冷静と情熱のあいだ Blu (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043599011

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに読み返したけれど、またしてもあおいの物語の次に読んだ。そしてまた、出会った日のあおいを、もう一度読んだ。
    順正は、この10年で何か変わったのかな…変わっていないんじゃないか、ということが、何だか切ない読後感になった。

  • 過去が過去になりきらない。そんな冷静と情熱の間なのかな。
    彼がわの視点から読むとまた一味違っていて.

  • Rosso読んでから読んだ。
    ふたつ合わさって一つの作品ですねえ。二人が遠い場所にいても思い合っていたこと、Blue読みながら重ねていくのが面白かった。やたらおんなじこと何回も言うやんと思ったけど順正の想いの強さの表れですね。好きって200種類あんねん。

  • 過去と未来の苦悩。
    そして修復師という仕事。
    そして忘れられないかつての恋人。

    bluのこの伏線がつまっている感じが
    昔も今も好き。

    冷静と情熱のあいだには何があるのだろう。



    10年以上も前に読んだ本だけれど、
    この文だけははっきり覚えている。


    何があるのか未だにわからない。



    ただ真剣にお互いを愛し合い、

    少しお姉さんだけれど、
    自分の思いをなかなか口にできなく
    ときに待って欲しいと思うあおいと

    少し熱くなりやすいところもあり
    でも好きという気持ちが溢れている順正。


    男と女の交れない、
    でも求め続ける気持ちと
    人を愛する喜びを教えてくれる本。



    あと、
    自分が出産して思うのは
    流産してしまう悲しみと
    生まれた子が祝福されない悲しさ。

    男の人と感じ方は違うかもしれないけれど、
    女性ならば、おそらく一生無念に思う出来事だと
    思った。

  • 2022.4.26 3-4回目の読了。
    辻仁成の文体はあまり好みではないけれど、内容が好き。
    江國香織の『冷静と情熱のあいだ』は文体や雰囲気がとても好きだが、泣いてしまったのは実は辻仁成の方。

    この作品は是非、江國香織→辻仁成の順で一章ずつ交互に読んでみてください、当時そのように連載されていたそうです。結末も変わります。
    ちなみに映画もお薦めです、イタリアに行きたくなります。主演は竹野内豊、ケリー・チャン、他、ユースケ・サンタマリア、篠原涼子等。
    作品名と同じ、葉加瀬太郎の『冷静と情熱のあいだ』も有名ですが、RossoとBluでそれぞれサウンドトラックアルバムも出ています。

    羽根木公園に梅を見に行きたい。

    以下、抜粋のシーンが特に印象的で好き
    p.45
    「みんなでこれからパーティーをしよう」
     ぼくが笑顔でインスーと芽実に持ちかけた。三人は初めて意見が一致し、早速その準備に取りかかった。
    「ところでこれはいったいなんのパーティーですか」
     インスーが芽実にも分かるよう、片言の日本語で質問した。
     ぼくは冷蔵庫を漁りながら、今日は昔の恋人の誕生日なんです、と早口のイタリア語で答えた。芽実が、えっ何、と聞き返したが、インスーは苦笑いをしているだけだった。
    ▷なんてひねくれた性格をしているんだろう!そんな純正の若さと女々しさに私も苦笑いしてしまう。

    p.104
     芽実と父親とは、血がつながった親子なのにもかかわらず、会話が成りたたなかったのだった。芽実も父親もカタコトの言葉で挨拶をしたが、それぞれの思いを言葉にしようとすると相手がそれを理解できなかった。芽実はイタリア語がまだ不十分で、父親はもうすっかり日本語を忘れてしまっていた。父親は僅か数年の日本滞在なので仕方がない。十数年の歳月が流れているのだった。芽実もその瞬間はじめてイタリア語を真剣に勉強しなかったことを後悔しているようであった。
     二人はそれぞれの思いを胸に秘めたまま、別れることとなった。言語が通じないせいで芽実の落胆はいっそう増してしまった。僕が通訳をするのにも限界があった。通訳をしなければ通じ合えないことのショックはまず芽実を襲い、彼女を失語症のように無口にさせてしまった。父親が呼ぶ芽実の名ばかりが、朝のせわしないホテルのロビーでいつまでも響きつづけては、虚しくぼくの耳に絡みついてきた。

    p.142
    ぼくたちは特にすることもみつからないまま、羽根木公園を散歩した。かつてあおいと並んで歩いたこの公園を今ぼくは芽実と並んで歩いている。フィレンツェよりも東京の方が空気が重い気がするのはぼくだけだろうか。そのことを芽実に聞くのを躊躇った。
    ▷実は一番残酷だと感じたシーン。

    p.231
     ようやくクーポラの上に出た時、待ち受けていたのはフィレンツェを横切る春の風で会った。ああ、と思わず声が出た。三百六十度、見渡すかぎりの開かれた景色がそこには広がっている。迷いのトンネルを抜け出すことができた後に、この景色が自分を待っていてくれたことに随分と救われ、安堵のため息が溢れた。

    p.238
    夕日に彼女の顔が赤く染まっている。こんな時でさえフィレンツェと言う街は、相変わらず静かな時間の流れの中にあった。自分の人生においてこれほど重大な出来事が起こっていても、ドゥオモの頂上は世界で一番呑気な風が吹いていた。

    p.258
    駅構内にぶら下がる超特大の時刻表掲示板を見あげる。一番速い列車は十八時十九分発のユーロスター(国際特急)だ。それに飛び乗れば、ミラノに到着するのは二十一時丁度になる。あおいの乗ったインターシティよりも十五分早く着くことになる。十五分、たった十五分だが、ぼくは未来を手に入れることになる。まだ間に合うのだ。

    今度フィレンツェに行くのでドゥオモはもちろんアルノ川、ポンテヴェッキオ橋を見て来ます。楽しみです。あおいの住んでいるミラノにも行ってみたかった。

  • Rosso、Bluと20年振りに読み直しました。
    あおいの物語よりも男性視点から描く順正の物語が同性として理解でき楽しく読めました。

    最後の描き方もROSSO よりBluの方がシーンを想像しやすく好きでした。

  • ROSSOの方が良かったのは、私が女性だからかも。
    でも、両方読めて良かった!

  • 最近映画を見て原作を読みたくなり購入(中古で)。
    映画も順正目線でストーリー展開していたような。
    ずっと思い続ける人がいる。さみしさを埋めようと新たなヒトと付き合ってみても、心がなければ虚しいだけ。ヒトを振り回していただけ。主人公たちの想いは美しい反面、その気持ちを隠した点で罪深い。芽実とマーヴの一途な想いが痛々しく、せつない。

  • イタリアの描写が素晴らしすぎて、ロマンチックでかっこよくて、、当時高校生だった私に強烈な憧れをもたらした小説でした(о´∀`о)
    このBluと、対の江國香織さんのRossoに多大なる影響を受けて、大学の卒業旅行でイタリアに向かい、ミラノとフィレンツェを堪能し、もちろんドゥオモに登りました!!
    むしろ現実にみたイタリアより、小説の中のイタリアに美しいイメージがあり過ぎて、小説の中のイタリアに今でも飛んでみたい。。。
    SNSがここまで発達していない頃だったからこそ、10年間のすれ違いが、もどかしくじれったくなるのか、、。10代だったので、30歳を迎える大人は、こんなにも色々抱え込んで、意地っ張りで、かっこつけなきゃいけないのかぁ、、とか、それでも最後に電車に飛び乗るような激しい恋情があるんだなぁとか、自分には届かない、大人の男女に憧れを抱いたのもこの小説でした。
    実年齢を超えてみるや、、いやいや現実はって感じですが(笑)
    順正の、丁寧な修復の仕事の様子がまたリアルで、芸術の街であることが文中からもすごく伝わります。
    描写の美しさが圧倒的で、読んでいる端から頭の中に街並みが空想できるのがまた楽しい。
    ミスチルなんか聴きながら読むと、ずーっと小説の世界に飛んでいられます。
    順正視点のBluの方だけ読むと、主人公結構ひどい男ですが(^_^;)
    10年後にドゥオモで再開しようという約束、終盤に向かうにつれて読んでいるこちらが緊張する程の期待感。
    そして、いらない大人の冷静さで再び別れるのかと思いきや、最後のページでの情熱的な行動。。
    まさにタイトル通りです。
    10代の頃は憧れ、30代の今読み返すと羨ましいなーって羨望を混ぜつつ、楽しめる恋愛小説です。

  • Rossoと一緒に購入。Bluを先読みしました。
    初辻仁成作品。

    恋愛小説としてはベタなテーマ設定、展開ながら、
    舞台がイタリアだったので旅のような気持ちで読むことが出来た。
    修復士という役職も初見で、単純にイタリアへとても行きたくなった。

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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