- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041003855
感想・レビュー・書評
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ゆるぎない信念がつらぬいているから、懸賞小説で通俗性が濃くても、何版も重ねるほどのベストセラーであり続けるのだろう。
物語の筋を面白いと思い、展開を追うも良し、奥に秘められているものを知るのも良しであった。
ヒロイン陽子をめぐる物語はわが子を殺した犯人の娘を養子に迎える異常性、継子いじめ、数奇な運命、波乱万丈、急展開があって厭きさせない。何もこんなにこねくり返さなくてもと思いながらも引きずられて読む。
そのわけは単に変化に富むあらすじのみの興味ではなく、キリスト教の教示する「原罪」の意味をやさしくわかり易く表しているから、おおよその理解ができるということである。
欧米の書物は古今キリスト教に裏打ちされている、いまいち理解に苦しむわたしはこのようにわかり易くしてもらうと有難い。
その証拠に流行っている『カラマーゾフの兄弟』の新訳を読み始めたが、前よりよく理解出来るようでちょっと感激してしまった。3年前に(旧来の訳)読んだ時はミステリ風の殺人事件に興味がいって、宗教的部分は飛ばして読んでたのではないかと思える。
また、作家三浦綾子は『カラマーゾフの兄弟』を意識して『氷点』を構想したのではないかとひらめいてしまった。もちろん大古典名作の『カラマーゾフの兄弟』はその後の文学に影響を与えたのは当然、他にもたくさん触発された作品があるのだろう。
『氷点』を読むなら、正続あわせてがよいと思う。
ところで、100年間のベストセラーをおもしろく切りまくっている岡野宏文・豊崎由美の共著『百年の誤読』には『氷点』がぼろっかすにやっつけてあって、「何も今読まなくていい」とまで言い切っているのを思い出した。
でも、わたしの経験では『光あるうちに』三部作→『氷点』正続→『カラマーゾフの兄弟』はキリスト教の一端がわかるお薦めのコース。もちろんわかりたい人にだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2014.10.11
続氷点上巻から続く、辻石家と三井家の複雑な人間関係。そして陽子と順子、徹、北原の関係にもドキドキハラハラとしながら読み進めました。
順子の衝撃的な手紙での告白、そして見本林での夏枝の言動、北原の事故…全ての出来事が当人たちに動いて欲しくない方に動いてゆきます。でもそれが人生の辛さであり、また生きる希望にもなり得るのだと思います。
人間とは何か、罪と赦しとは…。
とても重く壮大なストーリーで、最後は希望を感じられる終わり方でした。陽子、徹、北原、順子には幸せになれるはずです。
読後には不思議と爽快な気持ちと、なんとはなしにもやもやとした思いが残りました。でもそれはこの本に対しての思いではなく、自分に対しての思いです。
久々に心が揺さぶられる小説を読みました。とにかくこの本に出会えたことに感謝。こういう出会いがあるから読書はやめられないですね。
何年か後に読み返したとしたら、その時自分はどんな感想を持つか楽しみです。 -
前半の上下巻が良かっただけにモヤモヤ。最後のシーンが観念的すぎて、急に置いてけぼり感があって消化不良。なぜ陽子はあの光景を見て恵子に電話をかけようと思ったのか?キリスト教の考え方を勉強すれば分かる?
ただ娯楽として読みたいなら、続編は読まなくてもいいかもしれない。続編はあまりにも人間関係がぐちゃぐちゃしすぎている。順子の描写もあれだけ?個人的には不完全燃焼だった。 -
これ続編なの最後の解説読んで知った
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ドラマのような偶然が多くないか?と思わずにはいられない。高木繋がりだとしても、なんとなく無理やり感も否めない・・。でも仕方ない、佐石の娘の行方だって気になってたし、恵子やその家族のことも気になってたし、読者はスッキリしたいからそれに応えてくれたのだと思う。そこは置いておいて・・、
原罪がテーマになっている氷点。
作品の中にはいくつもの罪が沢山出てきた。人間は生きていく上で色んな罪を犯す。
罪を犯した人に対して人間は、どう対応し赦し赦さないのか問う内容だった。
罪のレベルにもよるが、小さい罪や大きい罪を犯しても相手に赦しを請うのはおこがましい気がしてならないと思った。謝罪は必然だと思うが、そんなことしても相手はスッキリしない。
なのにそこで赦すという課題を押し付けることになると、相手はたまったもんじゃないと思う。啓造や陽子は赦しに対して悩んでいたが、そこはもうグレーでいいんじゃないかと読んでいて思った。赦すというのは相当ハードル高いし、キリストや仏レベルじゃないと乗り越えれない気がする。
自分の子供を殺した犯人の子供を育てるという、ありえない設定で当時は批判もあったそうだが、このありえない設定だからこそ氷点は面白く読めるし、罪と赦しという重いテーマを改めて考えさせられるのだと思う。4冊という長編だったが、とても充実した時間を過ごせた。 -
全員が自分に対し、何らかの罪を持っている、もしくは罪の意識にかられている。
湊かなえさんのNのためにみたいな後味だった。何気ない一文でさえ、情景でさえ、全てに意味がある展開であると思います。 -
氷点苦手な人ランキングを作れと言われたら、達哉が一位になるかも...と感じながら、どんどん読み進めました。
一番印象に残っているのが三井弥吉の手紙のシーン。うまく言えませんが、氷点シリーズの中でもここは読んでいて違う感情の動きになりました。私にとっての燃える流氷、赦しに触れる何かだったのかなと思います。
本当に面白かった。読んでいて全く楽しくないのに読んでよかったと思える本です。