週刊だえん問答 コロナの迷宮

制作 : 若林 恵  Quartz Japan 
  • 黒鳥社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784991126048

作品紹介・あらすじ

アベノマスク、Black Lives Matter、リモートワーク、芸能人の自殺、
5G覇権、医療崩壊、デリバリー、グローバルサプライチェーン、
香港、大麻、メンタルヘルス、デジタル庁....
対立と分断とインフォデミックの迷宮をさまよう
ポストコロナ世界の政治・社会・文化・経済を
斜め裏から読み解くニュース時評のニューノーマル!?
Quartz Japanの人気連載、待望の書籍化!

感想・レビュー・書評

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  • ニュース時評のニューノーマル WIRED日本版前編集長 若林恵による連載が書籍化
    https://www.fashionsnap.com/article/2020-12-17/keiwakabayashi-daen/

    【ポストコロナの世界で身につけたい 「編集」の視点と思考】若林恵さん(編集者/黒鳥社コンテンツディレクター) | Life Update Unlimited
    https://life-upd.com/archives/6230

    週刊だえん問答 コロナの迷宮 若林 恵(著/文 | 編集) - 黒鳥社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784991126048

  • 2020年締めの一冊。quartzの特定コンテンツを書籍化、ということで、相当なボリュームだったが、かなーーり、面白かった。

    ・テーマ選びがさすがQuartzなので、そもそもネタが面白い
    ・テーマがあっちこっち言ってるけど、たまに繋がったりするので、個別情報を多面的に受け取ることができる
    ・若林氏の得意技の対談風テキストで、サクサク読める

    ということで21年はQuartz Japanを購読してみた。

  • なかなかのボリュームだった。
    そして峰先生の「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」を読んだ後もそうだったが、付箋だらけで、レビューに載せたいことが沢山ありすぎて・・・上手く、簡潔に記すことは無理そうだ。
    と言うことで、印象に残ったことの全ては無理だが、あまり簡潔かどうかなどは気にせず、記していきたい。

    ●対談形式を取ったことについて、『視点を少なくともふたつ設定できることでして、「どっちとも言えないよなあ」といった話題を「どっちとも言えないよなあ」と言う状態のまま差し出すことが可能になったり』としていてる。
    『このご時世「どちらとも言い難い」ことだらけであるにもかかわらず、どちらかの陣営に押し込めようとする圧力がことさら強く「どちらともいえない」と言う立場が存在しづらくなっています。加えて多くの人が「自分もどちらかに決めなくてはいけない」と思い込んでしまっている節も』
    →これ、本当に常々感じることで、武田砂鉄さんも「わかりやすさの罪」と言う本で同じようなことをおっしゃってましたよね。
    ●『covid-19が何か新しい問題系をもたらしたのかというと、そんなことはなくて、むしろこれまで山積みにされながら遅々として改善されてこなかった問題が、この機に決定的な問題を引き起こした』
    →その通りで、例としてマイナンバーの普及やハンコ文化について触れられているが、こんなこと何年も何年も言われてきたことだよね、と。そして、給付金でマイナンバーについて再注目されたものの、じゃあそれで劇的に何か変わったのかと言えば、もう1年が経つ今でも、大した進展はない。河野大臣近辺ではハンコ文化も見直しが始まったようだけど、自治体や体質の古いままの企業では変わっている気配すらない。
    ●『ー「日本は民度が違う」なんて威張っている場合じゃないですね。ー「今回の事態で得た学びを共有しろ」と問われているときに、国民の民度の話をするのがなぜ間違っているかといえば、そこに再現性がないから。世界中の国は、すぐにでも真似できるかもしれないベストプラクティスを探している(略)台湾は今回の事態の中で目覚ましい成果をあげたことを積極的に外交カードとして使っていますが、そこで行っているのは「『台湾モデル』をみなさんに共有します」ということで、自慢するのが目的ではありません
    →もう、恥ずかしいの一言。「日本モデル」は第一波の後、盛んに言われていたけれど、マスクの重要性と3密回避の考え方が重要だったことは評価しても良いが、それもこれも、民度(国民の公衆衛生の意識の高さと、ある程度までは緩い外出自粛が守られ機能していた)だけで、なんら再現性がない。あ、麻生さんあってますね(苦笑)そうでなく、もっと政策的なことシステム的なこと、医療現場で効果があったこと、そういう再現性のあるベストプラクティスは無いんでしょうか。
    ●『先日とある雑誌の仕事をお手伝いした(略)「一番先進的なのはこれですよ」と伝えたところで、「うちの読者は、そこまでリテラシーないんで」の一点張り(略)「そのリテラシーとやらを更新するために雑誌だしてるんだろうが」とドヤしたく(略)メディアの現場の人間が自分たちのリテラシーの低さを読者や視聴者のせいにしているだけ』『日本のメディアは長いこと、視聴者のリテラシーを一番低く見積もったところを基準値として、とにかく「わかりやすくする」ということに腐心してきた』『一方で世の中はどんどん複雑になている。「わかりやすくする」ことは、その複雑さを隠蔽してしまう』
    →また出てきましたね「わかりやすさ」。それでもまだ、複雑な事柄が自分の知っている世界のことで、自分に判断能力があるものは良いが、もしここで書かれているように、メディアが報道する手前のところで、視聴者を低く見積もり、報道すらされていないのだとしたら、、、恐ろしくなる。
    ●『特に日本ではエビデンスが信頼に足るものかと言う手前のところで、権威主義的な「科学的手付き」が毛嫌いされてもいるから、エビデンスベースの政策を執り行うのであれば、それとセットで信頼性の再構築が戦略化されていないとダメ』『実際、科学者がなんと言おうと、「ワクチンなんか打たない」「マスクはしない」と言っている人はたくさんいるわけですから、「反科学」的な心性の拡大は極めて重大』
    →これはすごく感じていた。エビデンスが示されていることなのに、どこからか”とんでも医学”の説を持ち出してマスクを否定したり、冷静な判断とは思えない理由でワクチンを否定したりする人の多さに愕然とした。そしてそんな論調が相手にされないわけでもなく案外市民権を得てしまっているのは、国民の国に対する信頼性のなさなのだろうな。
    ●『社会を新しい方向に向けてピポットさせようとするときに、日本政府は、やたらと広告代理店的な手法を使う。エコポイント、キャッシュレス化のキャッシュバック・ポイント。(略)かつ相変わらずオリンピックや万博といったイベントを使って変化をレバレッジしようとする発想』『元経産省の古賀茂明さんのコラム「失業寸前の経産省は、毎年、新しい事業を立ち上げ、中身がなくても、何とか立派に見せて予算を確保。おもてなし規格認証、プレミアムフライデー、クールジャパン。これを支えるチャラ男(中小企業庁の前田長官)は今や経産省の屋台骨。チャラ男を支えるのがお祭り屋の電通。安倍首相と経産省の関係は、チャラ男と電通の関係の相似形。中身はなくてもやってる感で国民を欺くパフォーンス内閣」』
    →コロナ禍での持続化給付金と電通、オリンピックと電通。安倍内閣には、キャッチフレーズや美辞麗句がてんこ盛りでしたよねえ・・・
    ●選挙のもやもや『選挙の仕組み上は、自分の一票をひとりの候補に預けることになる』『イシューが多様で、それぞれのイシューに対する意見や立ち位置がみんなバラバラなのに、それをひとつのパッケージになった状態でしか選べないことの限界』
    →これ選挙のたびに思っていた。この候補(党)のこの政策には賛成だけど、この政策は反対で、別のこの候補の政策に賛成なんだけどな、、。けれども一市民としては自分の意思を政治に託す唯一できることが選挙なんだよな。
    ●『UBI(ユニバーサルベーシックインカム)の導入によって「労働」と「生活」を切り離すことで、仕事のブルジット化は回避できる』『UBIが実現したら何を仕事にしたいでしょう。』
    →アラスカ州などで実際に導入が始まったりしているようだけど、これはなかなか難しいのでしょうね。特に日本は。このコロナ渦においても、首相が「自助・共助・公助」とか言ってるし、生活保護に対する一部国民の嫌悪感を考えると、、ただ個人的には、せめて誰もが普通に家に住めて、食べるものに困らない生活が保障されていたら素晴らしいなとは思っている。誰しも、病気やケガで働けなくなる可能性はあるのだし、このコロナのように当人の責任ではなく失業する可能性はあるのだから。そして今の日本社会は一旦脱落した人間には厳しい社会ですから。
    ●『世の中大変な感じがするのに株価は下がっていかないから平気だって言われると「実際どうなの?」と思ってしまいます。これはアベノミクスというもののいわく言い難い腹落ちのしなさとも関わりそう』『これは何も日本だけではなさそうで、新型コロナで大変なことになっているのに、なぜか株価が上がっている状況を受けて経済学者のポール・クルーグマンがオピニオンを寄せている。そのなかで強く主張している「株価をもって経済を語る時、3つのルールを覚えておこう。一に、株式市場は経済ではない。二に、株式市場は経済ではない。三に、株式市場は経済ではない。」つまり主に、欲と恐怖の共振によって駆動される株式のパフォーマンスと、実際の経済成長の関係は、無関係か、あったとしても緩やかなものでしかない』
    →これ本当にアベノミクスが成功だと言う人達が必ずあげる「株価」に対するモヤモヤというか実社会での実感の無さ、コロナ禍でも株価が好調だと言う日々のニュースに首を傾げる毎日だったので、経済が全く分からない自分でも、感覚的には間違えていなかったのだな、と。
    ●『いま求められる「意思決定者」の資質は、人間の弱さ(認知バイアス・後悔)に対して正直であること』『「俺が言うんだから間違いない」といったこれまでのマッチョな意思決定が決定的に世界のありようとズレてきている。未来は予測不能でわからないという前提に立ってベストな選択を選びとっていくという作業は、より謙虚さを要するタスクになっている』『日本の政治家に出来るのか。お年を召した方に、いまから「変われ」と言うのは、もはやすでに酷な話かもしれません。』
    →著者は時代が移っていくなかで徐々に変わるのだろうとおっしゃっていますが、さてどれくらい先のことでしょうね?残念ながら、日本の場合、結構時間がかかりそうですよね、ジェンダーの議論など見ていても、、、
    ●『クラスターが発生したらどうするんでしょうね?(満席の飛行機、空港に検温やハンドサニタイザーや間仕切りがない様子から)-知り合いが「クラスターが発生しないことになっているんじゃないですか」と穿ったことを言っていましたが、実はそれほど穿った見方ではないのかもしれません。それでオリンピックをやろうといているのもすごいですね。「なかったことにする」戦略を推し進めることでなんとかなると思っているんでしょうか』『日本国内では「再開」ばかりに頭が行って、この特殊な状況をテコにして新しい可能性を見出そうという機運をまるで感じない』
    →今の政府や五輪委員・都なら、なかったことにしてオリンピックを(制限はしながらも)有観客でやりそうだから恐ろしい、、、何のための専門家会議。何のための尾身さんの冷静な発言。

  • Quartzを購読していて、毎週日曜日に配信される若林恵氏の週刊だえん問答を本当に楽しみにしている。
    そもそも私は対話が好きで、一方的に情報を受けるのが得意でない。本といえど対話形式なのは理解に助かっている。またあえて若林氏が視点の違う2名を演じているのもポイントが高く、一つの視点を貫くことへのエクスキューズが快い。
    Quartzの時事ニュースに関連した内容を語ってくださっており、メールマガジンにおいては準リアルタイムだが、書籍で少し時差を置くと捉え直し、振り返りになる。教訓は遡らないとわからないものであるし、渦中にいるときはその時の文脈が重要視され、時差を置くと視点が高くなり俯瞰できる。
    バイデン大統領直前の世の中の混乱を捉え直しながら読むことができた。そして読むたび捉え直しや発見がある。素晴らしいです。

  • "聞く力の欠如は現状の問題の認識を誤らせる"との記述が、先に読んだ、これまた分厚い本である『LISTEN』とシンクロし印象に残る。いろいろな話題あるも「メンタルヘルス」に関するところが自身の興味と重なって面白かった。
    "特にアメリカの場合、メンタルヘルスに変調を来たしたときに、最も手近にある「癒やし」として「カンナビス」は大きな助けとなっていたようで、[..]"
    そうなのか。

  • USのビジネスニュースメディア qz.com / Quartz の連載というか特集の Fields Guide というミニ特集記事をネタに,著者の若林氏が論点を提示するというスタイルで,個人的には国内ではあまり話題にならないというかメディアの日の目を見ないトピックスとかキーパーソンへのポインタ,視点がたくさん紹介されていてstimulativeだった.
    とくに25.データの洪水の「ソリューションにしないと価値を生まない」のくだりは日々仕事でビッグなデータを相手にしているのでまさにそうなんだよなと.

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著者プロフィール

黒鳥社コンテンツ・ディレクター。平凡社『月刊太陽』編集部を経て2000年にフリー編集者として独立。以後、雑誌、書籍、展覧会の図録などの編集を多数手がける。音楽ジャーナリストとしても活動。2012年に『WIRED』日本版編集長就任、2017年退任。2018年、黒鳥社設立。著書・編集担当に『さよなら未来』『次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』『GDX :行政府における理念と実践』『だえん問答 コロナの迷宮』『働くことの人類学【活字版】』など。「こんにちは未来」「blkswn jukebox」「音読ブラックスワン」などのポッドキャストの企画制作でも知られる。

「2023年 『『忘れられた日本人』をひらく 宮本常一と「世間」のデモクラシー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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