- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041304020
感想・レビュー・書評
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何たる面白さか。いつ以来か分からない2度目でも全く印象は変わらない。面白過ぎる。
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昭和世代の人はよくご存知でしょうが、角川映画ブームというのがあって、それは今に続くミステリーブームでもありました。
角川映画の第一弾は「犬神家の一族」で、それで横溝正史ブームが本格的になり、横溝正史の金田一耕助という探偵ものが続けて映画化されます。
その角川映画金田一耕助シリーズの第二弾が「悪魔の手毬唄」でした。
岡山県と山奥、兵庫県との県境にある「鬼首村(おにこべむら)」で起きる手毬唄の歌詞をなぞった連続殺人事件、およびその二十年前に起きた迷宮入りした殺人事件の謎を追う話です。
この映画ブームが起きたとき、僕は中学生、当時からミステリーは読み耽っていたので小説は読んでいました。
しかし、大学時代に角川映画の「悪魔の手毬唄」を観て、その映画としての完成度と魅力にも驚かされ、それ以来、横溝正史作の中で僕は「悪魔の手毬唄」がベスト1になっています。
実は最近この40年前の映画の資料集が発売されて、思わず購入。
横溝正史ブームの時のちょっと怪奇趣味的な表紙絵から、毛筆て「毬」と書かれたあっさりした表紙に変わった新装の文庫本も買い直して再読しました。
今読み返すと、意外と最初の殺陣が起きるまでが長い!でも、童謡殺人という仕掛け、犯人を推理させる伏線の引き方、など完成度の高い作品です。 -
まさに横溝ワールドといった作品。
手毬唄の歌詞になぞらえて形作られた見立て殺人。
犠牲者たちは次々と奇妙に飾り立てられていく。
そして登場する、誰ひとり正体を知る者もいない庄屋の妻だったという老婆。
さりげなく張りめぐらされた伏線の数々。
最大の謎は20年前に起きた殺人事件にある。
すべての発端はここにあり、金田一がその謎に迫っていく。
手毬唄の歌詞を知らなければ「見立て殺人」だとは誰も気づかない。
そして、村人のほとんどがすでに手毬唄の歌詞を知らない。
何故そんな中、あえて「見立て殺人」にこだわったのか。
古き時代の因習や閉鎖的な空気感が物語を覆っている。
謎解きそのものはそれほど驚かなかったけれど、そこに至るまでの複雑な人間関係に少々疲れすぎて・・・。同年代の娘たちの違った個性が面白かった。
それぞれの人間性が細かな描写でわかりやすく伝わってきた。
真犯人の身勝手な動機がどうにも納得がいかない。
もっと違った手段がいくらでもあっただろうに・・・と思うのは、現代感覚に染まった考えなのだろうか。 -
昭和30年7月
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途中で挫折した
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『ひとり横溝正史フェア』、つづいては「悪魔の手毬唄」。
こちらも有名な作品。
金田一耕助は、鬼首村の外れの湯治場である亀の湯に磯川警部の紹介で逗留し、鬼首村のことを知って行く。
村の勢力は由良家と仁礼家に大きく二分されており、かつては庄屋筋であった多々羅家は勢いを失ってしまっている。
そんな村では戦前に農村の不況につけ込む詐欺が起きた。しかもその詐欺を働いた男、恩田は、詐欺を暴こうとする亀の湯の女将の夫を殴り殺して消えた。
そして今、鬼首村に恩田の娘である人気歌手大空ゆかりが帰ってくる。
すべての役者が揃い、鬼首村に再び惨劇の幕が切って落とされる。
この作品でも横溝正史がよく扱う、閉鎖された村での貧富の差や差別といったものが描かれている。
差別に関しては、現代のわたしには想像も出来ないほどの凄まじさが戦前戦後にはあったのだろうと思う。それも閉鎖された環境であれば、そこから脱け出すことも叶わず、人間らしい扱いをされないまま生きるしかないのだろう。その辛さや絶望、恨みや妬みなどは想像することも難しい。
村に伝わる手毬唄になぞらえた見立て殺人がつづいて起きる。
「獄門島」でも見立て殺人が起きていたが、こういったものやトリックは推理作品らしい派手さがある。
ただ殺すだけでは足りず、死体を使って自分の思いを表そうとするというのは顕示欲の強い異常な心理だとは思うけれど、そこまで犯人を追い込むような何かがあったことが哀しい。
この作品も映像化されており、口に漏斗を咥えさせられ枡から落ちる水を飲まされている死体など横溝正史らしい残酷シーンが満載だったような記憶がある。
映像にすることを考えて書いた作品ではないだろうけれど、視覚への衝撃が強烈な作品が多いため映像化したときの効果は大きかった。
この作品は金田一耕助に近い人物が書いている形で語られているのだが、誰がどのような気持ちで書いていたのかが最後の一行でわかる。
その一行を読むと何とも切なさを感じる。
横溝正史のラストは、金田一耕助の好みで犯人を見逃すといったものと、犯人には罰が下るものと大きく分けてふたつあるが、この作品では後の方の形で終わる。
わたしはこういった終わり方の方が好みなので、切なさは残るものの良い終わり方と言える。
やはりどんな理由があっても、ひとの命を奪っておいて何もなしは頂けない。
罪は償わなければならないと思うのだ。 -
終了日 2016・02・15
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杉本一文カバー本でした。
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いかにもな横溝正史ワールド。
旧家・岡山の田舎・見立て殺人・グロテスクな死体装飾。
手っ取り早く横溝正史を味わえる。
ただ、八つ墓村や獄門島のような迫力に欠ける。
村の青年たちが牧歌的なせいだろうか。
焦点がややぼやけ気味。
とはいうものの、他の作家達と比べてレベルが違う。
読みだしたら止まらない。