あなたは、誰かの大切な人 (講談社文庫) [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 半年ほど前に本屋さんで衝動買いした。帯の「疲れた心に必ず効く、読む特効薬。」という言葉に惹かれて。
    直感で選んだ本というのは、本の方から何かを発してきていて、この時もやっぱり、この本の方から私に声をかけてきてたんだと思う。でも、半年積ん読になっていた。
    アラフォー独身女性が主人公の短編小説6編。アラフォーにもなると、恋やら結婚やらと浮いた話より、自分らしい働き方に自信が出てくる反面、年老いていく親の姿を見ざるを得ない。身近な人の「死」というものにも触れる。でも、年取るって嫌だね、っていうのじゃなくて。それが人生で、それが味わい深くもあるのかもしれない。
    文庫本のタイトルは、けっこう平凡なんだけど、短編のタイトルはどれも洒落てて、海外の料理や建築物の様子など、マハさんらしいなぁと思う。
    そして、「疲れた心に効く、特効薬。」
    その名のとおり、『緑陰のマナ』の話で涙腺が崩壊し、10分くらい中断して、タオルで顔を覆っていた。すっきりデトックスできた。泣くって浄化作用があるね。
    こういう小説に味わいを感じられるほど、私、大人になったんだなと思って、ちょっとうれしかった。
    年をとるのも、悪くない。でも、もうちょっと食事に気をつけないとな。

  • 2014年作品の短編集
    「最後の伝言」-紐親父と母親の話で、2020年前後からは受け入れられない話
    「月夜のアボガド」-思いのメキシコ人のメキシコ料理、アラサー独身女子の話、今時代にマッチしてほっこりする話
    「無用の人」-無口な元父親の話。男としてはちょっと寂しい話。
    「緑陰のマナ」-トルコ、神から与えられた食べ物(マナ)を亡き母親の残した梅干しに例えた話。しんみりする話。
    「波打ち際のふたり」-高齢者介護と2人の中年女性友達の話。私(男)の近未来だったら・・・。
    「皿の上の孤独」それぞれ病がある元仕事パートナーの話。
    年齢を重ね、眼精疲労が酷くなった自分と重なる。

  • 短編集だったけれど、どれも心に刺さり、涙を誘ういい物語だった。
    孤独と死。
    似ているようで、そうではないものと隣り合い、人は生きている。
    孤独を愛するから寂しいわけではない。
    死が間近にあるから弱いわけではない。
    人は、強くしぶとい生き物なのだ。

  • 3.8

  • ほっこりする良いストーリーでした。

  • 30代から50代の女性が登場する短編集。
    その人にとってかけがえのない人の物語をかいま見て、とても温かい気持ちになりました。

    【特に印象的な作品】
    最後の伝言:イケメンな事だけが取り柄の父親が最も愛し、大切にしたかったであろう妻との愛
    無用の人:不器用な父親の穏やかな優しさ
    月夜のアボカド:短い時間ながらも育まれた確かな愛のカタチ

  • 旅の風景描写が秀逸。前を向ける。

  • 短編集…とても読みやすい。自分とのつながりを感じやすい親しみのもてる内容

  • 短編集で読みやすかった。
    色鮮やかな風景、美術と建築と旅に見識があるであろう作家ならではの物語ばかりで、とても良かった。たまにこれは作者のことを言ってるのだろうか…などという描写があったり。タイトルにじ〜んときたり。癒しの時間だった。
    短編だからあっけなく感じるものもあったけど、総括的にとても良かった。

  • 2022.21
    原田マハさん、素晴らしい作品だった。
    愛とは何か?
    幸せとは何か?
    自分を大切に思ってくれている人の存在に気づけるか?
    そしてその人たちを大切にしよう。と。
    そう優しく教えてくれるような本だった。

  • アラフィフ世代は親のことをいろいろと考えることが出てきますね。

  • 好きだった話:
    •美に理解のあるお父さんが娘に素敵な桜景色が見えるお部屋を残した話
    •独身中年女性2人が親問題や仕事に奮闘しながらも、定期的に旅をして人生を楽しむ話

  • 原田さんの本の中でも上位に入るくらい好き。
    少し切なく、そして心温まる短編小説。
    ひとつひとつの短編の中にも、芸術作品の表現、自然描写の表現、原田マハさんだなぁと思う描写がたくさん。
    原田さんが書く、親と子の話がとても好き。たとえ仲良しじゃなかったとしても、親への伝えきれてない愛とか、心にきゅっとくるものがある。

  • 物語の背景や、芸術が興味深い。

  • アラフィフで、独身の女性が主人公のお話たち

    それぞれ、本人や家族についての生き方のお話
    愛や恋にまつまることが多いけれど
    決してキラキラした幸せな恋ではなく
    むしろ苦しい恋。
    それと、孤独の話。

    どれも、誠実に愛するって、誠実に生きるって、
    こういうことなのかも、
    そんなことを感じさせる内容

    家庭といった助け合うことを前提とした関係でもなく、
    恋愛のような情動に駆られた関係でもなく、
    それぞれが人間同士として相手と向かっている関係

    そんな個性的で当事者だけにしか分からない関係
    名前がないけれどユニークで豊かな絆の存在
    その大切さ、豊かさが静かにしみ込んでくる

  • ・きっかけ
    人生について考えて、読んでみたいなと思った

    ・感想
    いろんな表現がとっても素敵だったし、建築もアートもちょこちょこでてきてたのしかった〜

    「とろりと眠気のヴェールが降りてきて」の表現がすごく素敵だなと思った

    どんな人生を歩みたいか…とふと思った時にまた読み返したいな。

  • 著者の作品を初めて読んだが、短編小説で読みやすい。引き込まれた。親の介護問題、病気、親族の死などの状況設定により自分と重ねることが多く、心にしみた。海外の文化、食事、建築等の描写に魅了され、旅行に出かけたくなった。改めて人とのつながりを大切にしたいと思った作品。

  • 短編6編のなかで、私が最も惹かれた物語が『最後の伝言』。
    平林栄美、妹の真美が、母を見送る葬儀の場面から物語は綴られる。
    母のトシ子は、美容師の腕一本で娘2人を育て上げ、亭主を喰わせて家庭を維持してきた。
    髪結の亭主の三郎、通称サブちゃんは、これ以上ないぐうたら男で生活力はゼロ。
    しかも放浪癖もあり、長期間家を空けて外の女性と過ごす事など珍しくはなかった御仁だ。
    ただ一つの取り柄として、そんじょそこいらの俳優などは太刀打ちできないほどの色男で、どんな女性達のハートをも一瞬にさらってしまう程の魅力を擁していた。
    そんな男の連れ合いになったトシ子は、C調男のイケメン旦那を一生喰わせて支えるのだと云う矜持を抱き、それを幸せとして噛み締めていた。
    娘2人にとってもぐうたらな父親なのだが、子供の頃から超イケメンの父親が自慢だった。
    娘たちへの優しさの表れの一つに、時折の帰宅時に手土産として、銀座不二家のケーキを買ってくれたりもした。

    そんな優しさもある喪主となるべき父親が葬儀に顔を見せない。
    当然喪主として、結婚以来喰わしてくれた髪結の妻を見送るものと皆が思っているにも関わらず、姿を見せない。
    葬儀社の担当者から、栄美は喪主の変更を求められる。
    さて、この後の展開は⋯⋯。

  • 身近なひととの温かみのある交流が描かれていて読みやすかった

  • 年を重ねてからまた読みたい

  • どれもアラフォー独身女性が主人公の短編集。
    でも大切な人がいて、大切に思ってくれる人がいる。
    外国の描写、食べ物の描写、建物の描写、風景の描写、どれも目に浮かぶようで、いますぐどこかに行きたくなってしまった。

  • 読んだことないやと思って買ったものの、読んだことありました。笑

    でもあんまり覚えていなかったので、しっかり読みました。
    2回目に読んでも、心にじーんときました!

    特に1つ目の「最後の伝言」が好きです。
    あいにくこういうお父さんではなかったけど、お母さんのお父さんに対する気持ちはすごくよく理解できて。
    最後にお父さんも現れてよかった。

    短編で読みやすいので、寝る前のちょっとした読書時間とかにオススメです!

  • 短編に登場する主人公たちは、三十代後半から五十代の女性で、みんな現在独身で、自分で選んだ仕事をしている。
    別れや苦しみを経験してきた彼女たちは、その過去も受け入れて、前を向いて生きているように見えた。
    登場人物たちは様々な人生を背負っているが、全体を通して「みんな誰かから大切に思われているのだ」ということが伝わってくる優しい短編集だった。
    どの物語も未来を感じる前向きなラストで終わるのがとても良かった。

    中でも、私は『無用の人』が一番好きだった。
    口数が少なく、出世もできずリストラされ、母親と熟年離婚し、たった一人で亡くなっていった父親。
    父親との会話を思い出しながら、主人公が「父という人は、密やかに、うつくしいものを愛でる心を持った人だったのではないか」と考えるまでの過程と、そこから湧き上がる父親の面影が切なく、胸が痛んだ。
    家族から無用の人間扱いされていた父親の、優しくあたたかな心が、最後のシーンに詰められているような気がした。

    また、『波打ち際のふたり』では、家族の最期の時間までをどう過ごすか、ハグとナガラの旅の中で考えさせられた。
    自分のことを大切に思ってくれていた母と、「母を、彼女の人生の最後まで、ひとりっきりにしておいていいんだろうか」と考える娘。
    親もいつかは老い、死んでいく。
    普段の生活の中では意識していなかった、私自身の家族の今後を考えてしまい、胸が痛んだ。

    最後の『皿の上の孤独』は、ルイス・バラガン邸をネットで調べ、写真と照らし合わせながら読んだ。
    ピンクや黄色、白の鮮やかな色彩と景色を切り取ったような四角い空間は、写真とともに物語を追うことでより鮮明にイメージできるような気がした。
    その空間に並べられた皿の「Soledad」(孤独)の文字は、「人は、孤独になれる空間を必要としている」と言ったというバラガンの人生を表しているようで、印象的だった。
    そしてその「孤独」という言葉は、主人公・咲子のこれからの人生の中で、美しく味わい深いものとして生き続けるのだと思う。

  • 短編集。大人の女性の葛藤。

  • 神様は、ちゃんと、1人に1つずつ、幸福を割り当ててくださっている
    でもね、1番の幸福は、家族でも、恋人でも、友達でも、自分が好きな人と一緒に過ごす、ってことじゃないかしら
    メキシコが誇る20世紀建築界の巨匠、バラガンの自邸は、世界遺産にも登録されている
    人は、孤独になれる空間を必要としている
    人は結局1人なのだと言う言葉がふと胸をえぐるけれど、でも、だからこそ誰かと心と心がつながる瞬間は奇跡的なもんなのだ
    あなたを大切に思っている人は、必ずいる。このタイトルは著者から読者への真摯なメッセージなのである

  • 人と人との関わりをテーマとした短編集。
    寝る前に1話ずつ、という感じで読んでいって、読みやすく面白かった。
    どの話も、根底には愛情がテーマとなっており、それぞれの個性的な登場人物とともに、いろんな形での愛情表現がみられた。
    描写の中で、アートや建築といった美術方面だけでなく、料理が重要なアイテムとして使われているのが印象的だった。

  • みんな誰かとともにいるが、みんなどこか孤独を抱え、だからこその大切を感じる。

  • 最初に読んだ小説『楽園のカンヴァス』が面白かった、原田マハ。

    『楽園のカンヴァス』
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/4101259615

    美術館のキュレーターという過去の経歴を活かした、美術関連の小説、エッセーが印象に残っている作家さんです。
    それとともに、何かにチャレンジする女性を描いた小説というのも、この作家さんは多く発表しています。

    自分自身も『楽園のカンヴァス』を読んで以降、この方の作品をチェックして読んでいます。
    文庫化された作品がないか調べたところ、この作品が電子書籍化されていたので、読んでみることにしました。

    6つの作品で構成された、短編小説集です。
    共通しているのは、主人公(語り手)が40代の独身女性であること。
    そしてその主人公たちが、自らの”大切な人”との関係についてふりかえり、考え、語っていること。

    その相手は親であったり、仕事上のパートナーであったりとさまざま。
    この年代の女性がどのようなことで悩み、その悩みにどう向き合っているのか。
    読者が共感できるような内容になっています。

    男性読者の自分にも、自分にとって大切な人とは誰か、その人と自分はしっかり向き合っているか、一緒に過ごす時間を作ろうとしているか、楽しんでいるか・・・などなど、いろいろ考えさせられました。

    心境描写等、ステレオタイプに感じる部分もありますが、これも読者の気持ちに寄り添うために、あえてそのような表現を選んでいるのだなと、受け取りました。

    この作家さんは近年、精力的なペースで作品を発表をしているようなので、ついていけるように?今後もフォローしていきたいと思います。

    『総理の夫』原田マハ
    https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B01MU9LLBK

  • 身につまされる、なんていうのはマハさんの感想文としてはふさわしくないんだろうけど、自分と同年代の女性が主人公の短編ばかりということでいたしかたない。みんな同じような思いで生きてんだろうなあ。泣けるのは身につまされるからというよりは、マハさんの描写がうまいからだな。

  • 「むすびや」を読み終わった後に、Kindleの
    リコメンドに出てきた作品。タイトルからして暖かい系が容易
    に想像出来る。アマゾンのリコメンドシステムって、本当に優
    秀だと思う(^^)。

    そんなワケで、「本日は、お日柄もよく」でブレイクした
    原田マハ作品に初トライ。本来苦手なウォーミングヒューマン
    ドラマなのは明白だったのだけど、連作短編ならなんとか読み
    切れる、と踏んでのチョイス。

    ・・・有り体に言えば、予想通りの読後感。
    全6篇はどれも中高年に差し掛かかりつつある女性の心情を
    中心に描かれたもので、どこかでハッとするような優しさが
    一瞬に広がるタイプのジワジワ系。全体のトーンは決して明る
    くは無いのだが、最後には少し先の方にちょっと灯りが漏れて
    いる、という感じ。状況も舞台も様々なのだけど、見事な
    統一感のある構成はすばらしいと思う。

    ただ・・・。
    この作品に出てくる女性たち、ほぼ僕と同年代なのだと思うの
    だが、これがあまりにリアル(^^;)。どうしたワケか今の僕に
    はその状況が少しだけ重い気がした。まぁ、それは“難癖”の
    レベルであり、同じ年代の人が読んだらきっと違う感想を持つ
    と思うのだけど・・・。

    総合的には決してキライでは無い世界。
    事前のイメージとはちょっと違うスタイルの文章だったけど、
    凄くセンスのいい女流作家であることは認める。何かの折に、
    話題作の方も読んどいた方がいいような気がするなぁ・・・。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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