- Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003103661
感想・レビュー・書評
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久々に、もしかしたら初めて夏目漱石の文章に接したとき以来の、文章の上手さを見せつけられたように思う。
これ程の作家を今まで知らずにきたことが悔やまれるほど。
作品の素晴らしさほどは、評価が高くないように思うのは私だけだろうか。
気品に溢れた、密度の濃い、圧倒的な文章力。その言葉で語られる内容は力強く、鋭く、優しい。
(2012.1) -
随分前に文庫で買っておいたままで、
読んだかどうかも覚えてなかったけども、
日本語の美しさと力強さに浸っていられた読書でした。
生活とは生きる事。
生と死のほんのわずかな隙間をくぐり抜けながらも寡黙に力強く生きていく人々、その悩みや葛藤、幸せ。
それは誰にでもとどまる事無く溢れ出て来るものなんだろう。
「これは私の想像だ」と書ききる部分は笑ってしまったけど。 -
5/16
ほぼエッセイ。 -
芸術か生活かというテーマは普遍的に語り継がれてきたであろうが、普遍的に語られるということはそれだけ人の心を捉える重要な問題ということであり、私も例外なくそのテーマに魅せられ、自分を重ねたがる人間の一人である。
テーマの魅力に対して、本書が魅力を減じている理由を考えれば、一つにテーマと直接の関連なく海を巡る描写に富んでしまっていることがあり、もう一つに小説の大部分が主人公足る小説家の妄想で成り立っているということが挙げられよう。
特に後者は、登場する小説家がどうしても作者本人を表していると読めるにも拘らず、作品が妄想の体を取っていることから、主人公の青年の芸術か生活かという苦悩は現実に存在しないのではないかと考えられ、そのことが私をがっかりさせる。
小説内の作者も実際の作者も本当に芸術と生活との間で悩んだことなどないのではあるまいか。そして何より、私の抱えている悩みとて、所詮甘ったれた若造のたわごとなのではあるまいか。 -
私たちはそのありがちな事柄の中からも人生の淋しさに深くぶつかってみることができる。小さいことが小さいことでない、大きいことが大きいことでない。それは心ひとつだ。
行け。勇んで。小さき者よ。前途は遠い、そして暗い。しかし恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
君がただ独りでしのばなければならない苦悶、それは君自身で苦しみ、君自身でいやさ案ければならぬ苦しみだ。 -
こんな素直できらきらした文章が書けたら!
祈りのような、賛歌のような。世界は明るい。 -
我が子を「不幸な者たち」としながらも、人を強く生かす言葉。
親の、子への教育。伝えられること。
○私は自分の弱さに力を感じ始めた。…言葉を換えていえば、私は鋭敏に自分の魯鈍を見ぬき、大胆に自分の小心を認め、労役して自分の無能力を体験した。私はこの力をもっておのれを鞭うち他を生きる事ができるように思う。(18頁)
○いずれの場合にしろ、お前たちの助けなければならないものは私ではない。(19頁)
○私の一生がいかに失敗であろうとも、…お前たちは私の足跡に不純な何ものをも見いだし得ないだけの事はする。きっとする。(20頁) -
妻を失った作者が、幼い自分の子供に対して自らの想いをつづった「小さき者へ」と、画家を志す青年が現実と絵への願望を天秤にかけて苦悩する姿を描いた1冊。
特に、小さき者へに感じたものが大きかった。自らがどれだけ気丈になれるのかどうか…。 -
難しかった。読み返したくなる。