続氷点(下) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003855

感想・レビュー・書評

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  • かなりヤバイ性格の陽子ちゃんの実弟が他人の人生をダメにするまでに至り、陽子ちゃんが流氷を観ながら「原罪」や「許し」を「絶対的な存在」である「神」に啓示されるまでのお話。

    最後は前面にキリスト教が押し出され、その点に関しては陽子ちゃんがそれで良いのならどうぞ…という感じ。
    何に救いを見出すかは人それぞれなので…。
    ただ、絶対的な「神」を信じること(「神」の存在を受け入れること)でこれまでの数々の苦悩が救われるというのは、ちょっと良い子ちゃん過ぎるお話かな。

    人の心の安寧というのは、何かしら既に出来上がっているものに寄ったほうが楽であることは事実だと思う。
    自由のなかで自己選択と自己責任の繰り返しで生きるよりかは指針があったほうが楽だからね。

    キリスト教信者の著者が絶対的信仰に基づいて描いた人間模様と考えれば破綻もなく、飽きずに最後まで読める作品でした。
    ただ、良くも悪くも人間の本質を考えるにあたっては「続」ではなく『氷点』のほうが良かったです。

  • 昼ドラやねえ……原罪がテーマ、なるほどと思った。愛は感情ではなく意志である、というのが一番響いた。

  • 大学生となった陽子は、ある日次男の達哉と出会う。
    達哉は異父姉と知らず陽子に近づいてくる。
    陽子を中心とした複雑な人間関係が徐々に明白になっていくという完結編。

    続・氷点(上)の後半から積極的に陽子に会いに来る実弟の達哉。
    今まで以上に自分の身の周りで気になることがあり、
    それによって陽子に執拗に会いに来て母に会って欲しいと言う。
    これだけでも今まで冷静にしていた陽子であっても
    徐々に心の動揺を隠すのが難しくなり、実母に対しての思いも揺らいでいるなというのが伺われました。

    その間には必ず厄介者の村井の存在もあって、
    今回も余計な一言が多くあって、これだけ邪魔になる存在というのもなかなか強烈だなと思いました。

    北原の件が無かったならば、
    徹と幸せな人生を歩いても良いかと思いました。
    けれど陽子の立場となってしまったならば、北原を選ぶかもしれないです。
    どちらと一緒になったら幸せになるのだろうかというのは分からないですが、この作品のテーマであるキリスト教の許しを考えるとこうなるべきなのかと納得させられたように思いました。

    陽子が実母に対する憎しみしか涌かないという気持ちも分かりますが、
    それよりも実母の夫である三井弥吉の戦場で行われた出来事が印象深かったです。
    文中にもあったように
    戦争の恐ろしさは、食糧が乏しくなること、空襲で家が焼け、
    女子供や老人さえも焼き殺されること、ただそれだけではありません。
    それよりも何よりも恐ろしいのは、人間が人間でなくなることということでした。
    だからといってこの作品のような事柄が許されるとは思えないし、
    誰が悪いのかというのも責められず、なかなか難しい問題だと思いました。
    最終的にはキリストに倣って許しを得ることとなる陽子ですが、
    その他の家族たちはどうやって許しを得ているのかなと考えてしまいました。

    一生を終えてのちに残るのは、
    われわれが集めたものではなくて、
    われわれが与えたものである。
    この言葉にこそ真の人間の生き方が示されているような気がする。
    という言葉も印象的なので覚えておくと共に、
    集めるだけでなく、与えられる人になるように
    これからは努めていかなければいけないとも思いました。

    登場人物のそれぞれの生き方を見ながら、
    嫉妬、憎しみ、妬み、愛、赦しなどを様々な視点から
    知ることとなり今後の人生への学びとなる作品でした。
    時代が違っていても壮大なスケール感でリアリティーのある
    人間模様が描かれていて読み応えのある作品でした。
    まだ読んでいない三浦さんの作品もこれからも読み続けたいと思いました。

  • 陽子のその後の話
    小説の名を借りたキリスト教入門書ともとれる
    等身大の陽子の疑問や葛藤は私たちの普遍的な問題とも共通しているから、読んでいて飽きない
    ただ終わり方については納得いかない部分はある
    それはたぶん私の宗教観も関わってると思う
    色んな人の感想が聞いてみたくなる作品

  • 上下、続上下と夢中になって読了。
    読む前は4巻は長い道のり、と思ったが内容が気になりすぎてネットフリックスのドラマを次々観るかのようにページを捲る手が止まらない。



    登場人物のほぼ全員が多かれ少なかれ、心の中で罪を犯したり、実際に罪を犯したりしている中で、それぞれがその罪の数々に対してどのように向き合っているのかが印象的だった。

    陽子が出した答えは陽子に対しての解であり、実際他の人々には適用されないであろう部分は現実的であった。

    人を裁く立場にいる人は、自分が正しいと思いこんでいる人。これは真であるとは思うが、要するに自分がどれだけ相手を敬い、自分を謙ることができるかという部分に帰結すると思う。

    本の主旨とは変わるが、人を責め続けることは何事も生み出さず、自分自身を苦しめ、大事な人をも苦しめる結果になり得ないと感じた。

    自分の罪をも認め、相手を赦し、生きることこそが自分の力で「幸せ」を掴むことに繋がると思う。

    「罪」と一言に言っても、下か何処かで記されていたキリスト教の話の通り、大小様々、そして自分が認識していないものまで無数にあり、罪を犯さずに生きていくことは不可能に思える。

    そんな中で如何に自分の罪を認め、相手の罪を赦して、そして人々に何を与えるか。

    人生の中で赦したくない人は思い返せばたくさんいるが、私も気を改め、自分の今までの罪を認めて、赦すことを覚える人間になりたいと思わせてくれる一冊(四冊)だった。


    夏枝の行先が気になるので、星4つとした。(夏枝、上下で憎くて仕方なかったが、続編になると割と大人しく、可愛らしく可哀想な部分も多かった。特に桜の部分。辻口夫婦は一からやり直して欲しい。やり直せるポテンシャルのある2人だと思う。
    総じて一番受け付けないのは、村井と達哉。
    辰子さんは唯々善人。)

  • 氷点がとてもよくて、続・氷点(上)もハラハラしながら読み続け、楽しみだった最終巻の「続・氷点(下)」でずっこけ。辰子の人格が大好きだったので、滅多に登場しなくなってつまらなくなった。南京大虐殺が真実だったかの様な嘘が書かれた箇所で一挙に覚めた。日本軍はそんな野蛮な事はしておりません。最後まで陽子に振り回されて、ハッピーエンドを期待してたのに、納得いかない締めくくりだった。最後の章はキリスト教信仰バイブルですな。

  • 罪、赦し、救い、希望
    自分を正しいとする時、いつしか人を見下げている

  • 『氷点』に続いて『続 氷点』まで読んでみた。『氷点』は正直なところこれでもかこれでもかとエンタメ要素的なものがてんこ盛りで読む前に想像していたのとは違ったんだけど、この続編のほうはわりと納得して読了。しかし相変わらず、男たちの描き方に比べ、陽子と順子(と辰子さん)以外の女性の描かれ方がひどいなあ。
    時代の空気感もあるだろうけど陽子が聖すぎて、これでは生きていくのが大変じゃなかろうかと思ってしまう。いやいや、そうした自分に科されたものを引き受けていく覚悟があることが大切ということなのかもしれない。

  • 達哉が自分勝手過ぎてイライラしてしまった笑
    達哉にもまた原罪が生まれたのであろうと思います。
    さて、上記の点は抜きにして続編もみるみるうちに氷点の世界に引き込まれた。
    本当の陽子の人生はここから始まるのだと思います。
    結局、どういう道を選ぶのかは読者の想像にお任せということでしょうか。
    全ての罪が晴れるわけではありませんが彼女の本当の人生を歩んでいってほしいと願うばかりです。

  • 陽子は北原と結婚するのだろう。
    本当は兄、徹との未来を一度は胸に決めたはず
    であろうに。

    達哉の起こした事故で、陽子と達哉を追ってきた
    北原は片脚を切断することとなる。
    こんな悲しい出来事があるのかとショックだった。

    追跡の章を読む前までは、
    陽子は徹とスキー旅行に行き、
    プロポーズをされ、ハッピーエンドで終わるのだろうと予測していた。
    ある意味、それでこそ啓造と夏枝の罪も
    報われるのではとさえ思っていた。

    三浦綾子、すごいな。と茫然とした。
    また新たな大きな罪がここに描かれていた。
    氷点のテーマは永遠に続くのか…と。
    時代の古さも感じさせず、人間にとって
    普遍のテーマである罪と赦しを根底に
    こんなにも深く、考えさせてくれる小説とは
    なんてすごいのだろう。天才だなと。
    現代のおしゃれで全部を言わずとも
    表面的には納得するような小説のとは違って、
    ガッツリとテーマを埋め込んである。
    重くて暗くて切なくて、
    今の時代では売れない部類に入っちゃうのかも
    しれないけど、大事なことを教えてくれる、
    大事なことをそれぞれの読者に考えようとさせてくれるすごい小説のだと思う。

    だからこそ40年近く前の小説でも
    ちゃんと私たちに響くんだろうなあ。
    別の作品も読んでみよう。

    続編の後編も読んだけど、
    村井ばかりは嫌い笑、医者としての腕は良いんだろうけどね、でもこんな人もきっといるんだろうな。
    というリアル感もあり。
    もし、今、リアルキャストでやるなら誰だろう??と考えました。
    本当に嫌な男に見える、イケメン俳優…意外に難しい…

    私のなかで響いた言葉…

    愛とは感情ではなく、意志である。

    相手より自分が正しいとする時、果たして人間はあたたかな思いやりを持てるものだろうか。自分を正しいと思うことによって、いつしか人を見下げる冷たさが、心の中に育ってきたのではないか。

    罪は、たとえ人間の命をもってしても。根本的につぐない得ないものだからでもあろうか。確かに罪とは、ゆるされる以外にどうしようもないものなのかもしれない。

    一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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