消えてなくなっても (幽ブックス)

著者 :
  • KADOKAWA/メディアファクトリー
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本棚登録 : 540
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040663517

感想・レビュー・書評

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  • キヨシ(/ _ ; )

  • +++
    タウン誌の編集をする青年・あおのは、ストレス性の病を抱え、神話の伝説の残る緑深い山中にある鍼灸専門のキシダ治療院を取材で訪れる。どこへ行っても治らないという難病がそこでは治ると評判で、全国から患者が後を立たず訪問する治療院だった。先生に会ってみると明るくさばけており、先生の手伝いとして、同じ年頃の小説家志望のつきのという女性が居候していた。あおのは、自分の治療をかねて、三人暮らしをすることになる。規則正しい暮らし、治療の手伝い、つきのとくだけた本音の付き合いをすることで、あおのの病気は少しずつ回復に向かっていく。そしてついに、あおのは庭先で河童に遭遇する! それが意味するものは……。つきのもあおのも同じように、両親を幼いころ亡くしている。つきのは孤児院に、あおのは親戚に預けられていた。あおのの心を開いたものは何だったのか、二人を結びつけた運命とは……。ラストに用意された大どんでん返しは号泣を誘います。生を願い、死をも恐れない、愛されて人は生まれてきたのだということを思い出させてくれる、生への賛歌。、椰月美智子の最高傑作。本年度、泣ける小説ナンバー1確実。
    +++

    著者には珍しく、よしもとばななさん的な雰囲気の漂う物語である。精神世界とか、この世ならぬ者との触れ合いなどによって、傷ついた心が少しずつ修復されていく過程は、読んでいる自分も解き放たれていくような解放感と安心感に包まれて――主人公のあおのやつきのの心のなかは不安定であるにもかかわらず――心地好い。これですべてがうまくいく方へ進んでいくのだと思いかけたラスト近くに仕掛けられたどんでん返しは、驚くばかりで、思わず涙を誘われるが、だからこそのこの物語なのだと、次第に納得させられた。心が浄化されるような一冊である。

  • 魔法のように人々の調子が悪いところをなおすせつこ先生。

    山の中にあるその場所では、小さな奇跡がおこるそうな。。

  • タイトルを見て、切ない系のラスト?と思ったものの。読み進めていくと、日常+ちょっと不思議系の主人公成長ものの雰囲気……。ときおり涙ぐみつつ、そして衝撃のラストのどんでんがえし!!
    そ、そうくるかぁー!! そうとなれば思い当たる節がある言い回しの数々。唸りました。ハッピーエンドですが、切ないです。

  • こういった話も書くんだー。大人のメルヘン、といった感じ。
    メルヘンに浸るには大人になり過ぎたのかもしれない。イマイチ乗り切れなかった

  • 途中で結末が読めてしまった。
    自分が治らない持病を持ってるせいか、この治療師の元に行ってみたいとか、一緒に暮らしてみたいとか、そんなことを思いながら読んでしまいました。

  • 【最終レビュー】

    おはようございます。

    朝からこうして更新するのも、この物語を読んだ流れのまま、何故か自然なのかもしれません…

    雑誌『ダ・ヴィンチ』最新号、著書紹介掲載より

    「二冊目」

    新刊・予約著書。図書館貸出。

    椰月美智子さん・初めて読みました。

    本当に本当、想像以上でした。昨夜、読み終わった余韻に何故か、覚めやらずに、浸ったままに。今、こうして書いています。

    最近読んだきた中で、特に、

    『「物語の引力」そのもの』

    にグイグイと、不思議ながらの内容から伝わってくる空間ながらも、展開を追うごとに、気分はどんどん清々しく、ソフトになり。

    内容に全て身を委ね、ゆっくり、ストローで、水を吸い込んでいくかのような…

    読んでいた「3日間」そんな心地でした。

    わけありだった、あおのとつきの。

    出会うまで、お互いに全く知らなかった「2人の関係」

    「治療院=節子さん(私より年上)」が舞台を整えることで、2人はたまたま偶然にも出会い、自然に包まれた環境下、それぞれが「心の病」を溶かしていきながら、お互い少しずつ時間をかけ、再生し、待ち構えていた運命に、2人はどう向き合うか。

    ヒントは、ある絵本の内容の中に…

    これ以上は、ネタバレになるので書けません。

    過程の流れの中で、内容は、至ってシンプルながらも、心理描写を上手く丁寧に。

    「深く染み込んでいく味わい」そのものを

    を噛みしめながら感じ取り。

    植物の名前、雑草の名前、それらから伝わってきた

    『自然の力・めぐみ』と共に…

    こんな気分の中で著書を読んだのは珍しいながらも、自身は、また一つ、新しい発見があったことを。

    いつもなら、至って普通に淡々と読んでいますが、はるか、それ以上でした。

    主人公の2人以外の、来院した様々な患者達。

    今の社会の中で、実際、目には見えなくても、身近な出来事の中から、誰にでもありうることで、その点、世代を問わず、先入観を持たず入っていけました。

    これ以上は、自身、言葉にするのは、もったいないぐらいに。

    後は、本当、想像にお任せするのみです。

    著名人の方達からの評価が何故、高かったのか。今、こうして読み終わってみて、自分の中で、なるほどなと、理解できました。

    ネタバレにならない程度に、印象に残った内容を拾いながら終わりとします。

    『治療院・節子さんの家。「パソコンなし」テレビはあるけど、ほとんどつけない』

    『誰にでも「くだけた物の言い方」をするけど[決して、不快ではない]言われた当人にとっては[嬉しいし、安心するし、心強い]』(節子さんの姿を通じて。あおの)

    『「いろんな因果」からはじまり、この「糸」をさらに、(患者・9歳の男の子の)「母親、まわりの大人達」が[複雑にからませ、たくさんのものを、小さな身体で全部、引き受けていた]』(節子さん)

    『「雑草」って「すごい生命力」』(つきの)

    『庭木。「よく、見てあげることが、大事」―見て、ほめて、背中を押してやる。そうすれば、ちゃんと育つもんだよ』(節子さん)

    『〈本来の「自分」〉っていうのは〈なんだろうな〉と、ふと思う』(あおの)

    『ふと、空を見上げたら、満点の星。[自分って、ちっちぇなぁ]って、思っちゃってさ…』(つきの)

    『「認める」のと「認めない」〈世界の見え方〉、まるで〈違うはず〉だ』(あおの)

    『[気]をやると、「自分」が「浄化されるような気がする」のです』(患者の1人、孝美さん)

    『[オヒシバ]の説明文。「茎・葉」が「丈夫」「ふみつけに強い」―ふまれると、根ぎわの節からたおれ、すぐに起き上がる―〈この、生命力、順応性〉』(あおの)

    『〈素直な心〉にならなければ、解決できない。あせるだけではダメ。〈平らな、まっさらな心〉じゃないと[いろんなものが見えてこない。吸収できない]』(節子さん)

    『自然の恵み、季節の移ろい、空の色、太陽の光、月の満ちかけ』(節子さん)

    『「小さな、植物」にも「ちゃんと、名前があって、仕事がある」―この世に存在する、全てのものには〈必ず、意味がある〉』

    『日々は、滞りなく、過ぎていく…(略)〈当たり前の生活〉にある〈幸せ〉』

    『運命とともに「どう、生きるか」だ』(あおの)


















     


     

     
















































     



























     

  • 清々しい気持ちと温かさが残った。
    自然に溶け込んで生きると色々な世界が見えてくるのかもしれない。
    現実にはないけれど、ひょっとしたらと思わせる何かを自然に受け入れられた。
    彷徨っていた二人の行く末にも安堵。
    読み終わってタイトルの意味を感じる。

  • 神話が多数残り神社があちこちにある山間の町で暮らすあおのは、心を患ってしまい、ちょっとしたクチコミから出会った<気>を操る力のある「女先生」のもとで居候をはじめる。
    そこには先に居候をはじめた強気なのに怖がりな女性、つきのがいて、最初は反発をしていたあおのはいつのまにかつきのを家族のように思い始める。
    河童、カラス天狗などこの世でないものが登場し、スピリチュアルな雰囲気のある不思議な作風の一冊だった。
    あおのが癒され、強くなっていく過程を気を抜いて心地よく読んでいたのでラストの唐突な展開には驚いた。えー、そうか、こういうことなのか。
    それにしてもキヨシがいいなぁ。キヨシとあおののファーストコンタクトが愉快だった。

  • さ、先が読め過ぎ…。
    好きな作家さんだけに残念。

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著者プロフィール

1970年神奈川県生まれ。2002年、第42回講談社児童文学新人賞を受賞した『十二歳』でデビュー。07年『しずかな日々』で第45回野間児童文芸賞、08年第23回坪田譲治文学賞、17年『明日の食卓』で第3回神奈川県本大賞、20年『昔はおれと同い年だった田中さんとの友情』で第69回小学館児童出版文化賞を受賞。『明日の食卓』は21年映画化。その他の著書に『消えてなくなっても』『純喫茶パオーン』『ぼくたちの答え』『さしすせその女たち』などがある。

「2021年 『つながりの蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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