- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005002764
感想・レビュー・書評
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今、とてもよく売れているように(本屋さんの面陳棚の減り具合からは)見える、岩波新書『世界史の考え方①』で、第1章「近世から近代への移行」の課題テキストとして挙げられていたので、読んでみた。
砂糖が、世界システムと呼ぶべき貿易や流通に乗ることで、いろいろな国のいろいろな階層の人が、生産、獲得競争、運搬、消費、営利などでそれぞれ関わっていたことをタペストリのように描写して全体像を表すことに努めたり、あるいは砂糖(または、茶やコーヒーのようなもの)が、世界の活動と歴史を回すダイナモとなっていたことを描出しようとする、そういうのも歴史の見方だ、ということのようだ。
世界システムによって世界商品というものが生み出され、人の欲望への希求と価値追及の衝動が、世界中で富めるものと搾取されるものを分け、局所的な繁栄と富の集中と引き換えに、その後背地の収奪と荒廃と人権蹂躙を招く・・というような刷り込みが顔をのぞかせているような気もする。この論は、現代に置き換えると、「情報」がグローバル、高速に世界を巡る「世界情報システム」によって富の集中を作り出し、一方で「監視情報社会」を生み出す・・・という論と共通している、と気づく。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
たびたびオススメ本で本書が挙がるので、気になって購入。
わかりやすい。子供にも大人にもいい入門書だと思った。
世界はつながっている、歴史は今に続いている、それを体感できる本だった。
仕事や学校など時間で区切られる社会に身を置きながら、わずかな余暇にこの本を読んで、お茶とチョコをつまみながら、テレビからは黒人差別デモのニュースが流れる。
これ、全部つながってるんだ、と気づいた瞬間、ゾワーと震えがくるような感覚だった。 -
砂糖という商品を誰がどこで生産し、誰がどのように消費したかを辿ると、違った角度から世界の歴史が見れて、とても面白かった。
甘い砂糖は、悲惨な(甘くない!)奴隷制度がなければ、大量に安価に生産されることはなかっただろう。そして、今でも砂糖プランテーションの植民地となった国々には、奴隷制度の深い爪痕が残されている。
砂糖が高価だった時は、薬品から始まり、砂糖とお茶がステイタスシンボルになってた時代があったのに、今は健康被害で少々悪者になってるとは、その当時からは想像できなかっただろう。
砂糖にまつわる文化的な歴史に触れてるのも、ちょっと息抜きになって良かったです。
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タイトル通り砂糖を軸に話を展開しているが、砂糖の背景にイギリスが深くかかわっているために途中からは「砂糖のイギリス史」とも言える内容となっていた。著者のことを調べてみたら専門がイギリス近世・近代史だというので納得である。イギリスの歴史や文化に興味があったため、私にとってはとても楽しめる本だった。
特に、イギリス国内で消費する砂糖(と茶)の価格をめぐって議会で対立する「西インド諸島派」と「マンチェスター派」の話は、人道的な観点からではなく経済的利益を追求するためにそれぞれが奴隷制を交互に批判した、というのが面白かった。物事には裏があるものだなと思った。
一方で奴隷制度そのものの話は決して気分の良いものではないが、中身を少しでも知ることができてよかったと思った。もちろん奴隷制度や南北問題があったことは知っていたが、その解像度を高めることができたと思う。第六章の扉絵である「せりで売られる黒人の赤ちゃん」の絵は非常に胸が痛み、暗鬱な気持ちになった。
本書を読んだことで、奴隷制について以前より深い感情と認識を持てるようになったと感じる。奴隷制が現代にいたるまで発展途上国に残した経済的な損失などについて見ていくマクロな視点も大切とは思うが、それだけでは思いやりを欠いてしまう危険がある。道徳を育むという点で、過去の悲劇的な出来事について具体的に知ることは意義があると思った。いずれより具体的な本(奴隷経験のある黒人の自伝など)を読みたいと思った。
国や時代でなく、「もの」を軸に世界史を読み解いていくこの本の形式はとても面白かった。本に登場した中で他に興味のあるものが出てきた(ジャガイモ、茶、あと物ではないが海賊)ので、また同じような本を探して読んでみたいと思った。 -
甘い砂糖の、
奴隷をめぐる甘くない歴史。 -
どこのレビューサイトだったか、「ジュニア新書と侮るべきではない」というのを見て手に取った。それにふさわしい良書である。
基本的な内容はタイトルのとおりだが、魅惑的な砂糖の陰には黒人奴隷の血と汗と涙があること、砂糖が大英帝国の富の源泉となり、産業革命もその賜物であって「けして英国人が勤勉で他国人は怠惰であったというわけではない」ことなどにきちんと言及しており、学習の端緒に立った中高時代にこのような知見に触れておく意義は小さくないと思われる。いい歳こいた私にも、およそ英国の富裕層は砂糖貿易の恩恵を受けるところ大であり、かのグラッドストン首相(や、おそらくはシャーロック・ホームズなど)もそうであったことや、長年積ん読している「アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語」の主人公についてなど、いくつもの新しい発見があった。
「あとがき」に明記されている著者の確かな信念もすばらしく、良い「掘り出し物」であった。
2018/10/26~10/27読了 -
砂糖も紅茶も以前は、ステイタスシンボルだったなんて驚きです。
それだけ価値があり、高価だったからというのが理由です。
しかし、その生産の末端に携わっていたのは、
多くの奴隷たちでした。
この生産(プランテーションの世界展開)と消費の構造が、
後に南北問題につながります(一つの要因として)。
世界商品の「砂糖」を通して知る残酷な歴史です。
こういった構造は、今も昔も変わっていません。
良い商品を、より安く買いたい、摂取したいというのは、
多くの人が求める欲求ですが、
その商品が、大衆化するまでには、
さまざまな葛藤と試行錯誤があります。
それを動かしているのは、果てしない欲望です。
その経緯は、時には強い者が弱い者を、
搾取と言った形で行われます。
21世紀になった今も、その構造は、変わっていません。
より生産技術と物流技術が高度になったので、
ますます、複雑化していることでしょう。
この著作では、「砂糖」にスポットライトをあてましたが、
「石油」と考えても、全く同じ論理が生まれます。
世界商品をめぐる争奪戦は、国同士の熾烈な争いと、
政治的な要素が複雑に絡み合った、人間の負の営みです。
その世界商品があったおかげで、豊かなになった国や人もいれば、
それが、きっかけで、貧困に陥った国、また不幸になった人もいます。
最悪の場合は、国家間の戦争に突入します。
この本は、自分達の身近にあるものが、
どういう経緯で、存在しているのかを知る恰好の本だと思います。
そして自分達の生活を振り返る上でも、非常に有益な本だと思います。 -
高校受験のときにこの本に出会っていれば…。
三角貿易、植民地、プランテーション、ティーパーティ事件、ヴードゥー教と、そういえば習ったバラバラの事象が砂糖の流れで見ると全部繋がってくるのね~。
白人であることの罪悪感(White Guilt)にも興味がわいた。 -
いまの貧富の差がどうして生まれたのか。
中村哲さんをはじめ、今までいろんなこういった世界を知る本を読んできて、もうわたしは嫌というほど知っている。
アジアやアフリカが発展途上国と呼ばれているのは、決して彼らが怠け者であったからじゃない。
彼らがいまもひどい状況に置かれているのは、イギリスやフランスという、いわゆる先進国と呼ばれる国々が彼らを奴隷として扱ったから。
売り飛ばされ、生まれ故郷から遠く離れた土地で、死ぬまで働かされ、ずっと同じものだけを作り続けなければいけないプランテーションで砂糖や綿花だけを作っていた。
わたしたちはこれをちゃんと知らないといけない。
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もう、つくづくヨーロッパで生み出されたものを使うことが嫌になった。
今まで何も知らずに、「イギリスの伝統的なブランドなんだ。いいかも!」と考え、買ってきてしまったわたしをひっぱたきたいよ。
他の犠牲の上に成り立った偽物の『豊かな社会』に貢献してしまうなんて最低だ。
他の不幸の上に本当の幸せなんてありはしないと思っているので、すべてを避けることは無理でも、ちゃんと考えて手に取ろうと強く思った。
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奴隷にプランテーション、植民地、人の売り買い。砂糖の歴史は醜さのオンパレード。
大量生産・大量消費を生み、いまに続く発展途上国を創った。
人間はおろか、動物たちまで奴隷にしたプランテーション。
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現在に至るまで、紅茶に砂糖を入れたことがないし飲んだこともないんだけど、今後もぜったいに入れて飲むことをしない(単純に甘いお茶っていうのが訳わかんなくて飲めないんだけど)。