高い城の男 [Kindle]

  • 早川書房
3.53
  • (11)
  • (26)
  • (26)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 431
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (401ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第二次世界大戦で勝ったのがドイツと日本だったら?という設定の物語。舞台となるアメリカは敗戦国としてドイツと日本に統治されていて、火星に行っているのにテレビはなかったり、いろいろチグハグ。全体を流れるストーリーはあるような、ないような…。40年近く前の作品であるということも踏まえ、この不思議な世界観を楽しむ話なのだと思う。個人的には没入できず細切れに読んだのでおもしろい!と言うには至らずでした。

  •  初のディック読み切った作品になった(笑)。
     もっと陰謀錯綜する登場人物満載で展開の追いきれない大掛かりな話になるかと思ったが、そうでなくてよかった。読後感はアッサリというかむしろ爽やか(笑)
     たぶん、歴史マニアだったらもっと白熱したのかなと思ったり。
     ただ、西洋人の見る東洋人の奇妙さやあいまいさがよく表れていると思った。
     ネットフリックスでも映像化されているらしいので、機会あればみてみたい。

     易経に入り込む精神状態や、よくできてはいるが変哲もないブローチから思考が拡散し拡がっていく様はとってもサイケデリック。
     並べるのも変かもしれないが中島らもを思い出す(カダラの豚だっけ?)。
     やっぱディックはサイケだな、って思う。
     
     ただ、何というか…
     人生の背後を支配する善でも悪でもない実体のない掴みどころのないエネルギーに、得体のしれない畏怖を感じながら、でもそれにカタチを与え、答えを導きだそうと登場人物たちの多くがしている。
     結果としては、ほとんどの人物たちにハッキリとした厄災は(1名を除いて)降りかからない。先行きの不安さだけが暗示されるような格好になっている。
     たしかに、西洋人と非西洋人の立場が逆転しているあたりがリアルなのだが、取り上げられる描写の多くは日常風景ぽく映った。

    「占い(精神世界)とSF」って個人的には相性のいいテーマだと思うんだけどなぜかあまり見当たらなかった。ついでにいうと、ディックは長編をなかなか読み切れない作家だったんだけど、先日やっと読み切れた。

     ストーリーとしてはハッキリ言って、大きな出来事はほぼ起こらない。
     あるいは「戦争」という大きな出来事が起こった後だからか。
     ただ、主要な登場人物たちが軒並み「易」をする。

     ディックはSF的なギミックや精神病的な描写が特徴なのだと思っていたが、これを読んで、自分が世界から疎外されているという根拠のないが確固とした「不安」が本態なのかも、って思った。
     それをより強烈に彩り、根拠づけるのが「精神病的な描写」であり、ギミックなのかな、と。


     私も趣味で占いをするので、自分で占う時、あるいは占ってもらう直前の不安と期待の入り混じったあの感じというのは、曰く言い難いある種の独特な感じがする。
     自分の今感じている感情は、不安ではなく、なにかの恩寵であってほしいという、妙な高揚感。

     なので、主人公たちが「易」を引く前の不安と高揚の入り混じったあの感じに同調しやすかったのかもしれない。

  • 途中までは面白いんだが、最後は「あれっ、これで終わり?」というあっけなさ。

  • 有名なSF作品なので、わざわざ解説するまでもない。第二次世界大戦で日本とドイツが戦勝国になった世界を描く歴史改変物である。特徴的なのは、作中に登場する小説が、日本とドイツが勝戦国となった世界を描くことだ。その物語が登場人物を巻き込み、ひとつの結果に導かれる。

    結末について、日本人として考えるものはあるが、それ以上に、米国人など戦勝国の人々はこの小説を読んで、何を感じるのだろうか。戦勝国と敗戦国が強者と弱者の関係になり、特に弱者の境遇がどんなものなのか、私は敗戦国の立場で読めたが、米国人らは異なる境遇をどう感じ取ったのだろうか。名作であるがゆえに様々な人の意見を聞きたい。

  • 設定は好き。だけど、古い小説特有の読みにくさがあって入り込めなかった自分がいる。でも設定は面白い。

    歴史改変モノ。もしも第二次世界大戦で枢軸国側(ナチス、日本)が勝ったら、の世界。
    ユニークなのは、小説内で『イナゴの身重く横たわる』という小説がアングラで流行っていると。で、その小説はもしも連合国側が勝っていたら、という世界を描いていて、発禁本に指定されていると。(その作者は高い城の男と呼ばれている)

    裏の裏は表的なメタさが面白い。

  • プライドを奪われた国民が、ジワジワと、目の前にある前から持ってた様々なものの価値を再発見。

  • Amazonビデオのドラマを見て読んでみたが、登場人物は重なっているのが、ドラマの方はだいぶわかりやすくなっている。
    クローズアップするところが異なるし、登場人物のキャラクターが違う。
    アクセサリーが鍵になっているとは、ドラマでは気づきにくかった。
    早くシーズン3が見たい。
    小説は設定やエピソードなど話の種子を蒔いてある印象。

  • 2017/7/30読了。
    第二次大戦で勝利したドイツと日本がアメリカを分割統治している世界の冷戦期を舞台にした歴史IFもの。割と好きなテーマなのに名作と名高い本書は未読だった。未読だったことを恥じた。
    Amazonのプライム会員になると色々な映像作品をただで見られるサービスがあって、そこで本書のドラマ化作品が配信されていた。制作総指揮がリドリー・スコット。ブレードランナーを知る世代に向けてはうまいマーケティングだ。僕もそこに引っかけられて視聴してみたら、これがなかなか面白くて、というのが本書を読もうと思ったきっかけだ。
    今さら僕が何か批評を付け足す必要などないくらいに様々な人々が評してきた作品で、ああみんなが言ってたのはこういうことなのねって追っかけながら読んだ。
    一つ感想を加えるならば、本当は戦勝国であるはずのアメリカ人が敗戦国民として描かれているので、「敗戦国民とは何か」がとても分かりやすく印象深く心に残った。敗戦国民としては勉強の足りない恥ずかしいことだが。
    さて、Amazonで配信されている本書のドラマ、実はAmazon自身が製作したオリジナルものである。その原作を僕はAmazonのサイトからダウンロードして、Amazonが作ったKindleという機械で読んだ。数年前のAmazon Kindleストアの日本進出を日本の出版業界は「黒船来航」に例えたものだが、果たして黒船程度の例え方で適切だったのだろうか? 物流業界は何に例えてるんだろうか?
    というようなことを考えたのも本書のテーマからの連想かもしれない。本書をこういう形で読んだというのは読書体験としては面白いものだった。

  • もしも日本とドイツが第二次世界大戦で買ったら、、、という仮説の小説。1960年代に書かれたというのがその時代の空気感も現していて妙にリアル。ナチスドイツの圧倒的悪としての描かれ方はすごい、、それに比べて日本はそこそこ精神世界があってまともな存在として描かれているものの、西洋からみたオリエンタルジャパン感が強い。この作者は易経でストーリーを決めたとあとがきに書いてあるけど本当かしら。

  • 本作は第二次世界大戦後のパラレルワールドが舞台。
    つまり、ドイツ、イタリア、日本という枢軸国側が勝利する、という設定。アメリカやイギリスや連合国側はどこも敗戦国で、日本人の夫婦は戦時中のアメリカの文化を表すものを趣味的に集める。
    アンティーク趣味って別に普通だけど、わざわざ古いものを求めるっていうのも、戦勝国と敗戦国の図なんだ、と気付かされます。自分たちがぶっ壊したものへの哀愁があるのかも?その辺もシニカルなディックらしい描写。

    おもしろいのは、本作の中で同時進行する複数のストーリーをつなぐ一冊の発禁寸前の本。この小説には、連合国側が勝った場合の世界が描かれ、その作者が住むのがタイトルにもなっている「高い城」。ある女性が一つの謎に迫り、この城を目指すのがクライマックス。

    読んでると難しいんですが、改めて「あの場面はこういう描写なんだ」とか、いろいろ考える小説。やっぱりディックは面白い。

全28件中 11 - 20件を表示

フィリップ・K・ディックの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×