「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」
冒頭でこうこられたら引き込まれずにはいられません。
売れないコラム書きの老人がなじみの女将に見繕ってもらった少女は、老人の前でただただ眠る。その姿に、肉欲を越えて深い情愛をもつ老人の話。
ラテンアメリカ文学の老人のまあなんと元気なことか。この小説の元となった川端康成「眠れる美女」には秘め事の背徳と老いの哀しさが出ていたのですが、そんなもの吹き飛ばすラテンパワー。
カサレスの「豚の戦記」でも老人と若い女が結ばれるし、プイグの「南国に日は落ちて」の姉妹は「だってあの頃は75歳、ほんの小娘だったのよ、でも今は81歳。もう小娘じゃないわ」なんて会話を交わします。
本来なら「眠ったままの少女とそれを見る老人の恋愛」など決して成り立たないものを成り立たせているのが小説家の面目躍如。
またこの主人公の皮肉めいたユーモラスさがくすりと笑えます。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
●南米短編
- 感想投稿日 : 2011年9月9日
- 読了日 : 2011年9月9日
- 本棚登録日 : 2011年9月9日
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