- Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041753606
作品紹介・あらすじ
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」西条八十の詩集をタクシーに忘れた黒人が、ナイフで刺され、ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で死亡した。棟居刑事は被害者の過去を追って、霧積温泉から富山県へと向かい、ニューヨークでは被害者の父の過去をつきとめる。日米共同の捜査の中であがった意外な容疑者とは…!?映画化、ドラマ化され、大反響を呼んだ、森村誠一の代表作。
感想・レビュー・書評
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まずはRIP。最近多いなぁ。。。と思うのは当方もアレに近づいている証か。。。
ともあれ再読しました。
人間の描写に主題があったのかもしれませんが、どうでしょう、設定・ストーリー展開が粗すぎる、正直。いわゆる時代であり、サスペンスの進化を感じさせてくれます。
また、進駐軍に関わる設定がここでも。その時代を知らずに現在を生きる人間は相応の想像力を働かせないといけないですが、こういった具合に小説の素材になる、ましてや人間とは?を問いたい作品に登場するくらいなので、当時に生きた人々への衝撃度は功罪ともにかなりのものだったんですね。改めて考えさせられます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
子どもの頃に映画の宣伝がテレビでしきりに流れていて、「母さん僕のあの帽子どうしたでしょうね〜」だけが印象に残っていた。西条八十だったのか。しかし作品の内容についてはまったく何も知らず、先日、森村誠一さんが亡くなったのをきっかけにようやく読了。
複数のエピソードがぽんぽんぽんと出てきて、これがいったいどこと、誰と、どう繋がっていくのかと思いながら読み進める。すべてがちゃんと納まるところへ収まっていった。すごい。
ニューヨークについての描写がなんというか容赦なさ過ぎて、ひえー、と思う。
映画では設定がだいぶ変わっていたようだった。棟居さんは松田優作がやっていたのか。
新装版の解説は横溝正史。 -
追悼のための再読。
最初に読んだ時には、とても衝撃だったが、
冒頭に出てくる「ストウハ」。
どういう意味なのかすでにわかっているので、じんわりした。
母さん、僕のあの帽子、どうしたでしょうね。夏、碓氷から霧積へ行く道で渓谷に落としたあの麦藁帽子ですよ。
西条八十の詩集。麦わら帽子。
谷井新子がグッジョブ。
伏線が繋がっていく。
昭和の名作。
今でもキラキラしているすごい本だと思う。
あとがきでわかった。
作者の森村誠一さんは、
人間性を尊重した小説が書きたかったのだと。
ご冥福をお祈りいたします。
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1970年代に書かれた作品であるが、2020年の今、ほとんど違和感なく読むことが出来る。これは時代を描くのではなく、人間の心理に重きを置いたことによるものだろう。
とてもモダンな雰囲気が小説から感じられた。
人間の証明とは、個人の主観による極端な考え方であり、読了後に思い返すと時に嫌悪、時に憐れみの感情を抱く。人間らしさという大きく曖昧なものではなく、明確な定義とも言える線引きであった。
客観的な視点で読むことから脱することは無いが、それは人間の持つ、闇の深さがあまりにも得体の知れないものであるからだろう。
登場人物についてうまく焦点を合わせ、簡潔な書き方の中に妙にリアリティがあり、感情の多様性を感じずにはいられない。
終わりにかけて、凄まじい伏線回収が連発する。あらゆる点が、一気に線で繋がるのだ。
あれも?!これも?!あらら......
無関係である事件は無関係であり続けるが、それに関わる人間は同じ世界で生きている故に、同じ過ちを犯すのかもしれない。そこには愛、憎悪、虚構、依存、差別という人間の持つ、いわゆる人間らしさがあるのだ。
人が殺される物語を読むたびに、頭の中で少し違和感を感じる私がいる。罪無く死んでいった登場人物に、何を想うか。楽しい読書、おもしろい小説とは。
私にとって人間の証明とは何を意味しているのかな。
読了。 -
映画とあいまったメディアミックスの先駆け的作品として有名な小説。どんな本かと読んでみたら……こういう小説だったのか。面白くてグングン読めた。
舞台は1975年頃。つまり戦後30年という頃だけど、根底には終戦直後の出来事が深く影響していて、1975年当時って終戦当時にそこそこの年齢だった人がまだそこそこの年齢のままで生きていた時代だったんだなあと、ある意味驚き。
人がたくさん出てきて一つの事件を追うようでありながら群像劇のようなテイストがある。そして最終的に、そのたくさんの人々がこじつけなくらい相関してしまうのはどうなのって感じだった。棟居刑事の幼い頃の惨事に直接的に八杉恭子やケン・シュフタンが居合わせたなんてやりすぎ。 -
今更ながら読んでみたが、40年以上も前の作品とは思えないほど読みやすくてそして面白かった。
ページ数も多めだったけど一気読みしてしまいました。
最初はバラバラに進んでいたいくつかの物語が最後は綺麗に纏まる感じが良かった。
ただジョニー・ヘイワードの人生と母を想う気持ちがあまりにも切なくてなんともやりきれない気持ちになった。 -
「人はだれでも母から買ってもらった『麦稈帽子』を持っている」。結末を知っていても、長い旅路にまた身を委ねたいと思う推理小説は、この物語ぐらいです。
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またもや大きな勘違いをしていた。やはりこの題名のせい。
推理小説だったのですね…
何となく松本清張を思わせるような雰囲気。それなりに面白く読んだけど、プロット的にはもっと練れても良いようにも思われる…