誰か助けて 止まらない児童虐待 (リーダーズノート新書 G 303)
- リーダーズノート (2011年4月29日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903722306
作品紹介・あらすじ
虐待に走る母親の心にはいったい何が起きているのか。「底が割れた」と形容される虐待の現場には、どのようなメカニズムが働いているのか。私は我が子を虐待した母親を訪ね、ありままの声を聞くことにした。変化する家族、親や子どもが抱える悩み、主婦の現状などを自分の目で確かめてきた著者が、児童虐待の凄惨な現実を訴える。
感想・レビュー・書評
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二児の親として、読んでいて暗澹とした気分になった。もちろん児童相談所の中には使命感をもって仕事されている方も多いのだろうが、本書にもあったように、一地方公務員という立場や仕組みに限界がある。児童虐待は明らかな犯罪なのだから、対応する人は警察と同じ権限を持ち、児童心理学にも精通した専門職として名誉と重責に相応しい処遇を与えるべきだ。人の良心に依存したシステムはいつか破綻する。
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虐待について、母親、母親の両親、保育園、学校、児童相談所など様々な視点から事例を挙げて紹介している本。
なにもまとめ切れていないけど、状況についてはかなりわかった。
親に対する支援があればいいっていうだけじゃない。
親が人として認められること、情緒を受け止めてくれる人がいることが必要。
行政の状況も厳しいなぁと思う。
全てが法律という壁に邪魔されている現実と、異動の実態。
中学校勤務の教員としては、今受け持つ生徒がそういう大人に育たないように育てていかなくてはならない。そういう親が中学時代どんな生徒だったのかとイメージしてしまう。
親の立場としては、事例を読むのが辛い。子どものことを考えると、可哀想でたまらない。そして、逆にその立場にいる親の気持ちもわかってしまう。
札幌市で図書館で借りた本。 -
重たかった。
でも、すごくいろいろ考えさせられた。
いろんな立場からかかれているから、児童虐待について、いろんな方面から理解が深まった。 -
よくまとまっていると思う。最終章の施設長の言葉の重みを噛みしめる。
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いろいろな視点で虐待を見られる本。
どの視点からも聞こえる 助けて の声だが、子ども達のそれは生死に結びついおり、何より深刻だ。 -
データと取材のバランスがよく、淡々としているが抒情も織り込んであってすごく読ませる文章。
やっぱりダントツで腐ってるのは教育現場の上層部なんだろうなあ。 -
目次がいい感じだったので購入したが、予想以上の良書だった。
「はじめに」で一般的な「加害者批判」「児相批判」「公務員批判」を想起させているが、その後の展開でそれを覆していくだけでなく、報道では伝わらない非常に細かい、だけど重要な問題点にも的確に言及している。
特に重要なのは、「虐待の連鎖」という言説について。つまり、虐待によって子どもが大きな影響を受けて、それが巡り巡って次世代への虐待に繋がることはあるかもしれないが、だからといって虐待された過去=子ども虐待リスクではないという、微妙な違い。
また構成の話に戻ると、本来子どもを守らなければならないとされている人々(ここでは、「母親」、「保育園」、「小学校」、「児童相談所」など)へのインタビューを通じて、現場の構造的な問題や、虐待問題に関わる人々の葛藤が浮き彫りにされていく。
この過程で、タイトルの「誰か助けて」が決して子どもだけの声ではないことが少しずつ見えてくる構成は見事。
また、例えば小学校の例で、現場で子どもに接する教師と、管理職とでは、問題に対する認識・態度が違っていて、且つどちらも正しいという葛藤をきちんと両者の目線から明らかにしている点は素晴らしい。
第6章でも、世間から多くのバッシングを受ける児相の抱える問題をきちんと捉え、ただただ強制的介入の必要性を訴える論調を冷静に批判している。
惜しい点としては、
・学術的な論文の引用の仕方が甘いところ
・アメリカの方法論を無条件に肯定的に紹介している点。紹介するのであれば、アメリカ型の虐待対策の限界や、親子分離しても子どもを引き取る里親が多くいるという前提条件も同時に提示するべき(それでも日本の数十倍進んでるけど)。
・児相については、キャリアが長くて児相の問題を客観視できる人だけでなく、その人に批判されているような、急に児相に異動させられて右も左もわからない状態で勤務することになった人の意見も見てみたかった。
ともかく、とても良い本だった。虐待のニュースに触れて「子どもが可哀想!」などと言って、虐待の厳罰化や児相批判に走る人には、賛否は別にして、まずこれを読んで欲しい。
タイトルにある「誰か」とは、この社会に生きる一人ひとりであって、他の誰でもないということを分ってもらいたい。
今度は同じ著者に、虐待防止ネットワークの成功事例や、子どものケア、ペアレンティング・トレーニングや、大人の自己肯定感の醸成の必要性などについても著してもらいたい。 -
児童虐待の当事者、そして取り巻く人びとをインタビュー形式で描きます。特に堅苦しいデータはなく、本人の気持ちがさしはさまれる文章。寒々しく、そして厳しい現状がストレートに伝わってきます。今月(11月)はオレンジリボンの月だから、読んでみました。生きられる子が、子どもらしく生きられる社会に少しでも近づいていきますように。