検事の死命 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041066607

感想・レビュー・書評

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  • 電車内で女子高生に痴漢を働いたとして会社員の武本が現行犯逮捕された。武本は容疑を否認し、金を払えば示談にすると少女から脅されたと主張。さらに武本は県内有数の資産家一族の婿だった。担当を任された検事・佐方貞人に対し、上司や国会議員から不起訴にするよう圧力がかかるが、佐方は覚悟を決めて起訴に踏み切る。権力に挑む佐方に勝算はあるのか(「死命を賭ける」)。正義感あふれる男の執念を描いた、傑作ミステリー。

    佐方検事の短編集の二つ目

    「心を掬う」では、郵便局内での現金窃盗事件が描かれる。郵便局員の心を送っているのです。というのが印象的だった。

    「業をおろす」は、前作でも扱われた佐方の父親の話。なぜ彼が無実の罪でわざわざ刑務所に入ることとなり、法廷でも戦わなかったのか、が描かれている。佐方などの家族ではなく、住職から語られるという構成になっており、だからこそ、その話が真実であるとみんなが理解できるのだろう。この想いを知ったからこそ、佐方は身内の罪を隠すような検察に嫌気がさしたのかもしれない。

    「死命を掛ける」県内の名家の1人が痴漢で逮捕される。被害者は前歴持ちの少女。名家なだけあって政治家たちから圧力がかかるものの、佐方は起訴することに。ちょうど異動も相待って、公判も佐方が担当することに。証人や被害者の周りの人たちの声を正確に拾い上げ、罪をすべからく裁かされるの、検事の本質であり、だからこそできない人も多いから、格好よく映った。

  •  もちろんメインは「死命」で、その信念には感服するばかり。ただ前作を読んでいたため、「業をおろす」に涙しました。本当に報われて良かった。そして「心を掬う」も、貧しくても何かしたいという優しい人たちの想いにジンときました。佐方に素敵な祖父母がいて良かった。

  • 佐方さんシリーズで1番よかった!佐方さんかっけー!

  • 佐方貞人シリーズの三作目

    相変わらず、佐方検事カッコいいです。

    「罪をいかにまっとうに裁かせるか、
    それだけです」

    全ての検事が、そう思っていてくれると信じたい
    私です。

  • 兎に角、ハラハラドキドキの内容である。この臨場感溢れる法廷の緊迫した検事と弁護人とのやり取りは、実写さながらである。恰も私自身が傍聴席に居るような錯覚を覚えてしまう。この感覚を体験するには読んでもらうしかないだろう。凄い作家の作品である。益々、柚月ワールドの深みにハマってしまう。


  • もうずっと面白いです。
    権力に踊らされず真実を追求する様が見事。
    佐方だけじゃなく、筒井もかっこいいんだよなあ…。
    責任を持つ上司って希少価値じゃないの。
    アドレナリンドバドバの面白さでした。ブラボー。

  • 四話からなる。第一話の心を掬うは序奏か。検事の本懐で表せなかった佐方の過去を話の中に上手く盛り込んでいる。
    第二話では、父親の正義を13回忌に証明する。そして第三話、第四話で主人公佐方検事父親と同じ道を進む。
    相手方の弁護士の「君はいずれその使命感とやらで、自分の首を絞めることになる」という言葉が気になる。次にいつか読む検事の信義が楽しみだ。予約順は確か135番目か?

  • 佐方貞人が主人公のシリーズ3冊目。今回もまた米崎地検での検事時代の話。

    第1話、汚物にまみれる検事っていうのも大概なものだが、寧ろ事件が片付いてから祖父母に思いを馳せるところが印象に残る。
    そう感じていたら、第2話ではその祖父母の住む町での、父の13回忌の話へ。
    前作で明らかになった弁護士だった父の話だが、改めて父が汚名を着たままで亡くなった経緯が語られる。
    父の汚名は雪がれたが、ここで詳らかにされた職業倫理と正義との狭間で揺れ動いた父の信念が、3,4話にまた繋がり、検事の死命を賭けた事案に対峙することになる。
    県内の名門一族の係累である被疑者と、母子家庭で非行歴がある被害者という構図の中で、両者の言い分が真っ向から対立する痴漢行為をどう裁くのか?
    権力と金力を盾に裁判を有利に進めようとする被疑者に対しクロの心証を抱く佐方だが、このシリーズ、最後に正義が勝つとばかりも言えない作りのため、どのような結末に行き着くのか、裁判の進行に一喜一憂。

    相手の弁護士が『君はいずれその使命感とやらで、自分の首を絞めることになる』と言い放つが、確かに世の中の作りはそういうことだ。私らだってどれだけ長いものに巻かれてきたことか…。
    それ故に、本の中でこうした清々しい結末を見るのも、いいじゃないかと思うのだ。

  • 立証の難しい痴漢事件(それも被害者が非行での前歴がある母子家庭の女子高生という弱者、被告人が地元の名士という強者)を見事に裁かせた最後の作品が最も印象的。ちゃんとしたリーガルミステリなのに、どこか時代劇のような爽快さがあるのが素晴らしい。

  • 素直な気持ちで読めるのは、たぶん佐方さんが素直な気持ちで淡々と仕事をこなしつつも、心の中には情熱があるからだと思う。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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