検事の死命 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 195
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041066607

感想・レビュー・書評

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  • 佐方貞人シリーズ第3作目。佐方の米崎地検での人となりがわかる郵便物紛失事件への真実探求行動、亡き父親佐方陽世の冤罪の真実がわかる故郷での法事での出来事、そして地検トップや政治家の圧力に屈することなく真実を追求し検事としての正義を貫く痴漢事件での胸のすく活躍。
    痴漢事件では捜査、起訴をする刑事部での仕事と転属になった公判部で同じ事件を引き続き検事として裁判の公判に臨む仕事での戦いぶりの両方が描かれている。卑怯者、権力者、傲慢な者達、全てを冷静沈着に打ち負かし事件解決に至る。陰で援助する直属の上司やひたすら佐方を信じて尽力する事務官にも胸が熱くなる。
    シリーズ1作目、2作目の登場人物が再度この3作目でも登場するので、順番に読んだ方がいいんだろう。繋がりの説明は書かれているので忘れていても思い出すようになっているのがうれしい。
    柚月裕子のファンになったと宣言したくなるシリーズ。次は佐方貞人シリーズ以外の柚月裕子の小説を読もうと思う。

  • 第一作目の「最後の証人」から佐方シリーズは全部面白いが、この作品が一番良かった。
    タイトルの死命を賭けた作品も良かったが、何と言っても父親の法要の話が「良かったね」としみじみ感じて泣けた。
    この親にしてこの子あり。
    死命を賭けた道は親子で違えども、そう強く感じた。

  • 佐方貞人シリーズ3作目
    郵便物紛失事件の謎に迫る「心を掬う」、父親が実刑を受けた理由を知る「業をおろす」の2話の短編と、権力による圧力に屈せずに痴漢事件の真相に迫る中編「死命を賭ける」の作品集。

    「死命を賭ける」では、筒井、佐方が小さな事件でも決して蔑ろにせず、権力に屈することもなく、正しく裁くことを追及する。
    もしかして佐方が負けるんじゃないかとハラハラしたが、見事なクロスカウンターが痛快だった。
    どんなに青臭くても自分の使命を全うする姿勢に心打たれるとともに、最後の筒井さんのセリフにジーンと来て、読了後も余韻に浸ってしまった。

    また、「業をおろす」は、前作「検事の本懐」における「本懐を知る」の後日談にあたり、佐方貞人の父親に関する全ての謎を明らかにする作品。
    佐方貞人の父親に対する周囲の見方が変化していく過程に心暖めつつ、犯罪を捜査する側、弁護する側、双方が抱えるジレンマへの理解を深めることができた。とても良い内容だった。

  • 2022.4.25読了
    佐方貞人シリーズ三作目。
    タイトルになっている「死命を賭ける」「死命を決する」の二篇の他、「心を掬う」「業をおろす」の計四篇が収録されている。

    電車内で女子高生に痴漢を働いたとして会社員の武本が現行犯逮捕される。
    この武本という男が県内有数の資産家一族の婿という事で、佐方に圧力がかかるのである。
    しかし、シリーズを読んでいればわかるが、佐方は圧力に屈するような検事ではない。
    相対する弁護人は強力な証人を携え、裁判に臨もうとしているなど不利とも思える状況だが、きっと佐方は勝つと信頼を自然に寄せてしまう。
    さあ、どうやって困難を乗り越えるのだろうかと、期待してページをめくる手が止まらない。
    裁判が結審した後、ふくろうへ向かう男達が微笑ましかった。

  • ★特長
    具体的事件に対して、佐方検事はどんな小さなことも見逃さず、地道に取り組んでいく、その話の展開に引き込まれていきます。

    ★魅力
    最後は正義が勝つ。
    そうであって欲しい。
    佐方検事の「罪をまっとうに裁かせる」という信念に基づいた、どんな難敵にも怯まない仕事ぶり。

    ★感想
    ○心を掬う
    郵便物が届かない。
    出したつもりが、家のどこかに残っているのでは?
    行きつけの飲み屋の大将と、職場の同僚からたまたま聞いた何気ない話から…。
    まさかあんなところで、あれを掬うことになようとは!
    変わらず佐方検事の冷静さと観察眼、推察力に脱帽。
    この犯人は、少しの尻尾を掴まれたくらいでは、「証拠はあるのか?」としらばっくれる。

    郵便は紙切れを運んでいるのではなく、「人の心」を運んでいる。
    仕事への誇りを感じます。
    犯人にはその誇りが無かった。

    事件解決後に、佐方の祖父母との心温まる郵便物をまつわる思い出の紹介があり、今回の事件の解決への執念の理由を感じることが出来ました。

    ○業をおろす
    佐方検事の父、陽世さんの事件の全貌が分かる。
    亡き陽世さんがなぜ真実を秘して、無実の罪を受け止めたのか?
    真実を知るもののなぜ?を知らなかった佐方検事。
    真実を知らず、汚名を着たままの陽世を悔やみ、苦しみ続けたご家族。
    陽世の汚名を晴らす旧友の英心和尚。
    長年のわだかまりを解消した一話。

    ○死命を賭ける「死命」刑事部編
    痴漢事件。前編。
    奥さんが名家出身の容疑者。
    母子家庭の娘で補導歴のある被害者。
    起訴を目指す佐方に圧力がかかる。
    例え自分の昇進が断たれても、事件を見逃すことは、検事の死命に関わると、突っぱねる佐方。


    ○死命を決する「死命」公判部編
    痴漢事件の後編
    加害者側名家の息のかかった弁護士が仕込んだ証人に対し、佐方はクロスカウンターを仕掛ける。
    正義の味方佐方検事を応援しつつ、最後までハラハラどきどきの展開。
    最後に弁護士が言った言葉には、ヘドが出ました。

    恩田陸さんの書かれた解説も良かったです。

    ★オススメの人 
    リーガルサスペンスに興味のある方。
    佐方貞人ファン。

  • 佐方シリーズ第3弾。郵便物紛失事件の「心を掬う」、父親の死の謎が明かされる「業をおろす」、そして、痴漢事件で検察と弁護士、ともに負けられない裁判、「死命を賭ける」「死命を決する」の四遍。地道に捜査する姿、家族や父への思い、左方の日となりがくっきり現れ魅力的な人だと感じます。そして、人となりだけでなく、物語の吸い付き力も半端ない。「死命」の法廷のところは緊張感、読み応えありあり。あっという間に読んでしまった。ますます柚月さんの虜になりそうです。

  • 佐方シリーズの3作目。
    短編4話で、後半の2話は連続の話し。
    父親の正義が明らかになる。
    後半の痴漢と冤罪の話しはとてもスカッとして気持ち良かった。
    佐方の一途に正義感を貫く様は、父親譲りなのだと繋がった。
    それにしても、佐方はかっこいい男だな。

  • 「検事の本懐」を先に読むべきだったらしい(^◇^;)
    とは言え楽しめた。
    死命を賭ける、死命を決するの2篇だけでなく、どの仕事にもそれを全うしようと頑張っている人達もいるが、金や権力出世欲にとらわれて流される事を当たり前と思っている人達もいる。
    ある意味正義が勝つのがスカッとするのだが、そんなにうまく行くのか?とちょと疑問に感じるくらいよく出来てる。
    佐方が淡々としているのが良い味出してる。
    ふくろうで臥龍梅を飲んでみたい!

  • 佐方シリーズ三作目。
    検事の正道を突き進む佐方の姿に胸を熱くしながらも、もうちょっと柔軟になってもいいんやでと、冷や冷やしながら見守る気持ちで読みました。
    微細と思われる犯罪の背後に泣く人々に思いを致し、厳しく徹底的に対応する姿。
    地元の権力者からのプレッシャーに屈せず、検事生命をかけて戦い抜く姿。
    分かりやすい正義の姿は読んでいて清々しいです。

    柚月裕子さんは圧倒的に男を描くのが上手いなと思っているのですが、いつもおっさんばかり書いています。この本の中のおっさんもやはり魅力的で、佐方以外もみんなどこかユーモラスで憎めないです。敵役のベテラン弁護士すらもどこか憎めない魅力が有ります。

  • 僕はブクログに設定したジャンル分けの中で、この作品を「ミステリー」に入れたんだけど、ミステリーじゃない、謎めいたものなどなにもない、ただただひたすら真実を追求し、裁かれるべきものをまっとうに裁こうとする、そのためには自分の地位や名誉や出世など眼中にない、ただひたすら、ひたむきに検事としての正義本道、いや、検事の王道を追求するひとりの検察官の物語なのだ、と強烈に思わされずに入られませんでした。これがフィクションではなく、ドキュメンタリーだったらいいな、そしてもしもドキュメンタリーなら、左方貞人検事に会ってみたい、と心から思いました。

    検事の死命「刑事部編」「公判部編」はものすごく強烈!「巨悪」と言うには情けなさすぎる痴漢常習犯ひとりを起訴し有罪に持ち込むまでの緻密な捜査と論理構成には驚くばかりだけれど、それが何のためなのか、誰のためなのか、誰を信じて大切にしてそこまでしたのか、というのが読者にとっても最後の最後に徹底的に知らしめさせられる、本当に痛快な作品でした。

    柚月裕子さんの作品、初めてであったのは友人の紹介で「慈雨」でした。そこから最後の証人に繋がり、左方貞人シリーズに入り込みました。もう、本当にたまらない心地よさを感じています。これからも柚月裕子さんの作品は漏らさず熟読させていただこうと思います。

    柚月裕子さんの作品にまだ触れたことがないという方は、是非是非手にとってみてください。ぼくの個人的なおすすめでしかありませんが、柚月裕子さんの作品はミステリー・警察・検察モノの範疇に収まらないヒューマンドラマです。

    ぜひ、ご堪能あれ!!

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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