ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界 (幻冬舎新書) [Kindle]
- 幻冬舎 (2022年9月21日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (285ページ)
感想・レビュー・書評
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米中関係に精通するジャーナリストが、国際政治のエキスパート5人との対談を通じて、ロシアによるウクライナ侵攻の経緯や先行き、そして高まる台湾有事のリスクなどを明らかにした書。
得るものの何もない、合理性の欠片もないウクライナ戦争を仕掛けたロシア・プーチン大統領には、欧米諸国への強い不信感や警戒心がある。そしてウクライナ侵攻の引き金となったのはアメリカ・バイデン大統領の失言と弱腰だった。来るべき台湾有事に備えて中国はウクライナ戦争の行方をしっかり分析している。これからの時代は帝国主義時代のパワーポリティクスと米中による冷戦的な二極構造のミックスになる、等々。
とても21世紀の洗練された国際社会とは思えない、原始的で野蛮な行為が横行する国際社会は今後ますます混迷を深めていくという。
ウクライナ戦争は対岸の火事などではない。平和ボケした日本危うし。とはいえこの期に及んで出来ることは極めて限られるしなあ。台湾有事への危機感を煽られた一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(タグ更新のため)
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中国が台湾に戦争をしかけるのか。
今回のウクライナの戦争を、中国はどうとらえているか。
ロシアは『主権国家』をどうとらえているか(日本をどう見ているか)、などの考察が大変わかりやすい。
ロシアと日本は国境を接している。今回国境を越えて軍を派遣したロシアが日本側の国境で同じことを起こさないか話題になっていないのは何故?と思っていたが、専門家はなるほど、こう考えているからか、と納得した。
今の戦争は、石油利権がからんでいたり、戦争を起こすことにどんな利益があるの?と考えてしまい、利益が発生しない戦争は起こらないと思っていたが、そのような戦争が起こるようになったのは長い人類史の中のここ100年のことだというのは、確かになあ、と思わされる。今更こんな前世紀型の戦争は起こらないと頭から排除していたところに、利権を隠すお題目ではなく大国が前世紀的な民族とか理念とかで、国家が人を殺す戦争が起きてしまうのだな……。 -
(2022/380)エマニュエル・トッド氏の著書と比較しつつ読む。国際法を破って軍事侵略したロシアが悪いのであってウクライナにも非があるなどという(特に日本人の)論調には懸念するという立場。本書の見据える先は台湾有事。断固としてロシアの暴挙を許さず認めずの姿勢を取らないと、いざ中国が台湾、さらには尖閣に侵攻した際にどうするのか。国防問題も(増税ありきじゃなく)真剣に考えなくてはならない。複数人との対談形式で視点や裏付けが変わるのは良いが、著者側の話が繰返しになる面が生じるのは仕方ないとは言えやや辛い。
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ウクライナ戦争の話から始まり、ロシア、中国と世界がどのように向き合っていったらよいのかがかかれていて、ボーっとしてたらだめだよなと思いました。
状況は日々かわっていくので常におっていないといけないので気をつけて情勢を見ておこうと思う。 -
2022年2月に勃発した、ロシアによるウクライナ侵攻。
そして近い将来に発生する可能性があると言われる、中国による台湾統一。
日本の近隣国の動きが活発になり、「この後、どんな世の中になっていくのだろう」と不安を感じています。
自分なりの考えを持ちたいと思い、遅まきながら関連する書籍を読んでいます。
『知らないと後悔する 日本が侵攻される日』
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B0B96T1B5K
『第三次世界大戦はもう始まっている』
https://booklog.jp/users/makabe38/archives/1/B0B45MC7Q5
この本は、国際問題を中心に取り組んできたジャーナリストが、この分野の専門家5人との間で行った対談をまとめたもの。
まず第1章では、ロシアとウクライナの戦争について、意見が交わされています。
ロシア、中国の首脳にとって、「自立した国」とはどういう国を指すか、という指摘が特に印象に残りました(日本は自立した国と見られていない)。
第2章は、戦争における武力以外の側面について。
経済面でのつながりも、相手国に対する影響力に結びつく。
民間の活動も含め、他国との関係については戦略的に取り組む必要がある。
これらの点においても、日本には弱さがあると理解しました。
第3章は、中国と米国、日米同盟の関係について。
米国および日米同盟は、軍事力の面で中国に劣っている。
日本の軍備の整備は必要だが、予算と時間が限られる中で、上記の前提に立って何をするか、選択して進める必要がある。
日本が置かれている厳しい状況を、認識しました。
第4章は、中国軍による台湾侵攻の可能性について。
国力の差が開きつつある中国に対して、ソフト、ハードともに、日本側の備えができていないという状況には、怖いものを感じてしまいました。
悪い将来を考えない、考えられないという、日本人全般のマインドは、やはり変えるべきだと思います。
第5章は、今後の世界はどうなるか、について。
米国一強の世界は終わった。
では、米中二強の世界になるのか?
核兵器そして大きな軍事力を持たない日本。
「軍事はアメリカにお任せします」では済まない、ということを国民が認識し、今後どうしていくかをしっかり議論していく必要がある、と思いました。
“現在の日本の状況に警告を発する”という立ち位置で書かれているとは思いますが、本書を聴き終えて、「日本は大丈夫なのかな」と不安な気持ちが膨らんでしまいました。
「政治家に任せる」というスタンスではなく、国民それぞれが考えて、ベクトルを合わせて国の進路を変えていく。
ただし、そのベクトル合わせには、近隣国による情報操作もあり得る。
あまり悲観的になり過ぎてもいけないと思いますが、本書に接して、「このままではいけない」という意識がさらに強まりました。
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タイトル通りではあるけど、ほぼ米中ロと日本の話がほとんどで他地域や世界全体といった視野はあまりない。軍事的には考えさせられる事が多い
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米中関係に精通する峰村氏が、国際政治のエキスパート5人と議論を戦わせ、これからの世界の勢力図について考える一冊となっています。
6人それぞれの視点があるのも良かったと思います。 -
アメリカの地政学者はパワーを基礎にして考える傾向gああるので、ウクライナをフィンランドかと言っている。勢力均衡を重視するので、ウクライナがフィンランド化すればバランスがとれてハッピーだと考える。最近ではアメリカでも評判が悪いがリアリズムと親和性が良い。今はリアリストが大国間戦争を抑止できると考えるので嫌われている。
制裁の効果として期待されるのは、相手のコストをあげること。相手に戦争を続けるのはしんどいと思わせること。
国と国の信頼関係を構築していくことが安全保障上、何よりも重要。
台湾有事における西側の弱点は、欧米と違ってアジア諸国は小国ばかりで、地政学的に当事者意識が少ない。
ロシアがウクライナでサイバー攻撃を行っても効果はないウクライナ人の意識を変えるどころか、ウクライナ人の団結を高める結果になっている。
AIやドローンの民間技術が中国にその主導権を握られると日本は立ちいかなくなる。安全保障上大きな問題。
パワーポリティクスの世界における軍事大国は、国際法に頼る必要がない。軍事力を活用すれば、ルールを持ち出すことなく自分たちの問題を解決できる。戦前の日本も大国だったので国際法でなく、自らの軍事力によって問題を解決しようとした。いっぽう、十分な軍事力を持たない国は、国際ルールに依拠しなければ問題を解決できない。戦後の日本は強大な軍事力を持たない平和国家としての道を選択した。主要国の中でも抑制的な軍事力しか持たない日本はルールに基づく国際秩序に依存せざるを得ない。