検事の本懐 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041066591

感想・レビュー・書評

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  • 短編集の形式で、検察官佐方の人となり、周りの人間を魅惑していく様が描かれる。
    1.連続放火事件:18件の放火事件。誰もが同一犯と思いこむ。佐方が1件だけ他と違うことを見極める。
    警察本部刑事部長と警察署署長の確執の続きが読みたい。
    2.住所侵入および窃盗犯で刑務所にいたハエタツが出所したその日に盗みを犯し、送検されてくる。佐方が警察の捜査の甘さを指摘し無罪放免。地検の刑事部長・副部長ともに自分の思いこみの間違いを反省する。
    3.佐方の高校時代が描かれる。広島の丸棒警察官をひねり倒した。佐方の飾りけのない優しさがみえる。
    4.東京で特捜班が組まれ、地方からの応援組が上京する。佐方と組んだ事務官は下関からだ。身だしなみから第一印象が辛かったが、佐方への絶大なる信頼へと変わっていく。逆に、あこがれの特捜(組織)へは不信感しか残らなかった。この特捜班に出てきた人たちのその後もみたい。
    5.佐方の父の横領事件について。

    隠し事:隠されることで幸せな人、事実を知っていて語らず幸せに暮らす人、事実を知っていて、秘密を守るために不幸になる人。
    佐方の父は、自分が秘密を守ることで全部被ったが、恩人に恩をかえせること、自分が信じた人たちに真相を理解してもらうことで幸せだったのだろう。全部をすべての人が知るのは、いいことばかりではないのだな。

    電子書籍版

  • 「借りを返せば、恩が返せるわけじゃない」
    『恩を返す』で、高校時代の同級生である天音弥生に佐方が言った言葉が、いつなぜ生まれたのか、『本懐を知る』で分かったとき、胸が熱くなって思わず目を閉じてしまった。

    この著者の本は今回で三作目になるが、過去に読んだ2冊同様素晴らしい話だった。
    特別凝った言葉を使うわけでもなく、過剰に感動的な場面を描くわけでもない。でも気がつけば強く心臓を鷲掴みにされ、激しく魂を揺さぶられる。こういうと大袈裟に聞こえるかもしれないが、本当にそうなのだ。
    読んでいてついこぼれる涙は悲しみのためではない。普段は隠れている心の奥底にある何かが震えるからだ。読み終えた後は静かに本を閉じて、その震えの余韻を感じる。音叉がやがてその振動とともに音をなくしていくように、わたしの心の中もやがて静寂を取り戻すが、そのあとに広がるのは清々しい想いだ。
    この本は『最後の証人』で弁護をした佐方の検事時代の5つからなる短編集で、起こる事件にまつわる周囲の人たちが、佐方という人間の本質を語っていく。佐方本人が語り手になることはないので、読んでいるわたしたちは彼の本心を知ることはできないが、無言であることがより彼の誠実さを浮き彫りにしているような気がする。

    この著者の本を読むたびに、わたしはそのストーリーの奥にいる著者本人のことを強く意識してしまう。こんなこと滅多にあることじゃない。こんな話を書く人は、一体どんな価値観を持ちその正義はどのようなものなのか、どんな過去があり今はどのように暮らしているのか。
    読んでいる間中、柚月裕子という人の存在が常にわたしに寄り添う。
    そんな気持ちになる。

  • 検事・佐方という人間の根底と本質が描かれている短編集。胸が熱くなる。泣ける。雨上がりの澄んだ空気が胸いっぱいに広がるような清涼感溢れる話ばかりだった。著者が女性だからだろうか、男前度の高さが気持ちいい。

    子どもが絡んでくる「罪を押す」は泣けてしかたがない。子どもがいて初めて親になれるんだと実感する。

    タイトルにもなってる「検事の本懐」で事件を追う薄汚い兼先さんが(失礼w)綺麗な兼先さんに変わっていく様子が好き。

  • 『最後の証人』が面白かったので、佐方貞人シリーズ2作目の本作もと読んでみました。
    読了の結果、、やっぱりおもしろかった!
    今回は佐方の学生時代や、父親の過去の真相等が明らかになり、佐方という人間の人格がどのようにして形成されたのかが、より深く見えてきた気がする。
    佐方貞人シリーズは、ミステリーの中に根付く人間ドラマが魅力です!

  • 佐方貞人検事の物語。今シリーズは生い立ちが語られていて、佐方貞人の考え方のルーツがわかります。

  • 面白かった。
    これはドラマ化されているものでしたが、やはり小説のほうが面白かった。ドラマももちろん面白かったですが。
    短編集です。佐方貞人が主役には違いないのですが、今回はその周りの人が中心になって動いています。でもその核には必ず佐方貞夫がいる。
    次回も楽しみです。

  • 今の佐方貞人を創りあげてきた、過去の出来事が描かれた一作。
    はたして自分は貞人やその父のように、ただひたすら誠実でいられるか。
    読んでいる間、ひたすら問い続けられている気がした。

  • 「最後の証人」の主人公佐方貞人の、若いころの検事時代を舞台にした連作小説。
    話が出来過ぎ感もあるが佐方の性格が形作られた背景がわかる。
    若い頃の佐方はもっと尖っていたんだなということもわかる。

  • 短編 5作、どれも読み応えのある作品でした。
    正義感溢れる佐方検事の人間性に引き込まれました。
    人情味もあって好みの作風でもありました。

  • 10月-14。3.5点。
    佐方検事シリーズ。中編4編。
    どれも面白い。高校時代の佐方の一編が過去が知れて面白かった。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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