リボルバー (幻冬舎単行本) [Kindle]

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  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • あなたは、見ず知らずの女性が、一丁の『リボルバー』をいきなり目の前に出したとしたらどうするでしょうか?

    …って、そんな質問の答えを悠長に考えている余裕はありませんよね。殺される!と恐怖に慄いて、その場から素早く立ち去るのが賢明とも言えます。そもそもこの国では本物の『リボルバー』を目にした人自体ほとんどいないと思いますし、そもそも銃刀法違反の列記とした犯罪行為を目の前にして、いち早く警察に通報するのが善良なる市民としてなすべきことかもしれません。

    では、そんな女性がその『リボルバー』について、こんなことを言い出したとしたらどうでしょうか?
    
     『あのリボルバーは、フィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたものです』。

    この作品はオークション会社に持ち込まれた『錆びついたリボルバー』の真相を追い求める一人の日本人女性の物語。そんな女性が探求するゴッホやゴーギャンが、かつてこの世界に確かに生きていたことを感じる物語。そしてそれは、『錆びついたリボルバー』がそんな巨人たちが生きた時代と今の時代を結びつけるその先に、ゴッホとゴーギャンという二人の画家の生き様を感じる物語です。
    
    『地下鉄の待ち時間、ひとり暮らしの部屋に帰ってひと息ついたとき、スマートフォンでオークションサイトを漫然と眺める』のが日課になっているのは主人公の高遠冴。そんな冴は『パリ八区にあるオークション会社』、『通称CDC』に勤務しています。『設立十年という若い会社』というCDCでは、『美術工芸品、骨董品』などを、『オークションにかけて売買の仲介をする』ことを業務としています。そんなある日、冴は『世界最大手のオークション会社「サザビーズ」』に勤める友人の小坂莉子とランチをしました。オークションの話題で盛り上がる中、莉子は『このまえゴーギャンらしき作品が出てきた』と冴がメールをしたことを持ち出します。サザビーズとは比べ物にならない小規模な『我が社もいっぱしにゴーギャンをオークションテーブルに載せられる日がきた』と、『出品決定前の段階で』つい莉子にメッセージを出してしまった冴。しかし、結局『持ち込まれた作品は贋作と判明』しました。しかも、その鑑定は冴が行ったのでした。社長のギローをがっかりさせたその結論を莉子には伝えていなかったことを思い出した冴は『実は、ゴーギャンの真筆じゃなかったの』と『気落ちした声で』伝えます。そして、話題を切り替えサザビーズが『モディリアーニの最高落札』を出したことを話題にすると、自分が『交渉をサポートしたの』と莉子は語ります。それを聞いて『まったく、かなわない』と自分のことが情けなくなる冴。場面は変わり、『CDCが定期的にオークションを開催する会場、オテル・ドゥルオー』で『記念すべき四百回目のセールが終了した』ため、あと片付けを始めた冴。そんな時、『思い詰めたような目がこちらを見据えているのに』気づいた冴は、『こんにちは、マダム…何かご用でしょうか?』と声をかけます。『あの、ちょっと見ていただきたいものがあって…』と言う女性に『出品のご依頼でしょうか?』と聞き返す冴。すると女性は『トートバッグの中からしわくちゃの茶色い紙袋を取り出し』ました。『その手がかすかに震えている』のを見て『ただならぬもの』、『ふと、そのひと言が脳裏をよぎった』という冴。『一度開けてしまったら、もう後には引き返せない』と思う冴。そんな冴の目の前に女性は紙袋からあるものを取り出しました。『錆びついた一丁の拳銃。リボルバーだった』というその中身。そんな『リボルバー』について女性はこんなことを語ります。『あのリボルバーは、フィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたものです』。そんな衝撃的な由来を持つという『リボルバー』に隠されたまさかの真実を探し求める物語が始まりました。

    “ゴッホの死。アート史上最大の謎に迫る、著者渾身の傑作ミステリ”という、もうムズムズさせられるような宣伝文句に惹かれるこの作品。アート小説と言えば原田マハさん、原田マハさんと言えばアート小説と、もう対になった言葉のように語られるくらいにアート小説の第一人者として原田マハさんは欠かせない存在です。そんな原田さんのアート小説の最新作として2021年5月に刊行されたのがこの作品です。原田さんのアート小説には、マティス、ピカソ、ドガ、そしてモネという絵画界の巨匠が次から次へとリアルに登場する「ジヴェルニーの食卓」、『ゲルニカ』という絵に課せられた役割、果たすべき使命に思いを馳せる「暗幕のゲルニカ」、そして、ルソーの大作の真贋を見極めるというタスクに立ち向かう若き日本人ルソー研究者を追う「楽園のカンヴァス」など、絵画に隠された謎に光を当て、そこに眠る物語を紡ぎ出していく小説の数々には私たちを魅了してやまない力があると思います。

    そして、キュレーターとして絵画を見る確かな目をお持ちの原田さんの小説は、私たちが気付けずにいる絵画の魅力をわかりやすい筆致で伝えてくれます。この作品では、ゴッホ、ゴーギャンという誰もが知る絵画界の巨人二人に光が当てられていきます。まずは、そんな二人の絵を原田さんがどのように表現しているかを作中に登場する一枚の絵の表現で見てみたいと思います。小説中、ゴーギャンがゴッホの絵を見て衝撃を受けるシーンが登場します。『なんというかそれは、実に、まったく不思議な風景画だった』というゴーギャンの目に映ったのは『瑠璃紺の静寂が支配する画面、月と星が煌々と輝く夜半の風景』でした。『左手にすっくと背筋を伸ばした糸杉が佇み、青い山影を従えて村は静かに寝入っている』というその風景。『さざなみの軌跡を残して天空を巡りゆく星々は、無情の闇に沈めまいと救いの光で村を包み込む』と、星々の下に村が描かれていることを柔らかく表現します。そして、『三日月は勝利の旗のごとく季節風を受けて夜空にはためき、やがて夜明けとともに祝福された新しい日が生まれ出る』と時間の流れを暗示します。そんな絵を見て『これは…なんなんだ』と戸惑うゴーギャンは『完全に言葉を失』い、こんな風に語ります。『フィンセント。もはや…君はもはや、未踏の領域に踏み込んでしまったのか』。当該シーンに作品名は登場しませんが、ゴッホの代表作の一つ”星月夜”をゴーギャンが見た印象を描写したものだと思われます。私が原田さんの小説を読む際はスマホ画面に該当する絵を表示させながら読むようにしています。この作品でも同様な方法で読書を楽しむことができましたが、”星月夜”というよく知る絵にこんな物語を紡ぎ出すことができるんだ!、とスマホ画面に映る絵をしみじみと眺めてしまった私。絵画に対する理解と共に、小説の中でゴーギャンが受けたであろう衝撃をまるで読者が追体験することのできる見事な描写だと思いました。

    そして、そんなアートな魅力たっぷりのこの作品で原田さんが取り上げるのはゴッホの死の謎を巡る物語です。ゴッホで有名なのはゴーギャンと『何かの拍子で激しい口論になった』後、『激昂したゴッホがナイフを取り出して自らの耳を切り落とした』といういわゆる『耳切り事件』です。『その日から約一年半後に自殺を図る』と展開していくゴッホの若くして最晩年の悲劇。そんな悲劇の幕開けとも言える『耳切り事件』を自ら描いた”耳に包帯を巻いた自画像”は、アートにそれほど興味がなくとも印象に残っている方は多いと思います。しかし一方で、その後の『自殺を図』ったということの詳細はあまり知られていないように思います。私もゴッホの絵は大好きでこの作品に登場するオランダにあるゴッホ美術館にも訪れたことがあります。そんなゴッホの死の真相はどこか謎めいていて、ゴッホという天才画家の人物像に興味を抱かせる一因になっているところがあるようにも思います。この作品では、そんなゴッホの死の真相に、原田さんは一つの可能性を提示することによって、ゴッホの死に隠されている真実に迫っていきます。私は数多くの女性作家さんの小説ばかりを読んできました。その中には作家さんがその作品を書き上げるに際して参考にした文献が挙げられていることがありますが、この作品の巻末にみることのできる参考文献の数は群を抜いています。外国の文献を含めその数33件というまるでこの作品が何らかの研究論文であるかのように登場する参考文献の数々。そして巻末にはもう一つこんな一文が記されています。

    『この作品は史実に基づくフィクションです』。

    そう、この作品は幾ら数多くの参考文献に根拠を求め、史実を忠実に追ってはいても真実の物語ではありません。『ゴッホと最後の時間をともに過ごした』弟のテオ。そんな『テオがもっとも近い存在だった妻のヨーへ書き送った手紙には、フィンセントが「自殺を図った」とはひと言も明記されていない』という事実。そして、『死にゆく兄によって真実を知らされたであろう唯一の証人であるテオは、フィンセントの死のわずか半年後、他界した』という現実がある以上、ゴッホの死の真相が明らかになるとしたら、それは芸術界を揺るがす大事件となってしまいます。この作品は、上記したさまざま文献調査の結果から原田さんが導き出した原田さんなりのこのミステリに対する答えをフィクションという形で小説にしたものです。

    しかし、その内容はフィクションという言葉に違和感を感じるほどにリアルです。原田さんのアート小説では、物語は二階層で展開するパターンが多いと思います。一つの層は、現代を生きる主人公が何らかの形で一人の画家、もしくはその画家が遺した絵画に興味を持ち、その画家もしくは絵画に隠されたミステリへと向き合っていく物語です。そして、もう一つの層が、実際にその絵画が生まれた時代、その絵画を遺した画家が闊歩し、そのミステリとされる人生をリアルに生きる様が描かれていくものです。これら二つの層を巧みに絡み合わせ、また物語に数多の伏線を張り、それを結末に向けて丁寧に回収していく、これが原田さんのアート小説を読む醍醐味です。

    そんな原田さんがこの作品で提示したのが

    『あのリボルバーは、フィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたものです』。

    という衝撃的な言葉の先に続く物語でした。サラという女性が、主人公の冴が働くオークション会社・CDCにそんな説明と共に『錆びついたリボルバー』を持ち込んだことから物語は動き出します。しかし、『リボルバー』を目の前に提示されても、それが使われた場面を『見た者もいなければ、なんら証拠も残っていない。証明しようがない』と冴が受け止めるのは当然のことです。これは、読者であっても同じことでしょう。そんなことを言い出したらこの世のどんな物でもお宝に早変わり、まさに言ったが勝ちの世界が現出してしまいます。それを33の文献資料をもとに極めて説得力のある物語を原田さんはそこに描き出していきます。まるで史実が目の前で展開するかのように、弟のテオが、ゴーギャンが、そしてゴッホが動き回る様が眼前に浮かび上がってくる極めて生々しい展開。まさにページを捲る手が止まらないという言葉そのものの読書がそこにはありました。ミステリにネタバレは禁物です。余計なひと言がネタバレに繋がりかねませんのでこれ以上その展開に触れることは避けたいと思いますが、原田さんによるゴッホの死の真相に迫るこの物語は、さてさてが太鼓判をもっておすすめしたい、アート小説の魅力をこれでもかと詰め込んだものでした。

    そんな絶賛しかないこの作品でもう一点、魅力としてお伝えしたいことがあります。それがゴーギャンとゴッホの関係を描く側面です。原田さんの作品では他の作品でも、当時を生きた画家同士の交流を描いたものがあります。今となってはそれぞれが美術史に燦然と輝く巨人たち。そんな巨人たちがさまざまに関係しあって交流を深めていく、その中でお互いがお互いに影響を与え合って、新たな美がそこに想像されていく。もちろんフィクションではありますが、あまりにリアルに描かれるその描写には、遺された絵に対する見方も変わるほどです。この作品では、そんなゴーギャンとゴッホの交流が鮮やかに描かれていきます。

    『君の絵を初めて見たとき、まるで心臓を撃ち抜かれたような衝撃だった』。

    そんな風にゴーギャンに語るゴッホ。そして、

    『とてつもない画家だ、と私はそのとき悟った』。

    そんな風にゴッホのことを胸の内で思うゴーギャン。

    絵画界の巨人二人が交流するというなんとも贅沢なシーンがリアルに描かれていくこの作品。絵画が好きな方はもちろん、そうでない方含め、この鳥肌もののシーンの描写を楽しめるこの作品を是非手にしていただきたいと思います。

    『兄の絵には驚くべき新しさがある。でも早過ぎるんだ。次に描くべきものが何なのかわかっていて、どんどん先へ行ってしまう』。

    弟のテオがそんな風に語るゴッホの素顔、絵に対する情熱、そしてその生き様。この作品には37年という短い人生を精一杯生きたゴッホという絵画界の巨人が、同時代を生きたゴーギャン、そして弟のテオとの関わりを通じてリアルに時代を闊歩する様が描かれていました。『錆びついたリボルバー』に隠された謎をダイナミックに紐解いていく原田さんの鮮やかな筆致により、絵画界の巨人たちが心に血宿る一人の人間であったことに感じ入るこの作品。原田さんの数々のアート小説の中でも傑作中の傑作、そう断言したい素晴らしい作品でした。

  • パリの弱小オークション会社CDCに、錆び付いた一丁の拳銃が持ち込まれた。1890年7月にあのゴッホを撃ち抜いた拳銃という触れ込みなのだが…。この拳銃、果たしてマニア垂涎の歴史的遺物なのか、単なる鉄屑に過ぎないのか? CDC社員でゴッホとゴーギャンの関係性を研究している冴が中心となって、拳銃の由来とゴッホの死の真相、そしてゴッホとゴーギャンの絆を探る。

    著者お得意のミステリー仕立てのアート小説。現在と過去が二重に描かれるいつものパターンだが、本作では謎を追う現代パートがいつになく長くなっている。

    本作は、ゴッホやテオでなく、ゴーギャンにスポットライトを当てている。なので「たゆたえども沈まず」との重複感は全くない。ただ、「たゆたえども沈まず」でゴッホの作品に親しんでから読んだので、より深く味わえたような気はする。ゴーギャンの作品についても、本作を読みながらスマホ片手に結構見たが、その良さはよく分からなかった。のっぺりしていて、色がくすんでいて、躍動感も感じられない。確かに、不思議な雰囲気を醸し出してはいるが…。

    「あの燃え立つように鮮やかな色彩と、絵の具が叫ぶ激しい筆致」。ゴッホの絵の特徴について、何気にこんな表現ができる著者、やっぱり凄いな!

  • 原田マハのアート小説久しぶりに読んだ。オークションハウスに持ち込まれたリボルバーは本当にゴッホを撃ち抜いたものなのか?というミステリー。
    ゴッホとゴーギャンの関係性を深掘りする。
    ワクワクしながら読めました。楽しい〜

  • 先に原田マハ先生の『たゆたえども沈まず』を読んで、既にゴッホの人生と作品のトリコとなっていた自分にとって、ゴーギャンの人生からのアプローチもあるのかと感動した一冊でした。
    ゴッホの死の真相とは?という壮大なミステリーを読んだような気持ちになりました。
    そもそも、美術は学校の教科書で見てた程度の知識しか持たない私に画家の思いをストーリー仕立てにして読ませてくれることに感謝だ。
    この話を書くのにどのくらいの時間をかけたのだろう。調べる作業は勿論楽しいとはいえ、丁寧に紐解き整理するのが難しい話。
    ただ、絵画やオークションに詳しくなるだけではなく、国を問わない人の感情についても考えさせられます。

  • 原田マハの作品を読む度に、こんなにもアートを深く愛し、新しい解釈により、多くのアーティストやアートに再び命を吹き込める素晴らしさに圧倒される。
    まるで目の前にあるかのような生き生きとした描写と、原田マハの新しい視点を与えられることによって、単純にも毎回そのアーティストのとこがとても好きになってしまう。

    真実とも史実とも異なるかもしれないが、こうして新しい知見と素晴らしい世界を見せてくれることに感謝したい。

  • 凄かった。
    最初はなかなかページを繰る手が進まずに、ノロノロと読んでいたのですが、途中から夢中になって、一気に読んでしまいました。
    これほどまでに、人を魅了してやまない、フィンセント・ファン・ゴッホ。そしてそのほとばしる程の熱量を物語と文章に込めることの出来る原田マハさん。読み終えた時の達成感と満足感と高揚感は、一心不乱にカンヴァスに向かい渾身の一作を描き上げた彼らのそんな感覚に一瞬だけでも近づけた錯覚に陥るようでした。

    ゴッホとゴーギャンの関係性を研究していて、博士論文を書こうと思っている高遠冴は、パリの小さなオークション会社に勤めている。そんな彼女の元に、一丁のリボルバーが持ち込まれる。その古びて錆だらけのリボルバーは、ゴッホの自殺に使われたものだという。果たしてそのリボルバーはゴッホと関係のあるものなのか。それとも…。

    物語は物語なのだろうけど、心が震えて、ゴッホやゴーギャンの物語の渦に入り込んでしまう様な、天才としか形容できない奇跡を垣間見るような、不思議な感覚に陥りました。
    フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・ゴーギャン。彼らの作品に今すぐ会いに行きたい。

  • ゴッホの描いた、ヒマワリ
    花瓶にそれぞれ、バラバラの方向に15本差し、
    開ききったもの、散りそうなもの取り交ぜてある。

    ファン・ゴッホの足跡を辿るようにゴッホの聖地、オーヴェールが舞台。

    ゴッホが自殺に使われたという錆びた拳銃リボルバーが発見された。
    その史実をもとに、ゴッホとゴーギャンとの関わり、思いがストーリーの中心。
    ゴーギャンのファミリーツリーもなかなか面白かった。

    ウクライナの国旗は青い空と金色の麦畑がモチーフ。
    青と黄色のコントラストはひまわり畑も重なって見える。
    そして、戦争で引き裂かれた夫婦の「ひまわり」とも重なる。

  • ゴッホには個人的な思い出がある。小学校に上がる前、あることで入院した時、近所に住む和装の随筆家のOさんからお見舞いの絵葉書をもらった。絵葉書はゴッホの有名な糸杉の絵だった。以来、ゴッホは私には特別な画家だった。
    『リボルバー』はそのゴッホにまつわる物語。パリ大学で美術の修士号を取り、ゴッホとゴーギャンの相互影響について博士論文を書こうとしているオークション会社に勤務する高遠冴。ある日、ゴッホが自らを撃ったとされる拳銃が、オークションが終わったばかりの会場に無名の女性画家によって持ち込まれる。女性画家の持ち込んだ拳銃が、果たしてその拳銃は本物なのか。
    この作者のアート作品はミステリーの要素と知的好奇心の両方が満たされて本当におもしろい。

  • 原田マハ作品の最初に「たゆたえども沈まず」を読んだからか、リボルバーが純粋な絵画ミステリだとは思いもしなかったけど、解釈の一つが素晴らしい作品になるくらいゴッホとゴーギャンは偉大な画家なのだな〜

  • パリの小さなオークション会社に持ち込まれたリボルバー。ゴッホが自殺に使用したリボルバーだという。

    ゴッホとゴーギャンを博士論文のテーマとしているオークション会社の職員「冴」は、その真偽を探るが、すでにゴッホのリボルバーは美術館の企画展で展示されており、それとは別物だという。
    では、このリボルバーは何なんだ?

    ゴッホのゴーギャンへの思い。
    ゴーギャンのゴッホへの思い。
    お互いがお互いの芸術を認め合い、一時は高め合った。
    そして破局。

    小説だからこそ、史実とは違う思い切った展開を繰り広げる。でも、この小説で描かれていることが、真実だとしてもおかしくない。
    そんな空想をさせてくれる。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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