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感想・レビュー・書評
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これだけ簡潔に書かれていて、レビューを書くなどという想像力はありませんです、はい。
下人は生きるために老婆から衣服を剥ぎ取ることを正当化しようとしたけど、イラっときたから意地悪しただけのようにも感じるけど......
自分ならどうか。人の肉を食ってまで生きるか。くらいに想像しないと実感が湧かないかもしれない。
価値観の崩壊で怒り、勇気が湧き、必要ならば悪になっても成すべきか。
実際に私なら、老婆を見た瞬間に逃げ出すだろう。
正解は無いから面白みがあるわけだが、極端な感情や行動は今の私は持ち合わせていない。
正に社会の縮図かな。
善悪には、常に曖昧さが含まれている。
どの立場から見るかによって意見は異なる。
善悪に線引きが出来るかどうか。
考えさせることが目的であろうか、とても優れた作品だと思う。
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おぞましい情景描写と、二転三転する下人の心理描写。このふたつの描写と、その絡まりあいがあまりに絶妙で、妙な現実感を醸し出している。
たった10分程度でさらりと読めてしまう作品に、ここまでのものを盛り込める芥川龍之介の手腕は、やはりすごいと感嘆せずにはいられない。
天変地異続きで、荒れ果てた京の都の羅生門。ここには、引き取り手のない死体が多数放置されている。この門下で雨宿りをする下人。主人に解雇されたばかりの彼に、行き場などない。いっそ、盗賊にでもなろうかとも思うが、そんな勇気も出ない。そのうち、雨足が強くなり、門の軒下では雨を凌げなくなった彼は、死体だらけの上階に寝床を求めようとするけど…。
無情にも打ちつける雨。
追い詰められている下人。
醜く腐り、泥のようになった無数の死体。
猿のような老婆。
彼女がしている行為。
下人と老婆の問答。
そういった情景描写の中に、それらを受けて刻一刻と変化する下男の内面描写が挟まれる。
最終的には吹っ切れたように悪に手を染める下男の姿は、その追い詰められている途中経過の情景・心理描写の見事さゆえに、責めるよりも、自分も同じ立場になればそうなんだろうな、と思わずにはいられない。
初めて読んだのは、中学の時の国語の教科書でした。
けれど、大人になって社会を知った今だからこそ、善悪なんて単純明快なものではなく、状況を理解してしまう、という複雑さで読むことができたと感じる作品でした。 -
短い。
救われない気持ちになった。 -
人は簡単に善悪に揺れ動く、人間には言い訳が必要で、逆に言えば言い訳さえあれば善人すらも悪人になり得る。
餓死するのか盗人になるのか、下人の決断を簡単には否定できない、同じ立場なら同じ行動をとるかもしれない。でもどれだけ貧しくても超えちゃいけないラインはある、人間が尊厳を無くしたらそれは獣と一緒だよ。 -
人間の性がこんな短い小説に凝縮している。
それにしても昔の話って死がとてもあっさりしている。
死も生も同格か。 -
確か中学生のときに、全集で読んだきり。国語の授業でもやった記憶があって、その時は大きな丸柱にとまったキリギリスが印象に残っていた。
すでに40歳を越したいま読み返してみると、
下人が雨が止むのを待ちながらも雨が上がってもあてがないことや、どうにもならないことをするには手段を選んでいる暇はないのに、流れに任せるようにただ待っていることとか、
自分にも身に覚えのある描写が散見された。
下人が老婆に抱いた侮蔑や憎悪は、自らに感じていたものと同じで、同族嫌悪だったんじゃなかろうか。
そして自分を正当化する。
短編ゆえに文章も冴え、深く印象に残ります。