビジネスのなかで生きてきた経験からも間違いなく言える。

    その手がかりとして騙されたと思って、平川さんと内田さんのある意味わけのわからない議論につきあってみたらどうだろう。

  • 「ビジネスは戦争などではなく一回転半のコミニュケーション」
    以前カフェで「交易とは互いに要らないものを捨て、要りような人が持ってくところから始まった」という話しを聞いて面白くてこれを読んだ。欧流米流経営もあるが、これはこれからの日本に適した経営指針の一つでは。

  • ちょっとむずかしいし、論旨に無理もあるところがある感じがするが、言わんとしてることは面白い。特に、最後の給料の話や、内田樹(「街場のメディア論」などの著者、大学教授)とのやり取りはよかった。

  • 「あるべき自分」だと「今の自分」が思っている「未来の自分」に向かう

    米国的価値観である「ジョブディスクリプション」
    会社と個人の間には「この仕事をすべし」という契約が結ばれる
    そこには個人が「オーバーアチーブ」する余白がない

    会社はビジネスを通じて利益を求めるが、
    個人は必ずしもそうではない

    会社の「見えない資産」にどれだけの敬意を持てるか

    というようなことが書いてあった

  • 「投資できる起業 できない起業」と一見対称的ですが、共通する要素があり、生きることや仕事をすることの本質を考えさせてくれます。


    「現代思想」「ポストモダン」の用語、思考法で徹底徹尾書かれた、70年代、80年代の香りに満ちた一冊です。


    あの時代を懐かしみながら読める人には知的な刺激があり、知らない人にはちょっと面倒くさいのではないかな。

    ただこの人が言うほど世の中は戦略流行りではないと思う。


    「...ビジネス的な思考というものが、倫理と市場といった二項対立を止揚していく方法的な契機になりうるのかどうかを試したい...」p214
    パエッセもそのための会社です。

  • お金がモチベーションのビジネスモデルから脱却しようぜ!という本。読むと今まで主流だった考え方、「お金に働かせる」とか「MBA主義」とか「勝つための戦略」とかもうええやないのという気になります。働くということに対して、確かに新しい概念を提唱しているとは思いますが、若干難しいというのと、じゃあパーソナルなレベルで僕たちどうすりゃ変われるのさ?という部分に言及していないので、カタルシスは得られませんが。でもでも、良書です。

  • <メモ>
    内田樹の友達の平川克美さんのビジネス論。平川克美さん自身、経営者、起業家としていくつもの会社を手がけられている。文章は内田樹の雰囲気にそっくりで、すごく面白いし、深い教養を感じる。昨今、グローバリズムなどの影響を通して、ビジネスが「戦略」という戦争のタームで語られるようになった。それに対して、平川氏はビジネスの根本は「モノやサービスを介した人と人とのコミュニケーションである」と説いている。本来、ビジネスは「交換」であり、「交換」はわくわくするもの。ゼロサムゲームで勝ち負けが決まるだけのものではないと説く。

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著者プロフィール

1950年、東京・蒲田生まれ。文筆家、「隣町珈琲」店主。早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立。1999年、シリコンバレーのBusiness Cafe Inc.の設立に参加。2014年、東京・荏原中延に喫茶店「隣町珈琲」をオープン。著書に『小商いのすすめ』『「消費」をやめる』『21世紀の楕円幻想論』、『移行期的混乱』、『俺に似たひと』、『株式会社の世界史』、『共有地をつくる』『「答えは出さない」という見識』他多数。

「2024年 『ひとが詩人になるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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