1ミリの後悔もない、はずがない

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1705
感想 : 163
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103514411

作品紹介・あらすじ

ネクストブレイクはこの作家! 心揺さぶる恋を描く鮮烈なデビュー作。「俺いま、すごくやましい気持ち……」わたしが好きになったのは、背が高く喉仏の美しい桐原。あの日々があったから、そのあと人に言えないような絶望があっても、わたしは生きてこられた――。ひりひりと肌を刺す恋の記憶。出口の見えない家族関係。人生の切実なひと筋の光を描く究極の恋愛小説。R-18文学賞読者賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • なんだろう、この感じ。心が苦しくなるような、ヒリヒリするような感覚。何でだろうと考えて、この作家さんは、きっと大人になると、みんなが忘れ去ってしまうような、純粋な心を持ち続けている人なんだろうなと思った。いずれにしても、こういう感覚を呼び起こさせる書き手はなかなかいない。

    短編集だが、全て繋がっている。そして、全て幸せの中にも切なさが潜んでいて、まさにこのタイトルが全てを表しているようだ。

    心を揺さぶられるとか、そういう言葉があるが、この小説がまさにそうだ。私は1ミリの後悔のないはずがあるだろうか。せめて、これからは後悔のない人生を歩んでいきたい。

    • chie0305さん
      ひとしさん、こちらにお返事します。「幾巧のイヴ」は2作目はちょっと期待外れというか…前作は江戸時代風の日本という驚きの設定が斬新だったのと、...
      ひとしさん、こちらにお返事します。「幾巧のイヴ」は2作目はちょっと期待外れというか…前作は江戸時代風の日本という驚きの設定が斬新だったのと、人間ドラマが素晴らしかったんですが。でも設定は好きなので、次巻が出たら読んじゃうかなー。
      2018/10/25
  • これはとても切ないですな。若い人向けのように見せておいて、実は本当の味を知るにはある程度の人生経験が必要な本かもしれません。
    今がどんなに満たされていても、過去に一ミリの後悔が無いわけがない。そりゃそうだという感じですが、これは本当にその時に戻りたいわけではなくて、失われた時間へのノスタルジーなんでしょう。
    この本の中の彼らも、前へ前へと歩を進めながらも、ふと思い出す昔の記憶。その時にしかない空気感はもう絶対に取り戻すことが出来ない。幸せ不幸せとは別のベクトルで存在する感情とでもいうのでしょうか。
    その時は必死で、これを無くしたら生きていけないという思い込みも有ったりして、後で振りかえると、あの時感じた悲壮感なんかも、思い出として昇華される瞬間が来るのではないか。そういう風に繰り返し繰り返し上書きした人生に、ノイズのように残る感覚を描いた本です。
    連作で、少しづつ関わっている人々にバトンタッチしていきますが、どれもこれも少しエロチックで愛おしい物語です。品行方正ではない大人の魅力です。

  • 桐原と由井の恋を軸とした、恋愛小説。五編、中学時代のクラスメートたちの登場人物を主人公とした物語もある。大人になってその頃を振り返るといった風。由井の家はお父さんの問題や経済的な問題があり由井は苦しい毎日を過ごす。大人が信じられない。そんな中、桐原と恋に落ちる。桐原は、一筋の光、由井は生きてて良かったと思えるようになった。時が流れ由井はやはり苦労した男(母が亡くなり父は自分たち兄弟を施設に入れた)と結婚をし娘を授かる。娘との旅で出会ったものは…。帯に椎名林檎さん絶賛とか、各書店さんのコメントがいくつかありましたが、読み終わって本当に圧倒されました。もうヒリヒリ感。親の都合で引越しして桐原と連絡がつかなくなる…辛い、その後由井は結婚をし、娘も誕生する、しかし、しかし、その時になって桐原の手紙を受け取る。どうしようもない、なんという運命、運命を呪いたいねえ、切ないよねえ。最後に有島武郎を持ってきて、うまいなあ。人世は淋しいって。ビリビリくる。由井の話ではないところでも、話を聞いてくれる男とか、随所随所に著者の主張、想いが散りばめられ、十代、二十代のいろんなことを思い出した私でありました。高山の話も良い。こちらも切ない。一筋の光の物語。

  • 最後にグッときて、桐原君の今が幸せだといいなぁと。
    10代の頃の恋が少し懐かしくなったなぁ。

  • (うまく言語化できないの前提で書く)
    一遍一遍、読後感がものすごい。作中ずーっと切ない、切ないでも言い表せない感覚、強いて言えばノスタルジー。郷愁。
    『穴底の部屋』は特に、なんてことないストーリーだけど本当に悲しかった、良かった。

    『もう戻らないもの≒失ったもの への後悔』という感情が描かれた作品にやっぱり自分は弱いな〜と再認識した。

    作中、特に共感した・響いたフレーズメモ
    『潮時』より加奈子
    絶望には二種類ある。何かをうしなう絶望と、何かを得られない絶望。(略)
    何かを得られない絶望の方が、断然マシだ。すでにあるものをうしなう痛みよりは。うしなうのは怖い。

    私は二十年後も、今と同じように諦めているのだろうか。
    うしなう絶望は怖いからと、自分では何も変えようとせず、日々に流されて。もしかすると、それがまたこの先の後悔に繋がるかもしれないのに。


    『穴底の部屋』より泉
    会話をしている。そう思って泣きそうになる。ばかにしないで知識を被せてこないでヤフートピックスの話題なんか持ち出さないでちゃんと最後まで聞いてくれる男。

    通じ合えないことは怖い。でも、通じ合うのはもっと怖い。





    欲しいものを手にできない絶望、手に入れたものをうしなう絶望、そしてそれぞれにまつわる後悔。どれからも逃れられないんだなあ、とか考えた。私はいま限りなく加奈子そのものだけど、どちらにせよ後悔を避けて通れないなら、由井さんのように気高く生きられたらいいなとは思った。
    でも、それぞれ何か思いあぐねながら生きる登場人物たち全員が愛おしい。どうしたって後悔がなくなることはないとしても、自分ではない誰かに想いをめぐらせる時間、人生の中で人と人とがほんの一瞬でも関わり、相手を慈しむとき、一瞬一瞬が尊く、美しい

  • 中学生のときに大切だった片思い。当時付き合い始めた二人も、いまは違う相手と結婚している。
    当時告白できなかった人もいる。人気者だった先輩は十五年以上経って、もっさりしたおじさんになっていた。
    貧乏だった学生時代を乗り越えた現在、立派な父親になった人がいる。
    人気者だった先輩は落ちぶれたように見えてもやはり魅力たっぷりのイケメンで、人妻を虜にしている。
    夜逃げをするほど金銭的に困っていた少女も、いまは中学生の娘を育てる母親になっている。娘が中学でいじめられ始めたことから、親子で電車の旅に出た。そこで再会したのは苦しいとき助けてくれた友人、そしてあの頃の恋人からの手紙。

    ---------------------------------------

    中学や高校のころの人間関係は、ほとんど学校や家の周りの人たちがすべてだった。そこでの関係がうまくいかなくなってしまえば地獄の底みたいな毎日を送ることになる。ナイスな恋人やイケてる友人に囲まれていればハッピーな青春を過ごせる。
    でも、状況は変わる。地獄だろうが天国だろうがいずれ終わりがくる。

    進学や就職、色んな人と出会って、多くの人と会わなくなる。学生の時に人気者だった人が大人になったら落ちぶれたり、真面目だった人がイメージそのままで堅実な家庭を築いたりする。

    「それが人生の面白さなんですよ」と悟ったようなことは言えないけど、「いまダメダメな状況にいたとしても、その状況が一生続くわけではない」とは言える。
    つまりは諸行無常なのだ。

    ---------------------------------------

    由井さんの結婚相手、雄一さんがとてもいい人だった。
    娘が学校でいじめられてることを聞き、「転校してもいい」「仕事を変えて引っ越してもいい」とすぐに言えるナイスな父親っぷり。家の外でつらいことがあっても、それを家に持ち込まないよう、気持ちを切り替えてから玄関のドアを開ける心構え。不安になるくらいに素晴らしい人だ。

  • 主人公の由井の圧倒的な気高さに
    心を鷲掴みにされてしまいました。
    人の品格を決めるのは、お金でも学歴でもない。
    真実を見極める眼と、本当に人を愛せる心を持った由井が
    幸せになれますようにと祈りながら読みました。
    大人になって幸せになっても、もし不幸せだったとしても
    それでも1ミリの後悔もないなんてことがあるはずもない。。。
    そう思えば、今現実に起きている困難にも
    勇気を出して立ち向かうことができるんじゃないだろうか。
    読み終わった後、もう会えなくなった人たちの幸せをそっと祈りたくなる物語でした。

  • 全5話の連作短編集。連作と言ってもほとんど関係ない様な話もあったけれど。
    1話目で綺麗な話だな〜と思って2話目を読むと何だかモヤモヤ。3話目も4話目も決してつまらなくはないのですが、多かれ少なかれモヤモヤが残る話でした。ですが、5話目を読み終わって…途中のモヤモヤが吹き飛ぶくらい良い終わり方でした!!ふわっと心が温かくなりました。

  • かなり好きだったなぁ。
    由井が羨ましい。桐原も他の男性たちもいい人なのは、女性作家特有な気がして、現実味がないことは分かっているけど、小説なんだし理想を書いて何が悪い!という気持ち。書いてくれてありがとう。
    不幸が由井を好ましく育てたということもあるだろう。悲しいことだけど、失礼だけどそれすらも羨ましく思える。私が今こうしているのは、周りの不幸とか幸福とか関係ないけど、責任転嫁してしまう。
    人との別れは唐突にやってくる。もし再会できることがあったならば、そのとき笑顔で「会いたかった」と言ってもらえるような人になりたい。

  • あーもう、なんだろう。最後の最後にうああもう!て叫びたくなってしまう。
    後悔がないはずがない。誰だって、大なり小なりなにかを過去に置いてきてしまうことがある。そのことを忘れられなかったり、ふとしたときに思い出してしまうことがある。でも今更どうしようもなくて自分に折り合いつけていかなくてはならない。もしくは、今この瞬間が、この先の未来での後悔になったり。
    それでも。
    忘れられないものがある。
    読者として忘れて欲しくないと思うものがある。
    後悔に触れた彼等のこの先が、どうか、せめて、今も幸せだよね、と笑える日々でありますように。

    最後が切なすぎて悶えた…。
    なんでどうして、と読んでる私にまで後悔を感じさせてくれた。

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著者プロフィール

1979年福岡県生まれ。東京都立大学卒。2016年「西国疾走少女」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞。2018年、受賞作を収録した『1ミリの後悔もない、はずがない』(新潮文庫)でデビュー。他の著書に『愛を知らない』『全部ゆるせたらいいのに』『9月9日9時9分』がある。

「2022年 『悪と無垢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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