続氷点(下) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003855

感想・レビュー・書評

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  •  ゆるぎない信念がつらぬいているから、懸賞小説で通俗性が濃くても、何版も重ねるほどのベストセラーであり続けるのだろう。

     物語の筋を面白いと思い、展開を追うも良し、奥に秘められているものを知るのも良しであった。

     ヒロイン陽子をめぐる物語はわが子を殺した犯人の娘を養子に迎える異常性、継子いじめ、数奇な運命、波乱万丈、急展開があって厭きさせない。何もこんなにこねくり返さなくてもと思いながらも引きずられて読む。

     そのわけは単に変化に富むあらすじのみの興味ではなく、キリスト教の教示する「原罪」の意味をやさしくわかり易く表しているから、おおよその理解ができるということである。

     欧米の書物は古今キリスト教に裏打ちされている、いまいち理解に苦しむわたしはこのようにわかり易くしてもらうと有難い。

     その証拠に流行っている『カラマーゾフの兄弟』の新訳を読み始めたが、前よりよく理解出来るようでちょっと感激してしまった。3年前に(旧来の訳)読んだ時はミステリ風の殺人事件に興味がいって、宗教的部分は飛ばして読んでたのではないかと思える。

     また、作家三浦綾子は『カラマーゾフの兄弟』を意識して『氷点』を構想したのではないかとひらめいてしまった。もちろん大古典名作の『カラマーゾフの兄弟』はその後の文学に影響を与えたのは当然、他にもたくさん触発された作品があるのだろう。

     『氷点』を読むなら、正続あわせてがよいと思う。

     ところで、100年間のベストセラーをおもしろく切りまくっている岡野宏文・豊崎由美の共著『百年の誤読』には『氷点』がぼろっかすにやっつけてあって、「何も今読まなくていい」とまで言い切っているのを思い出した。

     でも、わたしの経験では『光あるうちに』三部作→『氷点』正続→『カラマーゾフの兄弟』はキリスト教の一端がわかるお薦めのコース。もちろんわかりたい人にだけど。

  • 2014.10.11

    続氷点上巻から続く、辻石家と三井家の複雑な人間関係。そして陽子と順子、徹、北原の関係にもドキドキハラハラとしながら読み進めました。
    順子の衝撃的な手紙での告白、そして見本林での夏枝の言動、北原の事故…全ての出来事が当人たちに動いて欲しくない方に動いてゆきます。でもそれが人生の辛さであり、また生きる希望にもなり得るのだと思います。
    人間とは何か、罪と赦しとは…。
    とても重く壮大なストーリーで、最後は希望を感じられる終わり方でした。陽子、徹、北原、順子には幸せになれるはずです。
    読後には不思議と爽快な気持ちと、なんとはなしにもやもやとした思いが残りました。でもそれはこの本に対しての思いではなく、自分に対しての思いです。

    久々に心が揺さぶられる小説を読みました。とにかくこの本に出会えたことに感謝。こういう出会いがあるから読書はやめられないですね。
    何年か後に読み返したとしたら、その時自分はどんな感想を持つか楽しみです。

  • 前半の上下巻が良かっただけにモヤモヤ。最後のシーンが観念的すぎて、急に置いてけぼり感があって消化不良。なぜ陽子はあの光景を見て恵子に電話をかけようと思ったのか?キリスト教の考え方を勉強すれば分かる?
    ただ娯楽として読みたいなら、続編は読まなくてもいいかもしれない。続編はあまりにも人間関係がぐちゃぐちゃしすぎている。順子の描写もあれだけ?個人的には不完全燃焼だった。

  • 愛、そして赦すこととは?ということがテーマだったけど、わたしにとっても、難しいテーマです。陽子さんて、可哀想な運命の人だなと思いました。

  • これ続編なの最後の解説読んで知った

  • ネタバレ/下有劇情

    「相手より自分が正しいとする時、果たして人間はあたたかな思いやりと持てるものだろうか。自分を正しいと思うことによって、いつしか人を見下げる冷たさが、心の中に育ってきたのではないか。」

    跟第一部的主題「原罪」相較,這部的主題是「原諒」。陽子從第一部的「始終相信自己是正確/無罪」到背負原罪的意識,得知自己是不義之子,然而對她來說更難跨過的是無法原諒自己的母親。徹忍不住與三井惠子相見後,惠子的次男達哉始終感到可疑,而與陽子偶然同一年進入北大,就開始試圖探出兩人無比相像的秘密。在此時,陽子的心意,從北原又開始傾向徹,只是自己依然困在對母親的無法諒解之中,還走不出來。達哉開始糾纏陽子,而且無敵白目(是一個超煩的角色)完全不顧別人的狀況,在北原與陽子見面途中應把陽子直接載走要去與母親對質,結果途中導致北原的腿被達哉給輾斷,惠子也只好向家人道出事實原委。然而惠子丈夫三井彌吉回想起自己在北支戰地被命令殺害孕婦的罪刑,反而感謝自己妻子願意生下一個生命(至於達哉震驚之後怎麼了就沒交代太多,但我也不是很想再看到這個角色)。陽子在啓造的啟發下知道了愛不只是感情,而也是一種意志,而人的生命如祖父所說重點不是得到什麼,而是能給予什麼,於是決定要今後陪在北原身邊。而她自己一個人去北邊看北原曾經看過的流冰的大自然異象,感受到那不可知力量的偉大。她想起原諒自己父親的佐石女兒的順子,她與啓造都在想望一個能夠有絕對權威的什麼來原諒她們的罪,她知道人的原諒是多麼地淺薄與不完全,但也始終尋尋覓覓不知道是什麼能讓她們能夠得到真正的心安與寧靜。而在這一刻她終於她終於懂了。人的傲慢讓自己總是覺得比對方正確,高貴,然而這正是人的原罪,沒有人可以是向別人丟石頭的存在,在認為高人一等地正確的那一刻,已經失去柔軟與原諒的心,沒有人可以裁判別人。陽子與生母的見面場面無比地冷淡與逃避,然而在卷末感受到神的力量與大愛之後,她也終於能放下與原諒。

    --
    這兩部作品原罪與原諒,陪伴我的西國三十三所巡禮。曾經因為內容高潮迭起的緊張而坐過站,也在疲倦緊張的轉車搭車過程中讓我瞬間可以跳脫現實進入另一個宗教的世界。書中的人撞牆期非常地長,然而她們的掙扎與探索,也是我們的問題,也可能是我們的解方。面對自己的惡,感謝一切的包容,擁有愛的意志,不輕易對他人丟石頭,不同宗教也可以有同樣的答案與修練,就算不是基督徒,也在這部作品找到共感。作者巧妙的心理描寫,以及書中思索性的對話,以及高潮迭起的安排,是部絕無冷場、閱讀過程順暢,且令人能夠不斷思索的具有後座力的作品,非常出色。渺小的人礙於原罪無法輕易地原諒,但有絕對的神可以倚靠,佛教徒雖然不是這種強力神明的屬性,但是大愛與慈悲是共通的感受。這個世界上應該要有更多像這樣令人沉吟思索的作品才是,同樣都是在電車上,比起船過水無痕令人空虛的作品,這類的作品才是生命的養分無疑。

  • ドラマのような偶然が多くないか?と思わずにはいられない。高木繋がりだとしても、なんとなく無理やり感も否めない・・。でも仕方ない、佐石の娘の行方だって気になってたし、恵子やその家族のことも気になってたし、読者はスッキリしたいからそれに応えてくれたのだと思う。そこは置いておいて・・、

    原罪がテーマになっている氷点。
    作品の中にはいくつもの罪が沢山出てきた。人間は生きていく上で色んな罪を犯す。
    罪を犯した人に対して人間は、どう対応し赦し赦さないのか問う内容だった。
    罪のレベルにもよるが、小さい罪や大きい罪を犯しても相手に赦しを請うのはおこがましい気がしてならないと思った。謝罪は必然だと思うが、そんなことしても相手はスッキリしない。
    なのにそこで赦すという課題を押し付けることになると、相手はたまったもんじゃないと思う。啓造や陽子は赦しに対して悩んでいたが、そこはもうグレーでいいんじゃないかと読んでいて思った。赦すというのは相当ハードル高いし、キリストや仏レベルじゃないと乗り越えれない気がする。

    自分の子供を殺した犯人の子供を育てるという、ありえない設定で当時は批判もあったそうだが、このありえない設定だからこそ氷点は面白く読めるし、罪と赦しという重いテーマを改めて考えさせられるのだと思う。4冊という長編だったが、とても充実した時間を過ごせた。

  • テーマが原罪 らしいが、許す という点に重きを置くと、夏枝の言動も達哉も許せるのか?と考えさせられる話だった。
    全体(続 じゃないほうの氷点も含め)を通して 陽子の人柄は恵子の娘だなと思うし、きっと北原と陽子はこれから何があっても明るく前向きに生きていくのだろうと思う。
    三浦先生がもうお亡くなりになっているので、続の続はないが、思いを馳せてしまう。

  • 全員が自分に対し、何らかの罪を持っている、もしくは罪の意識にかられている。
    湊かなえさんのNのためにみたいな後味だった。何気ない一文でさえ、情景でさえ、全てに意味がある展開であると思います。

  • 氷点苦手な人ランキングを作れと言われたら、達哉が一位になるかも...と感じながら、どんどん読み進めました。
    一番印象に残っているのが三井弥吉の手紙のシーン。うまく言えませんが、氷点シリーズの中でもここは読んでいて違う感情の動きになりました。私にとっての燃える流氷、赦しに触れる何かだったのかなと思います。
    本当に面白かった。読んでいて全く楽しくないのに読んでよかったと思える本です。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦綾子の作品

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