待つ [Kindle]

著者 :
  • 2012年9月12日発売
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感想・レビュー・書評

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  • とても好きな作品。
    二十歳の娘が毎日毎日駅でひたすら「待つ」お話。
    女性の心の内面での葛藤の独り言のような、独白体。
    読みやすくて 超短編!
    一度読んだら忘れられなくなる流石の 太宰治。
    迫り来る感じの 心理描写。
    特に最後の文章に 痺れた。
    戦争がはじまる世の中での
    ひとりの女性の不安な気持ちの描写が
    ずっと語られている…。
    この作品に込められたものを
    考えさせられて……面白い。


    • まいけるさん
      私もこの短編大好きなんです!
      学生時代に出会いました。
      懐かしい!
      私もこの短編大好きなんです!
      学生時代に出会いました。
      懐かしい!
      2024/04/26
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      わぁー、まいけるさんもお好きなんですね!
      私もです …(*^^*)ᴠ

      学生時代に読まれていたんですね…
      印象深い作品ですよね〜 (^^♪
      ...
      わぁー、まいけるさんもお好きなんですね!
      私もです …(*^^*)ᴠ

      学生時代に読まれていたんですね…
      印象深い作品ですよね〜 (^^♪

      2024/04/26
  • 再読。

    高校時代のこと。
    三者面談か何かで、担任の女性教師が話していた。

    教師「5552さんはずっと何かを‘待って’いるのね」
    母親「ああ、そう、そうなんですよ」
    教師「でも、その何かは永遠にこないんですよね」
    母親「ですよねー」

    と、私より年上の女たちは笑っていた。
    当時私はちょっとムッとしていたのだが、太宰のこの短編を
    再読して、もう二十年以上前のこの会話を思い出し、想像した。
    そうか、彼女たちも、昔は‘待って’いたのだ。
    そして待っても待ってもこないという事をいつの日にか悟ったのだ。

    太宰の『待つ』は超短編ながら、忘れがたい余韻を残す。

    駅のホームのベンチで、二十歳の女性が、毎日毎日、ただひたすら誰とも知れない人を待っている、というだけのおはなし。

    この女性は、いつか、気づくのだろうか。
    待っても待っても待ち人は来ずということを。
    そのとき女性はどうなるのだろう。

    それとも、もしかしたら、いつの日か電車の改札口から、待ち望んでいた人が現れるのかもしれない。

    女性の未来に思いを馳せると切なくなる一品。

    • 夜型さん
      5552さん、猫丸さん

      僕は、nejidonさんの帰りを待ってます。
      I'll Be Waiting. As long as I'm br...
      5552さん、猫丸さん

      僕は、nejidonさんの帰りを待ってます。
      I'll Be Waiting. As long as I'm breathin'
      2021/04/18
    • 5552さん
      猫丸さん

      にゃー
      猫丸さん

      にゃー
      2021/04/18
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      5552さん 夜型さん
      待ちましょう、、、
      5552さん 夜型さん
      待ちましょう、、、
      2021/04/18
  • 自分でも何を待っているか分からないのに、毎日毎日、駅前のベンチに座って何かを待っている二十歳の女の子。

    彼女が一体、何を待っているのか。彼女自身にもわからない。ただただ「待っている」という行動の事実と、彼女が内に持つ、肥大した期待や恐怖や閉塞感や焦燥感だけが、描かれている。

    一見、世界大戦という厳しい時代に精神を病んだ人のお話のようで、誰の心にもこういう瞬間は訪れるような気がする。私にもあった気がする。

    彼女はいつになったら待っているものに会えるのか。会えるのかもしれないし、会えないのかもしれないし、はたまた、会っても気がつかないのかもしれない。
    自分が何を待っているかさへもわからないから。

    何一つ知らないのに、彼女の抱える息苦しさのようなものに触れると、いつか会えるといいね、と思ってしまう不思議な小品。

  • 走れメロスから人間失格に進んで太宰を脱落した友達が多い。ダメだよ、いきなり全裸勇者から人間失格なんて。そんな私はメロスからここに来たので脱落しませんでした。

    戦争が始まったのにやる方なくただただ待つ二十歳の少女。何が来るでもなく、来てほしいけど来るのが怖い。
    その夢幻みたいな短い情景が高校生の私にはクリティカルヒットしたわけで。なんか共感できて。
    即ち、中高生はメロスのあとは短編集を読め、と言いたい。

  • 中期の作品。得意の女性独白形式やけど、この20歳の子は病的なほど潔癖やし自意識も拗らせてて、心を壊してしまってるよう。小品ながら一度読んだら忘れられなくなるのは、こんな形で太宰自身が待っていたものを、こんな形で戦争を描ききってるからに思う。このプロットは驚異。駅のホームが舞台なのも、いじらしい。物語の背後にある抱えきれぬ黒い影に、真摯で緊迫した願いに取り込まれる、吸引力がすごい。待つという気持ちは祈りに似てる。
    誰か彼女を早く見つけてあげて欲しい。

  • まだ若い少女の不完全な思考回路を覗いているような感じ。
    結局答えは出ない思考。ずっとループ。
    少女が何を求めているのか、ずっとはっきりしない短い小説。だが、魅力的な文章に惹かれて何回も読み返してしまう。
    駅のベンチに座る度にこれを思い出して、この少女のようにぐるぐると考えたくなる。「よく分からない」という気持ちを自分の知り得る語彙で表現して、あれでもないこれでもないと考え悩みたくなる。これが若いということなのかもしれない。
    最後の文で、心臓がどきっとする。
    もしかしたら、この少女は私の最寄り駅にいるのかもしれない。
    逆に、もしかしたら、この少女は私で、私が気づかないだけで毎日誰かを待っているのかもしれない。とも思ったりし始めるともう思考は止まらない。楽しい…

  • 私も日常を生きながら、「なにか」を待っているの
    かもしれない、と思わせられました。

  • なにも行動できない主人公が
    「待つ」って言葉を使って
    気持ちを落ち着かせているけど
    表面上は結局なにも行動してない、
    っていう話なんじゃないか。

    「待つ」と「何もしない」って紙一重だよね

  • 何を誰をまっているのか?
    戦争の最中誰を何を?
    きっと平穏な日々を待っているんだろうなと思いました。
    短いお話ですが、いい話です。

  • ショートショートである。
    【女生徒】のおまけみたいな作品。
    女であるが故の無力感を表現しようとしているのかな?
    今の女性は強くなったから、当てはまらないか?
    いやいや、もう少し広げて解釈するほうが面白いだろう。
    たとえば、生きるって何だろうという問いと考えてみてはどうだろう。
    主人公の若い女性は毎日夕暮れ時になると駅で待つ。
    だが、誰を待っているのか自分でも分からない。
    少なくとも何かを待っていることだけは確かだ。
    降りてくる人々は、みな忙しそうに通り過ぎていく。
    だが、みな目的を持っているのだろうか?
    いや、目的などなく単に惰性で生きているに違いない。
    ただ目的もなく、その日その日を生きているだけだ。
    人生先のことは分からない。
    だが、何かは起きる。
    何かが起きた結果が今の自分ではないか。
    この女性だけが特殊なわけではない。
    本当は何かを待っているはずなのに、皆それに気付こうとしていないだけじゃないか。

    生きるって待つことなのかもしれない。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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