八月の六日間

著者 :
制作 : 大武 尚貴 
  • KADOKAWA/角川書店
3.66
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本棚登録 : 1752
感想 : 280
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041015544

感想・レビュー・書評

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  • 2014年5月刊。
    ひとりで山を歩くのが好きな、40歳初心者 山ガールの物語。
    主に槍ヶ岳方面の実在の山や小屋が舞台なので、山歩きが好きな人はより一層楽しめそう。
    北村さんらしい、なんとも日本語がきれいな小説。各話の最初に出てくる手書きマップも微笑ましい。

    ◆【引用メモ】花越しの眼下に、今やって来た道が見えた。コンビーフの缶を開ける時、付属の金属でくるくると細く、缶の周りを巻き取って行く。それに従って、コンビーフの肌が、道を開くように見えて来る。あんな感じに、緑の中に長く土の色が見えている。(p.237)

  • 等身大のアラフォーの女性の山登り
    今はやりの山ガールとはちょっと違った種類の山女
    山女と言うとガチな雰囲気の人を想像させられるけれど、そんなことはなく子供のように自然に対しては素直なところが率直に好感が持てます。
    どっちかと言うと山が好きな女性の日常日記かな?
    都会の職場の中では、肩に力を入れてがんばっているけれど職場を離れると肩の力が抜けてだらんと等身大になるもがまたいいです。
    だから、山では子供もように感じて素直になれるもしれませんね。
    紹介のように山女のガチな取り組みを規定して読まれるとがっかりしますが、等身大の女性の日記を読んでいると思うととっても充実すると思います。

  • こどものころはよく親に山に連れていかれた。
    記憶に刻みついているのは、名もない数百メートルの山をのぼっているときに、突然雨が降り出したこと。
    それまでは晴天の山登りしかしたことがなかったから、荷物の雨具にうざったさを感じていたけれど、あれが必要になるときは前触れもなくやってくるのだなぁと。
    なんとなく、人生に似ている。
    主人公の登山前も道具が羅列される。特に食糧に目がとまりがちになったけれど、その他の荷物を背負ったら数十キロ・・・そんなに必要なものが多い場所へのぼっていくには、それ相応の理由がある。
    山に登る理由はひとそれぞれで、見える景色もそれぞれで。
    この小説もまた、理由のひとつ。

  • 流行りの20代の山ガール(初心者)ではなく、
    アラフォーの働く山女子(初級者)を主人公に、
    ♪アルプス一万尺でお馴染みの北アルプス縦走が、
    日常の一服の清涼剤として爽やかに描かれています。

    日常の精力的なキャリアウーマンの姿と、
    その弱音を癒す何ヶ月に一度の山歩きが、
    気持ちよく溶け合っており、読了感のよぃ作品です。
    山歩きをしなぃ方にも、興味を持たれる作品でそぅ。

    主人公が、
    日常のキャリアウーマンとしては、ベテランの域で、
    そのストレスを癒してくれるアルピニストとしては、
    初級者といぅ点も、ふつぅ感があって好感でした…。

    舞台となる北アルプスの一部は、
    20年以上前の高校時代に、2度、縦走しましたが…、
    その頃と、ほとんど変わっていなぃ今の様子もまた、
    悠久の大自然を感じさせてくれ、懐かしかったです。

    山歩きは、ベテランにとってもキツイ運動ですが…、
    少しばかり無理しても、無謀なことは決してしなぃ、
    といぅ不文律も、作中ではしっかりと守っており…、
    山ガール(予備軍)にとっても、参考になるでそぅ。

    差し当たり、夏(休み)に向けて、オススメかも…。

  • 北村薫『八月の六日間』
    ブランチで特集されていたので、その日の内に中身も見ずに購入。

    あけてびっくり。
    目次には、『八月の六日間』ならぬ
    『?月の?日間』がずらり。

    少しは見てから買ったんじゃないの?
    普通見るでしょ?ぱらぱらっと くらい。
    と言われてしまいました。

    やっぱり、山登りってきついんだ。
    何で登ってんだろう?って後悔してもいいんだ。

    何だか、また山に登りたくなりました。

  • 景色が目の前に迫ってくるようでした。読むだけで山登りできた気分です。自分にとって、小説を読むことが「わたし」の山登りと同じやもしれないです。スノーシューは、一度やってみたいですね。『何もやらないツアー』も参加したいです!

  • 仕事でストレスを抱えて
    恋人と別れて傷ついた気持ちを
    誰にも話すことの出来ない性格の主人公。
    そんな彼女にとって、
    山を登りはじめたきっかけは、同僚からの誘いで、
    続けて来たのは、その時のちょっとした出会いなのだけど
    そういうことって、必然だったんだろうと思う
    山へ行く準備をしたり
    持って行く文庫本を選んだり
    その時から、気持ちが日常から少しづつ
    解き放たれているのだろうなと感じる
    選ぶ単行本も、また興味深いのです
    山を登って、失敗があって、出会いがあって
    時も経ち、会社での環境も変わり
    自分も変わっていくけれど
    きっと、嫌いじゃない自分に変わっていってる

    先に進めず、迷っている道から、ちょっとずれてみる
    そういうことの大切さを、山が教えてくれた

    わたしもまだまだ大丈夫って思える
    少し前向きに考えられる
    いい小説に出会えました

  • 最近少しずつ読んでます。願わくは、女学生時代にベッキーさんに出会いたかったし、大学生の頃に円紫さんと巡りあっていたかった。

  • 東京の出版社に勤める40代の女性が、北アルプスや八ヶ岳などに1人で登る数日間の短編集。

    九月の燕岳から槍ヶ岳、二月の磐梯山、十月の上高地から常念、燕岳、五月の北八ヶ岳、八月の北アルプス、裏銀座。

    いろんな山でいろんな人とちょっとだけ出会って別れていくのが良い。

    ひたすらウロウロしたあげく、最後に八月の花の季節を持ってきたのに本人は風邪をひき、双六岳も楽しむことなくそそくさと下山していく。その感じも山っぽい。

    全編を通して「別れた旦那さんとの辛い過去を乗り越える」のだけど(山を始めたきっかけもそれ)、そのサブストーリーみたいなものはあんまり要らなかったな。

  • 登山の経験はほとんどないけど、綺麗な風景や自然の怖さ、そこに集う人々のあたたかさがとてもよく伝わってきます。特に疲れて到着した山荘で出てくる食事は、ほんと美味しそう!

    書かれている山歩きの工程のどれかに行ってみたくなったけど、どれも中・上級者向きみたいで難しそうなので断念。(笑)

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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