終業式 (角川文庫 ひ 8-11)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041835111

感想・レビュー・書評

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  • 20150210
    最後の「姫野カオルコ」からの手紙を読んでいたら、またまた泣きそうになってしまった。
    ああ、共学で良かった、とそう思いました。それも、あの16、17という時期を、あの狭い教室で、後ろの壁まで目一杯の机、男の子も女の子も犇いてる、あの教室で過ごした日々は本当に本当に宝物だと思う。今が大学生だからこんなに高校生だったころを懐かしんで、儚く思っているのかと思っていたけど、きっと高校を卒業したらずっとずっと、高校生だった頃のあの日々は自分の中で輝き続けるものなのだろうな。
    あの頃。あの頃といえば、テストの結果ほど怖いものはなくて、体育祭ほど退屈なものはなくて、スカートの丈を何気なく気にして、購買で買うクロワッサンほど美味しいものはなかった。夜になったグラウンドを蛍光灯の光る教室から見ているだけで心が踊ったし、弓道場で弓も引かずただ寒い寒いと言い合っているだけで温かかった。
    高校3年間を思い返すと必ず彼のことを考えてしまう。わたしにも、悦子でいう都築くんのような男の子がいました。でも彼は都築くんとはまるで違う。そしてわたしも悦子とまるで違う。彼との3年間はなんだか凄まじかった。あの頃の私は(私たちは?)まわりも、自分のことも、相手のことも、なんにも見えていないのに、がむしゃらに、闇雲に、ゴールなんてないのに、走り続けていたように思います。よく一緒に帰っていたけれど、よくケンカをして、よく彼の無言の背中を追いかけていました。飽きないなあ、わたしも。そんなことをしている間に単語の一つや二つ、派生語まで簡単に覚えられただろうに。でも、あの頃のわたしには、英単語なんかより、古典の活用形なんかより、ユングやデカルトなんかより、インテグラルで出せる数字なんかより、彼のことが一番大切だったのです。彼とのことを気持ちよくしておかないと、すっきりさせておかないと、勉強に身が入らない気がしていたのです。本当は彼とケンカをしてたって、途中で別れてしまったって、彼と出会う前みたいに頑張っていけたかも知れないのに。
    でも、love is not saying sorry.彼とはお別れしてしまったけれど、私はあの日々を全く後悔していません。無駄だったとも思っていません。本当に素敵な時間だった。甘くて甘くて、苦くて、時々しょっぱくて。わたしはひたすらに、がむしゃらに、彼のことを愛していたのかな。
    今でもよく彼のことを考えます。戻りたいとは思わないけれど、ちょっぴり会ってみたい。多分、彼はそういう人なのだと思います。わたしが他の人と結婚してもずっとずっとあの思い出と一緒に心に住み続けるのだろうと思います。
    また素敵な本に出会えました。こんなにもセンチメンタルになれます。時々、こうして物思いにふけって、自分の文に酔いしれるのはとても気持ちがいいものですね。

  • 初めの方は、高校生の自然な文体なのか、少し読みづらい。しかし、都築が浪人して詩的な文章を書いてしまったりだとか、ああこういう時期もあったよなあ、と思わされる。
    後の方がものすごくいい。様々な人がいて、いろんな人生がある。人と深く関わったらそのぶん傷つくけれど、傷つかない人生は味気ない。「Love is not saying sorry」について書かれた都築の手紙がいちばんいい。
    最初の方は読みづらくても、ぜひ最後まで読み通してほしい。

  • 141019

  • 僕が一番好きな小説です。
    恋愛小説として大好きです。
    今までも沢山恋愛小説を読みましたが、この小説が一番です。
    他の恋愛小説と、何が違うのか。ちょっと考えてみました。
    一言で言ってしまうと、それは「僕の身の丈にあっている。」と言うことです。
    もちろん、傷心の海外旅行での出会いとか、クルーザーで港の夜景を見ながらのデートとか、そういう恋愛小説も好きなのですけれども、そこには「僕」がいません。
    そう、「終業式」を読んで、僕が「一番好き」と断言できるのは、「たとえば登場人物の中に僕がいても違和感がない。」僕の身の丈にあった恋愛小説だと言うことです。
    物語は、一九六〇年頃生まれた同級生四人の高校時代からスタートします。舞台は、静岡県浜松付近。僕が生まれた年代や土地柄とは全く異なります。それでも、「僕が登場してもおかしくない。」と思えます。何故なのでしょうか。
    それが、この小説の他では読めない、恋愛小説であるポイントのような気がします。恋愛に対する四人の試行錯誤。これが、ポイントではないかと思います。
    都築は行き当たりバッタリですし、悦子は雰囲気に流されやすい。島木は猪突猛進ですし、優子は考えすぎなのですけれども、みんな失敗しながら、少しずつ大人になってゆきます。


    おきまりのパターンを踏まない恋愛は、試行錯誤、遠回りです。でも「恋愛」って、そういうものですよね。自分の好みの異性は、自分で見つけるしかないし「見つかった」と思ったら、相手にも「見つけた」と思ってもらえるように努力しなくてはならないのですけれども、それって、必ずしも雑誌に載っているようなテクニックがうまくいくとは限りません。もし、失敗したとしても、誰もフォロー(例えば、替わりを見つけてくれるとか?)してくれません。結局、自分でどうにかするしかないのです。たとえ、うまくいって、ドラマに出てくるような、トレンディーな恋愛になったとしても、それが幸せへの切符であると思えません。そんな僕は、登場人物の試行錯誤に励まされるのです。僕も「今は遠回りをしながら、でも前進しているのだ。」と思えるのです。
    自分の恋愛観を「遠回りが趣味」とは思いませんが、こんな登場人物たちに共感がもてる人とは、きっと仲良くなれる。そんなふうに思える恋愛小説でした。

    ーーーーーー

    角川書店から新たに刊行されたので、買ってみました。今回読んでも「やっぱり、保坂の気持ちがよく分かる。」なのですが(^_^;) 今回は、都築が終盤に悦子へ送った手紙(角川文庫ではp328~)にも注目しました。悦子が、相変わらず別れた男へ自分の欲求を訴えている(同p308~)のに比べ、都築のこの手紙は、悦子への接し方(つまりは女性への接し方)の変化が伺われます。男三兄弟の真ん中ッ子として育った彼が、遅まきながら、女性への接し方を学んだ様子が伺えます。僕も、男三兄弟の真ん中なので、今後(ていうか、今、ちょうど、ラストの都築と同い年(^_^;)だから、今こそ!)彼の後に続こうと思います。

  • ツ、イ、ラ、ク、以来の姫野カオルコ。
    真っ当にいい小説だなと思った。書簡体小説好きなので気に入った。

  • 読み始めてみて、初めは「あー、帯に騙されたかな。」と思ってました。
    というか、単に読み辛かったです。
    中高生の色々な話し方が混じった文章だったので。

    だけど、読み進めていく内に引き込まれていきました。
    というのも、手紙って基本的には1対1でやりとりするもので。
    他の人に見られるものではない、と思ってます。
    ましてや、書いて投函しなかったものなんて誰にも見られない本音の部分です。
    で、純粋に本音の綴られた人様の心内を盗み見てる気がして、悪いなって気持ちと同時にドキドキしました。

  • 何とも懐かしい雰囲気一杯でもう少しこの人の本を読んでみようと思った。

  • 手紙のやり取り懐かしい。

  • 夏休みの課題として読んだ本。この作品はすべてが人から人への手紙だったりメモだったりして、初めは読みにくかったけど一気読みしてしまった。私たち読者への想像の余地がたくさんあって楽しんで読むことができた。

  • 手紙、時々FAXの往復書簡形式。時代をわかりやすくするために当時の流行り言葉やニュースなどがちょこちょこ挟まれている。それが???となったりもしたけどまあストーリー上は問題ない。

    行間に光や色が見えたり感情が見えたりして面白かった。ノスタルジック!
    遠藤が幸せになってよかった。
    遠藤と都築のなんともいえない関係性が好きです。

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著者プロフィール

作家

「2016年 『純喫茶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

姫野カオルコの作品

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