- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041015544
感想・レビュー・書評
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日頃ハードワークをこなしながら、時折山に登り癒される女性編集者の登山日記です。でも書いているのはおっさんの北村薫先生。でも本当にこの女性が存在するんじゃないかと思う位に日記です。もしかして先生心に女性を飼っていらっしゃるのではないでしょうか。
特別な事件(登山中のピンチは有るけど)も無く、淡々と日常と登山描写の繰り返し。でもこれがとても癒されるんですね。とても好きな本になりました。やはり北村先生は優しい文章をお書きになります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
空から降ってくるのは素朴なのに荘厳さを感じさせる光。色がそのまま音楽。風景を前にしただけで涙腺が緩む。山には非現実があり、しばし憂き世を忘れさせてくれる。現実逃避などではなく日常の延長として山をとらえているのが本書のいいところ。現実と山は地続き。生活の中でホッとし、ふわりと擦過する存在となっている。厳しくも優しく温かい山。居ながらにして山の空気を感じることができた。
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雑誌の副編集長をしている女性が、心の栄養補給のために山に登る。登りたくて登るのに、体がついていかない。辛い、しんどい。でもまた山に登る。あぁ、なんか、いいなぁ。山登りをしてみたくなる。山の話だけじゃなく、編集長の仕事の話や、別れた男の話もあって、さくさくと読めた。
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40代の出版社勤務の女性が、ひとりで山を登る。
描かれているのは彼女の心情。喪失感と孤独と。
山の様子も、曇っていたり雨や雪だったり、本人の体調も良くなかったり、楽しいのか楽しくないのかわからない。
それでも彼女はまた山に登るだろうし、普段の生活も続けていくのだろう。 -
宮部みゆきのじわじわ効いてくる毒っ気のある『ペテロの葬列』の後に読んだので余計に爽やかな読了感。槍ヶ岳、涸沢、蝶ヶ岳には行ったことがあるし、読みながらまた山道を歩いているような感覚になりました。アラフォー独身女性の単独山行とその道中の心の有り様を描きつつ、日常のあれこれの一コマや幼なじみへの想いや別れた彼氏とのエピソードがさらっといい距離感で出て来て、スイスイと読めました。大変おもしろかったです。北村さんがまだ覆面作家さんだったとき、絶対に女性だとばかり思っていたことを思い出しました(図書室蔵書)。
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出版業界でキャリアを積み出世もした独身女性が39歳で恋人と別れてから登山に目覚める。40代で気心知れた旧友の病死が起き、仕事一筋の日々の中で登山だけは日常の喧騒から離れられ、主人公はリフレッシュできる。山で出会う人達と下界でも繋がる事もでき、別れた恋人と偶然の再会が起きた時にも逃げずに会話ができる自分になっていた。時の流れは辛い思い出を軽くする。北村薫さんの文章は品がある。
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すーーーぅっとする。
北村さんの文章は清涼感がある。
そして、散歩程度の山から
まんまと山登りに行きたくなりました。 -
40歳目前の仕事に煮詰まった主人公が同僚からとある日突然、「山に行きませんか」と誘われる。それをきっかけに山を趣味として楽しむようになった彼女の山登りと日常を半年、一年の間隔を置いて連作形式でつづっている物語です。
柔らかいやさしさのある筆致が描き出す山のもとの自然は繊細で美しさがあり、知らない山の美しさ(そして恐ろしさも)を感じることができました。山に登るという行動がもたらしてくれる、彼女の「心への効き目」を自然と納得させていく描写でした。細かなお菓子や食べ物もまた魅力的で素敵…。
だれしも、行き詰ったときにはなにかで心を解放させることが必要で、それは人によって違うもの。彼女にとってそれは山だった。そしてそれに出会い、彼女は徐々に自分に自信を得ていく。過去に道を違えた人と、また向き合う力を得ることができていく。
…一歩一歩、自分らしく生きていく。
そんな彼女の姿にまるで寄り添うような気持ちで、登山のみちゆきを楽しめました。脇役さんも、一期一会ですれ違うお仲間、再会して親交を深めることになる友達、みんな魅力的でした。
実のところ、いわゆる「山ガール」のはしくれ(但し初心者レベルのまま)なので、山への魅力もわかるなあというところがいくつもあって、読んでいて親近感を覚えました。でも槍は私には、一生無理でしょう…。