疾走 下 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043646036

作品紹介・あらすじ

誰か一緒に生きてください-。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人-。人とつながりたい…。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。

感想・レビュー・書評

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  • あまり、重松清さんらしい作品ではないと感じました。
    暗い話だったけどどこか心に残る気もします。
    いつものようなあたたかい気持ちになる本が好きな人は好みじゃないかもしれません。

  • 中谷美紀さんのエッセイの中で、「疾走」の台本が~、と書かれていて気になっていました。しかし、この表紙はなんとからならないものか。「よまなくちゃ」と思っていても、なかなか手が伸びなかったです。

    中谷さんの配役は、、、そう。アカネさんでした。
    どんな演技をされているのでしょう。
    気になります(が、その他の配役を見て、これはだめだ、と)。
    観ないと思います。ごめんなさい。

    読み終えて。
    みなさん言われるように、重くて暗いです。
    でも、本人も、エリも、悪いでしょうか。
    その立場に置かれて同じ人生を歩め、といわれたらどうでしょう。
    もっと悲惨な結果になったかもしれません。

    寂しい。人とつながりたい。
    そう思って、苦しんで。

    海外の書籍になりますが、「ザリガニの鳴くところ」、読まれましたが?
    誰も助けてくれないのです。
    自分で解決するしかありません。
    (社会も、法律も守ってくれない。逆に足かせになることもあるかもしれません=そんな意味でいっています。人間だってただの動物です。)

    でも、人間以外の動物たち、自然も、みんな自分で解決しています。
    自分で解決して、そのペナルティが課される、それが人の社会です。

    無茶ぶり、ダークな世界があって、それが隠されています。
    闇が口を開け飲み込もうとしています(最近、特に感じるのです。こわいです。そんな本ばかり読んでいるからかな? でも違うとおもいます)。

    +++

    繋がりたい。
    そう思うことは全く自然であるし、当然のこととおもいます。
    この本では牧師さんが出てきます。
    彼の存在、ひまわりの存在は大きかったと思います。
    宗教は心の支えになっていくものだ、と思いました。

    日本の他の宗教はどうなのでしょう。
    そこまで心の支えになっていないかもしれません。
    それが宗教離れにつながっているのだともおもいます。

    キリスト教は・・・
    どうでしょう。こうした救いの面は素晴らしいです。
    でも、闇が深すぎると感じます。
    ワシントンDCが何たるや、大量の金塊をどうやって入手したか、アドレノ◯◯◯ 。
    DCがいま、どうなっているか。
    報道されないのは、知らせたくないからにほかなりません。

    (訂正)
    > 闇が深すぎると感じます。
    そんな甘いものではなかったです。知らないほうが幸せかもしれません。
    https://booklog.jp/item/1/B09MSM7SQC

  • 痛い…痛すぎる…(༎ຶ⌑༎ຶ)



    この手の小説は、読んでいてとても辛い…。
    苦手分野です。

    15歳の少年シュウジが背負った運命が辛すぎるお話です。

    彼の住む干拓地がリゾート計画で変わってしまうのと同時に、優秀でプライドの高い兄が犯罪に手を染め、家族が崩壊していく。

    干拓地の教会で聖書を手にして以来、聖書の言葉が引用されながら話が進みます。

    中学生になったシュウジは兄の犯罪が原因で、学校で酷いいじめにあいます。

    ーーーーー

    おまえは思い出す。いつだったか、あの頃はまだおまえの「親友」だと言っていた徹夫と、教会の講話会で教わったことを話したのだった。
    「孤立」と「孤独」と「孤高」の違いについて、だった。
    仲間が欲しいのに誰もいない「ひとり」が、「孤立」。
    「ひとり」でいるのが寂しい「ひとり」が、「孤独」。
    誇りのある「ひとり」が、「孤高」。(中略)
    おまえは、まだ自分の「ひとり」が三つのうちどれに当てはまるか、わからないでいる。
    (本文より)

    ーーーーー

    誰かと繋がっていたい。と思ううちは孤独です。

    社会から孤立した時に思い出しそうな言葉。

    神父には弟がいて、人を殺した犯罪者です。
    弟が、シュウジに会いたいと言ったのです。

    シュウジは空っぽの彼を見て衝撃を受けます。

    ーーーーー

    「俺たちは、同じ、だ」
    (本文より)

    ーーーーー

    自分の恋人一家を殺した弟は、からっぽの、穴ぼこのようだった。

    多感な年頃の中学生には影響が強すぎる…。

    弟が言った言葉も描き方が秀逸。
    魂の宿っていないセリフということが読んでいて伝わってきます。
    痛い…(T-T)


    まさに「疾走」というタイトルがピッタリ。

    過酷な人生を駆け抜けた少年の、衝撃のラスト。

    いつまでも心に残る作品だと思います。

  • 良かった。

    全体的には最初から最後まで重くて暗いトーンで物語は進んで行きますが、後半には雲の切れ間から日が射すような暖かい気持ちになれます。

    重松清さんは本当に思春期から青年時代の心理描写を描くのが上手いと思います。

    オススメです!

  • やっぱり重いなぁ
    出てくる人たち概ね不幸(・_・;

    性的描写ちとキツイ...

    これでもかぁ、これでもかっ!ってくらいにどんどん落ちていく感じです。
    誰かと繋がっていたいというシュウジ、あたしんとこ来い!

    正直、好きなお話ではありませんが、すごく印象的でした。

  • 目を背けたくなるような描写のなか、シュウジがほんの僅かでも救われることを願いながら読みました。
    よく人が“堕ちていく”と言うけれど、シュウジはこの物語の初めから堕ちていたと思います。タイトルのあらわすように“疾走”だったなと思います…。

    最初から最後まで苦しいけれど、シュウジのような、それよりも苦しい人生も必ずどこかにあるんだと思うと行き場のない悲しみを感じる。

  • この作品は今まで読んできたものとは違う まさしく衝撃作でした。
    伝えたい事はよくわかるのですが、性的な表現や暴力的な表現がきついので、読んでいて辛くなりました。
    読み始めの頃に映画化もされていることを知り、DVDも買ってしまいました。
    今は観ようか 迷っています。
    次は 少しほのぼのとした作品を選んで読みたいと思います。

  • 読み終わった。そっか、こんな最後だったっけ。
    シュウジという少年が背負わされた過酷な運命を、私も共に駆け抜けた。誰かとつながりたい、ただそれだけのことなのに、どうしていつも私たちは「ひとり」でしかいられないんだろう。シュウジも、エリも。もどかしくて行き場のない気持ちが溢れ、苦しくて苦しくてしかたなかった。「ひとり」と「ひとり」が一緒に生きるって、こんなに難しいことなのか。
    読み終わったあとは、それこそ全力疾走したかのように疲労し、息切れしていた。当時、私の世界はここから一変したのだ。

    「シュウジ、遠くの町に行っても、これだけは忘れないでください。あなたの憎んだふるさとの片隅の小さな庭に、ヒマワリが咲いていることを。その花は、いつも太陽のほうを向いている、ということを」

    送り出すときに神父さんが言ってくれたこの言葉の尊さを思う。誰かが待ってくれているということは、きっと想像を遥かに越え人間を強くする。
    シュウジは自分の生を一生懸命に生きた、生き抜いた。それは確かなことだ。
    ふるさとでは、今年もまたヒマワリが咲いていて、生が続いている。失われない命がきらめいている。

    「伝道の書」第一章。
    世は去り、世はきたる。
    しかし地は永遠に変らない。
    日はいで、日は没し、その出た所に急ぎ行く。
    風は南に吹き、また転じて、北に向かい、
    めぐりにめぐって、またそのめぐる所に帰る。
    川はみな、海に流れ入る、
    しかし海は満ちることがない。
    川はその出てきた所にまた帰って行く

    なんだか「生きるってなんだろう?」「死ぬってなんだろう?」「どうせ死ぬのにどうして生きなきゃいけないんだろう?」とか、そういう原点に立ち返るような素朴な疑問を、ひさしぶりに思い出した。
    たとえば俳優の彼は、どうして自死を選んだのだろう。
    順風満帆な仕事、充実した私生活、容姿端麗。才能に溢れ未来も明るい恵まれた人生に思える。いったいなにが彼の心から光を奪ったのだろう?彼はずっと「ひとり」だったんだろうか。
    考えても答えがわからないことを、それでも考え続けたい。彼が生きた証、命のきらめきを、私はぜったいに忘れない。

  • うわああああああ、きつい。
    全部通してとってもきつい作品でした。すごく闇が深い!

    友達とキャッキャ戯れるお兄ちゃんの後を追っかけ回す純粋な子どもだった時代からの没落。沼にはまり込んでもがいても抜け出せない。そのうち抜け出すことを諦め沈んでいく足元を眺めるようになってしまう。

    どうして誰一人として隣に並んでくれる人がいなかったんだろう。
    特に両親がね。
    神父さんは別枠なんだろうな。ただそこに在る人として必要な大人。

    ただひたすら人と繋がりたくて、隣りにいてほしくて、故郷に帰りたかった。
    切なくて苦しいです。
    最期にエリちゃんを悪者にしないで故郷で撃たれて亡くなったのが、彼にとっては本当に救いだったと思う。

    最後の章はよかったー!
    キラキラとしてて泣いてしまいます。

    ものすごい人間くさい救いのない小説でした。(褒め言葉)




    @手持ち本

  • 初めて読んだときの衝撃たるや・・・
    しばらくほかの本を読めなかった。
    ほかに移る前に連続で4回読み返したかな。
    それくらい繰り返し読んで消化しないといけなかった。

    重松作品にはそれまで
    「いろんな困難はあるけれど、最後はあたたかいんだよね」みたいなイメージを
    もっていたので・・・こんなに残酷なことができる人なのか!と怖くなった。
    でも、まったく救いがない中でも、
    たしかに重松作品だなと思うフレーズがたくさんあって、
    かなり影響受けたと思う。

    二人称で語られているのも、めちゃめちゃ合うんだよな。
    「おまえ」って言われると自分に言われているような気になるというか、
    自分も苦しくなってきて本当にしんどい。
    大人に振り回されてしまうシュウジ。
    「幸せになるために人は生まれ、生きていくというのなら――
    その「幸せ」の形を見せてくれ。ここを目指せばいいんだ、と教えてくれ」
    まだ子どもなのに。。。やるせない。
    子どもだからやっぱり限界はあるし、逃げても逃げても檻の中で、
    それを上から見ているかのような語り手が「おまえ」って語り続ける。
    すごく残酷。

    ずっと息苦しくて、
    読んでいる間はまさに「疾走」しているかのような感覚だった。
    (こんなに秀逸なタイトル・・・)
    最初怖いなと思っていた表紙も、
    読み終えるころにはいとおしく(?)思えてきてしまうくらいに。
    はぁ、しんどかったな。

    「わたしはエリのために祈ります。シュウジのために祈ります。
    災いや不幸せをとりのぞくためではなく、二人が、
    災いや不幸せを背負ったままでも前に進めるように。
    いや、前に進む必要すらないかもしれない。
    立ち止まっていても、うずくまっても、
    体を起こす気力すらなく寝そべっていたってかまわない。
    ただ、絶望しないでほしい。
    わたしが祈るのは、ただそれだけなのです。」

  • 表紙のインパクトも凄いが、内容もかなり重い。
    やりきれない気持ちで読み進めた。
    重松さんの作品は、いつもあたたかい気持ちになるものが多い中、こんな作品も書く作家さんなんだと驚いた。
    おすすめ。

  • 読み終わったあと、何を感じるだろう?

    たった15歳のシュウジを絶え間なく襲う悲劇。加えてアカネやエリ、みゆきの話まで加わって、上巻以上の破壊力。クライマックスも決してハッピーエンドではない。だが私には希望が感じられた。

    「ぼこぼこ、あなぼこ」を求めたシュウジ。でもそれは絶望ゆえのことであり、本当はそうではなかった。「おまえ」と語りかけていた者の正体がわかったとき、そして「ひとり」が「ひとつ」になったとき、あれほど不平等だったシュウジの人生が報われた気がした。ラストは不覚にも涙してしまった。文句なしの大傑作だ。

    追記:作品の趣旨を壊してしまうことは承知で、いつの日か重松氏に「最後にもしシュウジが転ばなかったら」というアナザーストーリーを書いていただくことを切望したい。

  • つらい。
    きつい。
    苦しい。
    死にたい。
    重い言葉ばかりが浮かんでくる物語ではあるが──
    やはり私は、この小説を多くの人々に読んでもらいたい。
    何故なら。
    どんなに苦しくても、最後には希望の光があなたを包んでくれるはずだから。

    「いつか……走れるから」
    「いつか……走ろう、二人で」

    重松清。数多の涙する名作あれど。
    この作品は作者自身がわが身を削るような思いで、書ききった名作だと思う。

    珍しい二人称の語りでの文章。
    でもこの物語は、一人称でも、三人称でもここまで心に届くような作品にはならなかったはずだ。
    二人称の「シュウジ、おまえは──」というような語り口だからこそ、心に響く物語。

    すさまじいまでの迫力で、悲惨な現実が少年シュウジをどこまでも追い詰める。
    弱者が、これでもか、というほど虐げられる。
    途中までは、ある意味、映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の悲惨さと遜色ないかもしれない。
    つらすぎて、読むのをやめたくなる人もいるだろう。
    それでも──
    最後まで読んでほしい。
    シュウジの命を懸けた懸命の走りを、最後まで追いかけてほしい。
    最終ページでの神父の言葉の意味を深くかみ締めてほしい。
    それが分かれば、誰もが涙を浮かべるだろう。
    それは哀しみの涙ではなく、感動で体が打ち震えるときにあふれ出る涙だ。
    その言葉がそれまでの悲惨さを全て吹き飛ばし、未来に希望の持てる物語に一変させる。

    個人的には、あまりに読むのがつらすぎて好きな傾向の作品ではないはずなのに、読み終えた後、感動の涙がとめどなくあふれ出た。
    しおれ、枯れ果てぬばかりになっていた花に、
    その涙の雫がこぼれ落ちたことで、再び花が生気を取り戻した。

    本物の小説家、重松清の真髄を見せつけた不朽の名作だと思う。
    こどもを主人公とした多くの名作を出し続けている重松氏だが、
    小説家としての素晴らしさは、やはり
    「その日の前に」「君去りしのち」や「カシオペアの丘で」などの、生と死に真っ向から向き合う作品でこそ、彼の真髄を発揮するように思える。
    彼が小説家になるために師事した、早稲田の(あれ? 名前忘れちゃった。平岡先生でしたっけ? たぶん)平岡篤頼教授が
    「重松君。物書きは、やはり長編を書けなければだめだ」
    と諭されたという話をどこかで聞いた記憶があるが、師匠からの叱咤は、彼の心の中にしっかりと刻み込まれているはずだ。

    この作品を「最後まで救いのない物語」と感じた方のレビューを読んで、
    最終ページの文章の意図するところをどう理解したのだろうかと気になった。
    それが分かっていても「救いのない物語」と読んだのであれば、返す言葉はないけれど。
    もちろん、小説の読み方は人それぞれ、正解などないことも分かっているけれど。
    それでも、最終ページの神父の語りをもう一度だけ読んでほしい。

    そして、シュウジ。
    最後の最後だ。
    聞こえないか? シュウジ。
    我が家の玄関前の、なだらかな坂道をのぼってくる足音が。
    かけっこが得意な望に付き合って家の近所を一回りして、望よりずいぶん遅れて、いまゴールイン間近のひとの足音が、シュウジ、おまえにも聞こえないか?

    ここから最後の一行までの語りこそが、悲惨な話としてそのまま終わらせないために、重松氏が渾身の力を振り絞った文章のはずだから。
    (不覚にも私は、この数ページ前から涙が止まらなくなった。そして、ラストまで読み終えて「そうか。シュウジ、良かったな」と、目の前になどいないはずの彼の肩を優しく叩きたい気持ちになった)

    ブクログ様、すみません。
    「グレイメン」読まずに、こっちのレビューを書いてしまいました。申し訳ない。
    でも、まだ二週間あるから、ご勘弁ください。

    • ウエッチさん
      すごく共感しました。
      当時、重松さんを追っかけのように買っては読み、していましたが、この作品は買ってから読み出すまで半年以上かかった。そして...
      すごく共感しました。
      当時、重松さんを追っかけのように買っては読み、していましたが、この作品は買ってから読み出すまで半年以上かかった。そして苦しみながら読んでいくと……、まぁあんな泣くかっていうぐらい泣きましたね。
      本当に一人でも多くの方に読んでほしい作品です。
      2012/06/30
    • Nさん
      だいぶ前にこの本の私のレビューにコメントを頂きました。ありがとうございました。この作品には辛い描写がたくさんあり、絶望の中をまさに疾走する作...
      だいぶ前にこの本の私のレビューにコメントを頂きました。ありがとうございました。この作品には辛い描写がたくさんあり、絶望の中をまさに疾走する作品のようで、そして希望の本であると思います。疾走にて共感する所が多々あったので、koshoujiさんに是非、天童荒太さんの「悼む人」を読んでいただきたいです。あれも、悲しみの末の、希望の話です。
      2013/08/11
  • 怖いではなく、恐ろしいとも言えない、気持ち悪いとも表現できないような本だった。
    人間の本質がありありと書かれている。


    両親はシュウイチもシュウジのことも愛していなかったし、何も見ていなかった。

    上巻は何にも救われないまま、ただただ堕ちていくだけだった。
    まだ中学生のシュウジが環境がすさんでいくにつれて、物事を深く考えるのをやめ、すぐにあきらめるようになっていくのが読んでいて辛かった。

    穴ぼこの目になろうとしているのも、すぐに「死ぬぞ」というようになったのも、耳をぼやけさせるようになったのも、15歳の子供がやることとは思えなかった。


    重松さんの本を初めて読んだため、このような感じの本が多いのかどうかわからないが、すごく恐ろしくなった。

    この本は世の中の厳しさを表している本でもあると思う。
    読者には決して夢など見せず、ただただ現実を突きつける。
    特にシュウジが新聞配達を始めた際の、オーナーとトクさんがそうだと思う。オーナーのずる賢さというか、自分より立場の弱い人間に理不尽なことを言い、お金を分捕る。
    トクさんは、味方だと思わせて安心しきったところを狙う。
    15歳という若すぎる年齢で働くということはこういう目に合うのもおかしくない。
    これが社会の現実なんだ。
    だんだんと壊れ、シュウイチのようになっていくシュウジは見ていて本当につらかった。環境というものはすべてを左右する。

  • 重松清さんの著作は本棚に23冊ありました。好きな作家さんです。重松清さんの作品は読後感が良く、なんか勇気づけられたり、涙が出るような作品が多いように思います。たった23冊で早計な意見かもしれませんが。そんな認識を持っている私にとっては、この作品は異質なものでした。登場人物の全員が、幸せとは言えない、胸が苦しくなります。過激な性描写に目を逸らせたくなります。ただ、新しい命が生まれることに救いを感じました。改めて著者の守備範囲の広さ、懐の深さを認識させてくれる作品でした。

  • この町にいても嫌な未来しかない。主人公シュウジは町を出た。大阪で性と暴力に溺れ、ヤクザを殺す。東京でずっと会いたかったエリに会い、その叔父を刺す。エリと共に元の町に帰ったものの警官に射殺される。

     誰か一緒に生きてください。強い「ひとり」に憧れ、それを目指したからこその言葉だろう。強く胸に響いた。結局何一つ報われることは無く、まさに煉獄の道のりを走り続けたシュウジ。
     シュウジがこの世に作り出した命。シュウジの子「望」。最後の場面でこの子とエリが元気に走り回る姿が描写されており、初めて心温まった。しかし、「伝道の書」に書かれた一文「この世に生れ落ちるよりも流産して闇に消え去った方が幸せだった」を頭に思い浮かべてしまった。心が暗くなった。

  • 15歳になった少年・シュウジの人生は、相変わらず悪いほうへとしか進まない。
    兄の放火事件をきっかけに一家離散に追い込まれ、故郷を捨て、ひとり東京へ向かう。

    「感動のクライマックス」という触れ込みの下巻だが、感動というには違和感がある。
    後味は決して良くはないし、読み返したいとも思わない……けれども、やはり重松清の文章力(さり気ないのに、グイグイ惹き込まれる)は圧巻。

  • 駆け抜けて、最後苦くてあったかい余韻を残してった。重松さん、やっぱ好き。

    シュウジはずっと「ひとり」だと自分を思ってたと思うけど、私はシュウジの人生を外野からのぞいていて、色んな人を救ってたし救われてたと思うよ。
    アカネに子どもっていう生きがいを与えて、エリも救って...逆にアカネに救われて、エリを生き甲斐にして、神父に見守られ、みゆきに助けられ...「ひとり」同志支え合って生きていたと思う。本当に「ひとり」なんてこと、ありえないんだと思う。

    ずっと語り手が誰か気になってた。そっかーー、まぁそうしかないかぁ、最後に少しでも救われてよかった。

  • 上巻のあまりの救いの無さに心を「からっぽ」にされた状態で下巻を読み始めた。
    下巻は話の展開が速くなり、奈落の底に向かって「疾走」していく感じ。安易な希望は無いだろうと思える展開なので、より一層「からっぽ」になった心で読んだ。
    少年と少女はよくがんばったよ。
    こういう過酷な運命に翻弄されながらも懸命に生きている子供たちが世界のあちこちにいるんだろうなと思った。
    もう一度手にとれそうにない重い一冊でした。

  • 重松作品こんな最後は初めてかもしれない
    これで良いのか
    と、思ってしまった
    家庭崩壊、もっと酷い現実もあるかもしれない
    最後まで不幸だった主人公
    主人公自身はそうは思っていなかったかもしれないが
    そういう人生を歩んでいる人は、世の中に数多くいるかもしれない
    作者はそのことをあらためて読者だけではなく、多くの人に知らしめたいと思ったのだろうか

  • 後半重かった。人間は結局ひとり。

  • 悲惨な青春を疾走した、一人の少年の物語。
    重松清ってこんな物語も書くのか、と思わざるを得ない小説。

    孤独、孤立、孤高、いろんな「ひとり」を抱えながら、生きるにんげんたち。
    絶望の中で生きる時、誰かに寄り添ってもらうわけでもなく、助けてもらうわけでもない。
    「ひとり」で向き合うことを強いられるリアルは、心がズシリと重くなる。

    終始暗くてどうしようもない内容なのに、田舎の夏の夜みたいな、カラッとした力強さと切なさが漂う文章で、読んでいて寂しくはなかった。
    常に誰かが寄り添ってくれているような気がするのは、主人公を「おまえ」と乱暴に呼ぶが、どこか愛しさを含む第三者による語りで、物語が進んでいったからなのか。

    どうしようもない、助けようがない、助かりようがない中で、あの終わり方。私は気に入った。光がさしたな、と思う。救いがないという人もいるだろうが、あれこそ主人公にとっての救いではないかと思う。

    「ふたりでいてもひとりとひとりだから、ほんとうは、ひとつのふたりになりたいんだ」

  • 多分、一番初めに読んだのは高校生の時だと思う。
    あの時は衝撃的すぎて、面白かったけどこの本の本質をちゃんと捉えられてるのかな?って思ってた。

    心に引っかかりながらも生活しているうちに、この本の存在をすっかり忘れて、この前Instagramの投稿をみて、あったね、重松清さんの重い本!って思い出した。

    そろそろちゃんと読めるほど、自分も成長したんじゃないか?
    そう思って、もう一度読んでみようと思った。

    結果、高校生の時と同じく、やられたわ。

    タイトルの如く、読んでる最中は息を止めるように、疾走するみたいに読んで、本を閉じて後、あまりの無力感に悔しさが込み上げてきてボロボロ泣いた。
    神様、あんまりじゃないか!!
    シュウジが兄貴ではなくお兄ちゃんと呼んでいるところも、幼さを切り取っているようで、その響きに泣ける。

    孤立
    孤独
    孤高
    でも、誰かと繋がりたい願う、にんげんの柔らかさ、渇望が描かれた、素晴らしい作品だと思う。

    きっとまた、手に取ってしまう本だな。

  • 上下巻読んだ。
    つらい。
    ほんの少しのことで人生はどんどん転がり落ちていく。いちど転がり始めたら加速して止められない。
    主人公はそんな現実から走って逃げてふわふわと浮かんで消えたかったのかな。

  • 重い。ひたすら重い。
    中学生がこんな体験していいのか。

    文章や、語り口、物語の進行がうまくてどんどん読めた。


    重いが読後の嫌な感じはない。

  • 読了日2009/10
    少し前に、一度、読みかけたけど、あまりの暗さ重さに途中で読むのをやめてしまってた本。
    ほんとに暗くて重たくて、今までで一番つらい物語でした。
    今回は最後まで読みました。
    かなりの長編の中、延々とこれでもかこれでもかと次から次に不幸がシュウジに圧し掛かってきます。
    この、インパクトある表紙の絵のように少年は「絶望」「ひとり」から疾走して逃げる。
    でも、逃げきることができず、誰も彼を助けることができず、次第にからからからっぽの穴ぼこの 目になっていく。
    こんな、悲惨な重い人生があるのか・・・。かなりショックを受けました。
    10代でこの本に出会っていたら、また感じ方違ったかな。
    今の私だと、やっぱり親の立場、大人としてみてしまうので、どうしてシュウジを助けてあげれなかったのか、そちらのほうに感情移入して、とても悔しく思いました。
    最後までシュウジは幸せになれなかったけど、これでよかったと無理やり終結させられたような・・・
    「これでいいわけない!!!」と叫びたくなるラストでした。

    でも、ゆいには、ぜひ、10代で読んで欲しい本のうちの1冊でした。

  • 少年の「疾走」に胸を震わせた。

    すさまじい勢いで駆け抜けた彼の人生に涙を禁じ得ない。そして彼とともにうまく人生を歩くことのできなかった少女。

    辛く悲しい読後感だった。作者の狂気に胸を切り刻まれた。

  • 読み終わった。
    レビューが書けないほど打ちのめされたのは初めてだ。
    自身で読んで欲しい。感じて欲しい。

  • とてもいい終わり方だと思う、重松清らしいといえばそうかもしれない。すごく残忍だったけど優しい男の子の話だった

  • 20140308再読了。
    (上)では読むことを勧めたけど、誰もが読んでいい本ではありません。
    描写のキツい所もあるし。
    でも、読んだ後に何も感情を起こさない人はいないはず。
    誰もが弱い人。
    人は誰もが弱い人だから。
    小説の中の話ではありますが、その後を書かれた人、書かれなかった人の幸せを願ってやみません。

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

重松清の作品

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