フツーの子の思春期: 心理療法の現場から

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 158
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000246491

作品紹介・あらすじ

「証拠を見せて下さい」、選択肢が多いとしんどい、葛藤のない相談室登校、冬ソナ、スクールカースト、ジャニヲタ、「友だち解散式」…今どきの、ちょっと理解に苦しむ新しいスタンダード「フツーの子」の思春期の迷宮のありように迫る力作。

感想・レビュー・書評

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  • 「ふつうの子」と「フツーの子」

  • “いまどき”子どもの、思春期という名の迷宮を抜け出すための「心の葛藤」の実例集。スクールカウンセラーの立場から見た、子ども達のネットやアイドルの利用の仕方も紹介されている。

    2009年発行の本だが、今でも通用する内容だと、私は感じた。(むしろ事態は悪化すらしている、とも…)
    「フツー」の一言で、実は「困っていること」を「なかったこと」にする態度が、思春期に訪れる内面的な変化を、急激で制御不能にすらなりかねないものにしてしまっているようだ。そしてそれは、現代の大人の価値観を、忠実に映しているものでもあるのだ。

  • 最後の一章だけでも価値がある。

  • スクールカウンセラーである筆者が、生の現場から現在の思春期の子どもたちについて論じた本。
    実例が生々しいです。
    中間的なエレメントへの視点を失わないこと。

  • 今がどれほど難しい時代か。途中までこれは賞味期限のある本だなと思っていたが、とんでもない時代に向き合う難しさをこれでもかと説いた事例と解釈であった。

    また、あとがきにあった何でも「発達障害」の視点で見てしまうことの危うさ。分かりやすいだけに気をつけねば。

    ・「物語」の「もの」には、「霊」とか「魂」という意味がある。
    ・優れた聞き手の条件とは、曖昧なメッセージに堪える力が強いこと、そして自分自身の感情の動きについてモニターできる能力が高いこと。
    ・喪失感が、内面が形成され、未来の自分のために努力をすることができるようになるためには必要不可欠な感覚である。

  • 学ぶことはあったが印象に残ることはなし。

  •  従来大人が想定してきたような思春期に特徴的な悩みや葛藤を抱く「ふつうの子」が減少し、文脈のつながらない行動を平気で起こしたり、悩みや葛藤もないけど特にやる気も起きないし、悪いのは全部周囲のせいだと本気で思い、「フツー」や「別に」を連呼する「フツ-の子」が増えてきている。という昨今の傾向を示す、様々な実例が紹介され、著者自身がスクールカウンセラーとして果たせる役割とはどのようなものかを思索する、という本。
     おれ自身が思春期の子と関わる仕事をしているのに、この本を読むと怖い、と思ってしまい、自分自身の経験の乏しさを感じざるをえなかった。「傾聴」が大事、「共感」が大事、と言われて、それを実践しても通用しない子、というのはどうすればいいんだろうか。まず、子どものつたないコミュニケーション能力についての話で、「つたない表現を理解しようと時間をかけてつきあってくれる人が周囲にいるとき、子どものコミュニケーション能力は飛躍的に向上する」(p.40)という部分、これはまずは親が知るべきことだと思う。さらに、何も悩んでないような子とコミュニケーションを取るためには「表面的な会話のスキルが必要になってきている」(p.111)、つまり「向こうのコミュニケーションの回路の狭さを、こちらのスキルを上げることによって何とか押し広げていくしかない」(同)、という部分は、そう割り切るしかないんだろうなあ、と思う。なんか年配になってもアイドルグループとか流行りのゲームに興味を持っている「フリ」をしなきゃいけないなんて、痛々しい、と思ってしまうけど、仕方のないことなんだろうと思う。その代わりに、「同じ『担当』の子とは仲良くなれない」から相手の「担当」を巧妙に探ったりするといった、「変な」方向でのコミュニケーション力というのはつけてきているんだなと思う。この「担当」の話もそうだが、特に「女の子の思春期」というのは、完全におれの理解を超えていて、びっくりしかしない。あとは大人がどこまで手を出していいのか、という問題で、やっぱり子どもだけで乗り越える問題というのもある。「複雑に絡み合っているグループ内の人間関係に大人が不用意に関わると、かえってこじれてしまうのでかなりの慎重さも求められる」(pp.68-9)という部分は、共感できた。
     途中で冬ソナや『ヒカルの碁』など、ある特定の作品のあらすじが延々紹介されたりする部分がやや退屈だったが、『祈祷師の娘』という作品は面白そうだ。「理不尽な思いを自分で抱え、自分の分をわきまえていくというのも、大人になるための大切なプロセスなのである。このプロセスにきちんと向かいあっておかないと、いつまでも自分の運命を呪うことになり、心が自由になることがない」(p.149)というのは、その通りだと思う。『ヒカルの碁』では、「異界体験」がキーワードになっているが、「子どもから思春期へと向かうときに、体調の悪い時期がしばらく続くことはよくある。自分の中に漠然とした異能性や異質性を感じたとき、それは身体のバランスを崩すことに繋がることもあるのだ。不登校の生徒の体調不良の訴えも、単に学校に行きたくないから身体が反応しているという見方だけで理解しきれないときには、この異能性との出会いとの関係でとらえてみるという文脈も必要になって来るだろう。」」(p.159)という部分は、おれにはない視点だったので、覚えておこうと思った。
     子どもと関わる仕事をする人は読めば得るところはあると思う。そして親が読むと、わが子についてものすごい不安を抱く人もいそうな本。(15/09/27)

  • ちょうど、近所のママ友と
    こ~ゆ~、スクールカウンセラーみたいな人たちが教科書から学ぶ事、自分たちは実地でやってきたから強いよね…的な話をしてたとこだったので、特に後半興味深く読んだ。
    どうしても「知識」として専門の学歴を持った人を学校には置くことになるんだろうけど、それだけの勉強をするために、自分の思春期を満喫していない場合ってのがあって、それって厄介だよね…って。
    事例は生な感じで興味深かった。
    現れ方は、今までの思春期と確かに違って、専門家は「あれれ?」ってなるんだろうけど、とことん思春期を拗らせた経験があると、その根っこの部分の共通項にすっごく思い当たるんだよね。

  • 「ふつう」に考えると理解しにくい「フツー」の子が増えている。そのフツーの子とはどんな子なのかを、現場から実例と共に読み解く本。20代の私が読んでも理解できない言動が多く、著者の悪戦苦労ぶりが目に浮かんだが、自分の思春期体験を思い起こしながら読むとクラス内のカースト制度、アイドルやアニメへの傾倒など分かりやすい身近なケースもあり、興味深く読めた。~が悪いという投げ出しの結論ではなく、根気強く臨床を重ね思春期の揺れ動きを見守りあくまで中立の視点を一貫しているのに強い好感を思った。他の著書も読みたい。お勧め。

  • 事例がドラマティックで面白かった。

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著者プロフィール

島根大学人間科学部心理学コース教授

「2020年 『こころを晴らす55のヒント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩宮恵子の作品

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