海の向こうで戦争が始まる

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1372
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061316508

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  • 海辺で出会った女が僕の目に映る町を見て、海の向こうの町の3人の少年、大佐と愛人、若い衛兵、洋服屋の物語が始まる。それぞれの不満、恐怖から戦争へなだれ込み、すべてが一掃され物語は終わりを迎え、一日の日が沈む。最初、祭りの熱狂と興奮に沸く人々を冷めた目で見るマイノリティの普段の日常やら葛藤とか混沌とかそんな感じかと思ったけど、突然の?待望の?戦争によってそんな簡単なものではなくなってしまった。解説のとおり、「戦争は人間の文明にとって老朽化という不可避な現象を防ぐための唯一の手段」として、この物語をみると確かに、各々の物語のキャストがみな戦争によって死んでいるので、欲望の実現ではなく、文明の刷新なのだろう。ハッピーエンドでないところが現実的であるし、町を見るのをやめた僕と女が何事もないように明日の約束をするのも、日常的な現実のひとつなのだ、気にすることはないと訴えているようでもある。

  • 海辺で出会った男女が遠い島影を眺め、
    その島で起きている、
    あるいはこれから起こるかもしれない事件について
    空想を巡らす。
    薄っぺらな語り手による超リアルで濃密な「遠くの街」の描写。
    一読して、
    対岸の火事を酒の肴にする悪趣味な有閑階級への批判なのかと
    思ったが、実は深い意味などないのかもしれない。

  • 限りなく〜にあった、活字だけで吐き気を誘うようなグロテスクさはないものの瞳の話とその男の話の対照がなんともいえません。

  • 村上龍は時折読点で一文を長く続ける、まるで長いワンカットのシーンみたいな文章を書くことがあるけれど、この小説はまるでそれをそのまま全体の作品にしたみたいだ、夢の中にいるように、気づくと違う場面になっている印象だった、とても写実的で、"don't think, feel"というか、"don't think, imagine"という感じで、とにかく移りゆく場面を想像する、深く考えない、そんな作品と感じた。

  • 悪寒が、洋服屋の母親の発疹のように無数に広がっていく。

    祭の中で狂っているのは、誰でもなく、あたしたち自身なんだ

    本当に麻薬のようだ
    背中を這った寒気が全全身にまわって、ひどく、寒い

  • 何度も切り替わる視点が新鮮。エクソダスやコインロッカーのように前半で挫折することもなく読める。

  • 村上龍の2作目

    章の区切れもなく次々と登場人物が入れ替わり、全く交わりの無いストーリーが淡々と続いて読みにくい....

    主人公の瞳の中に潜む街の中で繰り広げられる荒廃した人間模様と、その腐った世界に対する破壊願望

    戦争は起こっていて、戦争による荒んだ世の中の全破壊と再生を求めると言う感情を表現したかったのか、真意は掴めない

    読みにくいがゆえに難解で、2回読み返したけど、多分、次作品『コインロッカーベイビーズ』による直接的な破壊と暴力に内包される作品なんだろうな


    それともコカインの効力が人間の本性、欲望を具現化させたのか?

    相変わらずクレイジーな作品でした。


    Android携帯からの投稿

  • 難しくて、なかなか理解しにくかった。

  • 【新歓企画】ブックリスト:「大学1年生のときに読んでおきたい本たち」
    タイトルだけでご飯が食べられますね。海の向こうの退廃的で暴力的な町と、こちら側の平和な海岸の様子が描かれている。その切り替わりが凄い。いきなりあっちに行っていきなり帰ってくる、その唐突さが上手に描かれている。だから静と動の落差が、より胸に染み渡る。物語終盤の勢いが凄い。物語の山の作り方、魅せ方、終わらせ方、爆発のさせ方、色々学べる気がします。小説を書く際に、感情の爆発だけで物語を走らせ切っちゃう方は、ためになる部分が多いかも知れませぬ。【M.K.】

  • フェリーニの「甘い生活」に打ちのめされて…。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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