八月の六日間

著者 :
制作 : 大武 尚貴 
  • KADOKAWA/角川書店
3.66
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本棚登録 : 1752
感想 : 280
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041015544

感想・レビュー・書評

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  • 日頃ハードワークをこなしながら、時折山に登り癒される女性編集者の登山日記です。でも書いているのはおっさんの北村薫先生。でも本当にこの女性が存在するんじゃないかと思う位に日記です。もしかして先生心に女性を飼っていらっしゃるのではないでしょうか。
    特別な事件(登山中のピンチは有るけど)も無く、淡々と日常と登山描写の繰り返し。でもこれがとても癒されるんですね。とても好きな本になりました。やはり北村先生は優しい文章をお書きになります。

  • 空から降ってくるのは素朴なのに荘厳さを感じさせる光。色がそのまま音楽。風景を前にしただけで涙腺が緩む。山には非現実があり、しばし憂き世を忘れさせてくれる。現実逃避などではなく日常の延長として山をとらえているのが本書のいいところ。現実と山は地続き。生活の中でホッとし、ふわりと擦過する存在となっている。厳しくも優しく温かい山。居ながらにして山の空気を感じることができた。

  • 雑誌の副編集長をしている女性が、心の栄養補給のために山に登る。登りたくて登るのに、体がついていかない。辛い、しんどい。でもまた山に登る。あぁ、なんか、いいなぁ。山登りをしてみたくなる。山の話だけじゃなく、編集長の仕事の話や、別れた男の話もあって、さくさくと読めた。

  • 40代の出版社勤務の女性が、ひとりで山を登る。

    描かれているのは彼女の心情。喪失感と孤独と。

    山の様子も、曇っていたり雨や雪だったり、本人の体調も良くなかったり、楽しいのか楽しくないのかわからない。
    それでも彼女はまた山に登るだろうし、普段の生活も続けていくのだろう。

  • 読んでいて、とても心地よかった。
    山歩きの厳しさも、楽しさも、疑似体験するかの
    ようにリアルに感じられて。
    その中で、出会う人たち、山から降りて関わる人たちとの
    結びつきも、学びがあり、ほのぼのして、
    人と関わることのあたたかさも、大変さも
    すべて引き受けられる心持ちになれる。

    その中で、心を開放してくれたり、
    ぐさりとささったり、新しい考えへと導いて
    くれる言葉があり…。

    いくつもの山を登り、降り、
    月日を経て行くことで、失うものもあるけれど
    それは、おそれることではない。
    むしろ愉しむことなのだ、と、力づけてくれる。

    読後感、気持ちよい景色を見て、下山した
    さわやかさに包まれた。

  • 編集者のアラフォー女性が一人山を登る。
    入念な支度、持っていく本、ルートの厳しさなど実際に山を登る山ガールにはとても参考になるのではないだろうか。
    仕事は厳しくも充実しているが、親友を亡くしたり、元彼が結婚したり、心にすきま風が吹いた時も山での深呼吸が彼女を救う。

    大きな出来ごとがある訳でも、山を登ったから人生観が変わった訳でもないけれど、山で出会った素敵な人々も魅力的に描かれていて山に行ってみたいと思える一冊。

  • 宮部みゆきのじわじわ効いてくる毒っ気のある『ペテロの葬列』の後に読んだので余計に爽やかな読了感。槍ヶ岳、涸沢、蝶ヶ岳には行ったことがあるし、読みながらまた山道を歩いているような感覚になりました。アラフォー独身女性の単独山行とその道中の心の有り様を描きつつ、日常のあれこれの一コマや幼なじみへの想いや別れた彼氏とのエピソードがさらっといい距離感で出て来て、スイスイと読めました。大変おもしろかったです。北村さんがまだ覆面作家さんだったとき、絶対に女性だとばかり思っていたことを思い出しました(図書室蔵書)。

  • 出版業界でキャリアを積み出世もした独身女性が39歳で恋人と別れてから登山に目覚める。40代で気心知れた旧友の病死が起き、仕事一筋の日々の中で登山だけは日常の喧騒から離れられ、主人公はリフレッシュできる。山で出会う人達と下界でも繋がる事もでき、別れた恋人と偶然の再会が起きた時にも逃げずに会話ができる自分になっていた。時の流れは辛い思い出を軽くする。北村薫さんの文章は品がある。

  • すーーーぅっとする。
    北村さんの文章は清涼感がある。
    そして、散歩程度の山から
    まんまと山登りに行きたくなりました。

  • 40歳目前の仕事に煮詰まった主人公が同僚からとある日突然、「山に行きませんか」と誘われる。それをきっかけに山を趣味として楽しむようになった彼女の山登りと日常を半年、一年の間隔を置いて連作形式でつづっている物語です。
    柔らかいやさしさのある筆致が描き出す山のもとの自然は繊細で美しさがあり、知らない山の美しさ(そして恐ろしさも)を感じることができました。山に登るという行動がもたらしてくれる、彼女の「心への効き目」を自然と納得させていく描写でした。細かなお菓子や食べ物もまた魅力的で素敵…。
    だれしも、行き詰ったときにはなにかで心を解放させることが必要で、それは人によって違うもの。彼女にとってそれは山だった。そしてそれに出会い、彼女は徐々に自分に自信を得ていく。過去に道を違えた人と、また向き合う力を得ることができていく。
    …一歩一歩、自分らしく生きていく。
    そんな彼女の姿にまるで寄り添うような気持ちで、登山のみちゆきを楽しめました。脇役さんも、一期一会ですれ違うお仲間、再会して親交を深めることになる友達、みんな魅力的でした。
    実のところ、いわゆる「山ガール」のはしくれ(但し初心者レベルのまま)なので、山への魅力もわかるなあというところがいくつもあって、読んでいて親近感を覚えました。でも槍は私には、一生無理でしょう…。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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