海の鳥・空の魚 (角川文庫 さ 24-1)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041853016

感想・レビュー・書評

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  • 高校の教科書に載っていたのがメメちゃんとの出会いでその作品が収録されてるのがこの一冊で。あれからずいぶんと時がたったが、若さゆえの照れや精一杯背伸びしている感じ、大人の世界に足を踏み入れ始めた時の期待と不安とかそういう気持ちの揺れを思い出して、胸のあたりがキュっとする。

  • 小粒ながらもしっかりした余韻が残る作品集。魚なのに空にいるような、鳥なのに海にいるような、そんな馴染めなさを感じている人たちが主人公。

  • うまくいかないことも多いけど、いいこともたまにある。どん底ってわけじゃない。わるくないよね、今も。ちょっとがんばってみようかな。

    そんな気持ちになった短編集。
    どの話も、希望に満ち溢れているわけではないのだけど、何となく過ぎていくような毎日を明日も続けようかな、と思えてしまう。
    もしかして、それは私も海の鳥だったり、空の魚だったりするからなのかもしれない。

  • 作品中に高校のときに私の好きだった女の子と私の名前が出てきた。性格的にはもちろん全然違うが記念碑となった。きらめく才能ある短編集である。ゆっくり読むつもりであったが、3日で読んでしまった。『ほおずきの花束』が特に良かった。丁寧である。

  • (リリース:美穂子さん)

  • 巻末に記された、著者本人の「あとがきにかえて」と、群ようこの解説を読むと、この短編集に著者がこめた想いを感じとれるような気がして涙が出てくる。「どこかちょっと、世の中がひいたラインからはずれている人たち」「思いどおりにいかないことがあっても鼻の頭にシワを寄せてちょっと笑ってみせることで済ませてしまう彼ら」、そんな彼らは著者自身の姿だったのかもしれない。

  • まったく記憶はなく、短編の中でもかなりの短編。

  • とある実力テストに載せられていた一冊である。

    雨の日に、置いてある傘を盗って降りてしまう少年と、盗られたことに気付くおじさんの対比。
    その感じが、ありありと自分の心に響いて、忘れられずに購入した思い入れのある短編集なのだ。

    (テストだから、その時はどっぷりと浸っているわけにはいかなかったのだが)
    自分の気持ちと「ぴったり」符号する話(というか言葉の使い方というか)は、本当はあまりないように思う。
    それは、感動や涙とはまた別物である。

    何度も読みかえしたくなる本とは、こういうことをいうのかな、と思った。

  • 日常の何気ない、特別な一コマを切り取った短編集。心に沁みました。最後のお話がとても好きです。

  •  難しい小説、と聞くと使ってる言葉が難しかったり、設定が難しくて読み進めることができないのだと思っていました。でも、鷺沢萠さんの小説には、違った難しさがあると思います。
    『海の魚・空の鳥』という短編集を選んだのは、一番最初に収められている「グレイの層」という小説を、高校時代、国語の時間に勉強して衝撃を受けたからです。
     このお話では、プロポーズを受けた女性がそれにどう答えるか、電車の中で自分のこれまでの人生を思い返しながら考えます。自分が今まで歩んできた、そしてもし今結婚すればそのまま歩み続けるであろう人並みな人生と、ここで違う選択をした場合に得られるかもしれない、普通とは違う人生への可能性。車窓をバックに思い悩む主人公の姿がずっと描かれるなかで、ふと入ってくるプロポーズの相手のセリフと、そして一瞬変わった車窓を目にして、主人公の心が動きます。
     初めて読んだとき、私は呆気にとられました。最初に書いたような「難しい小説」ではありません。教科書でも文庫本でも、ほんの数ページで終わってしまいます。
     過去を振り返る主人公が丁寧に描かれていたのが、急にさらっとした描き方に変わって、そして強烈な余韻を残して終わります。全体のお話ではなく、その人の心に注目しているからかもしれません。すごく躍動感のある写真を見たときのような、物足りないというわけではないのだけれど、そのちょっと先を見たくなるような、想像力を掻き立てられる終わり方です。
     この一冊には20編の作品が収められています。主人公の性別も、年齢もばらばらですが、少し前の自分を思い出したり、向き合ったりするところでほんの短いお話なのに登場人物がどんな人かを窺い知ることができます。ほんの数ページなのに、長い小説を読んでいるような厚みを感じることができます。でも今については最小限。読んだ後にそうだよな、と共感したり、それで良いのだろうか、自分だったらどうだろうと考えたりするお話ばかりではありません。何が、どこがきっかけでそうなったんだろう、とよく分からなくて何度も読み返したお話もいくつもあります。
     まるで本を読んでいるというというよりは、実際に登場人物について、もしかしたらその人自身と話をしているかのようです。それだけに、理解できないと悔しくて、この人はどういう風に考えたんだろう、どういう風に感じていたんだろう...と考えさせられます。
     作品を一つ読むごとに、もっとこの人についてわかりたい、新しい人に出会いたい、と思う、そんな本です。

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著者プロフィール

鷺沢萠(1968.6.20-2004.4.11)
作家。上智大学外国語学部ロシア語科中退。1987年、「川べりの道」で文學界新人賞を当時最年少で受賞。92年「駆ける少年」で泉鏡花賞を受賞。他の著書に『少年たちの終わらない夜』『葉桜の日』『大統領のクリスマス・ツリー』『君はこの国を好きか』『過ぐる川、烟る橋』『さいはての二人』『ウェルカム・ホーム!』など。

「2018年 『帰れぬ人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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