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  • 白水社 (2012年9月26日発売)
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本棚登録 : 860
感想 : 46
5

チリ出身ロベルト・ボラーニョの遺作。850ページ上下組というかなりのボリュームで、五部からなる長編作品。
それぞれの章は別の小説ともいえるし、細い糸でつながってもいる。その”糸”は謎の作家アルチンボルディと、メキシコで起こった女性連続殺人。

★★★
第一部は「批評家たちの部」
まずは読者にドイツ作家のベンノ・フォン・アルチンボルディが紹介される。
彼は何度かノーベル賞候補にもなっているが、完全に世間から行方をくらましている。第一部の評論家たちは、フランス、イタリア、イギリス、スペインのドイツ文学研究者。3人の男と1人の女の評論家たちはアルチンボルディがメキシコのサンタテレサにいるという情報を得て探しに行く。第一部では彼らの絡み合った恋愛模様と、文学論を中心に進み、そして向かったサンタテレサでの女性連続殺人事件に触れる。

第二部は「アマルフィターノの部」。第一部の批評家たちが立ち寄ったサンタテレサの大学のチリ出身の文学教授。ヒッピーの妻は自由奔放に暮らしアマルフィターノは一人娘ロサと暮らしている。庭の物干しには一冊の本を吊るし、たまに訪れる幻聴を思考する。

第三部は「フェイトの部」。アフリカ系アメリカ人の記者フェイトは、サンタテレサで行われるボクシングの試合の取材に行き、女性連続殺人を知る。

そして一番長い第四部は「犯罪の部」
第一部から少しずつ語られてきた「女性連続殺人」の様相と、捜査に係る警察や病院関係者の状況。メキシコのサンタテレサで次々見つかる女性たちの死体。殺され方も様々、犯人が分かるものあれば、未解決事件として埋もれるものもあり。それを追う警察関係者の話。

第四部までは、抑え、控えた事実の記録的な手法。作者の文学的情熱を感じるのは(それも静かな熱狂)最後の第五部「アルチンボルディの部」。
ここで語られるのはドイツの寒村で生まれたハンス・ライターの半生。彼の家族、戦争、病気の妻との生活、彼がアルチンボルディと名乗り作家になるまで、そして隠遁。
物語の最後で隠遁のアルチンボルディのはサンタヘレナへ向かう。
時系列的にはこの後、第一部の批評家たちがサンタヘレナへ向かうわけですね。
★★★

作者は当初、この本を一つの章ごとに一冊の本にしての出版を考えていたとのこと。しかしそうすると第四章はひたすらひたすら女が犯され殺され捨てられていく羅列になるわけで、しかも一番長い章なのでこればっかりで上下巻になったりしたかもしれない、ちょっとそれはキツイので、どんなに長くでも一冊で出してもらってよかったですよ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ●南米長編
感想投稿日 : 2014年4月21日
読了日 : 2014年4月21日
本棚登録日 : 2014年4月21日

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