遠い太鼓 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (570ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061853829

感想・レビュー・書評

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  • 9月から、慌ただしかったな。
    10月はいつも、本をたくさん読む月だったのだけど、

    今年はやっぱり本をあまり読めていない。
    良くないなぁ。

    というか、読んだ本について語れるような人も、今の私の周りにはいない。

    国語の先生たちとお茶をしても、私の読む類の本を読まれている先生がいらっしゃらなかったので、残念。

    「文学少女って感じよね。」そう言われたっけ。
     少女じゃないですけど、

     世の中には、「その一言で終わってしまう言葉」というのが、あるのだなと、思ったりもします。
    「本をよく読むあなたを私は認めています」という通告により、それ以上の言葉を求めないでくれと、
    言われているような。


    いやいや、考えすぎかもしれない。


    遠い太鼓。

    海外に住むための準備で心が疲弊してしまった村上さんの頭を、蜂のジョルジョとカルロがぶんぶんと飛び回る。


    なんか、分かるなぁ、と思った。


    小説を書いている間に、心が冷たくなってしまっている状態だとか、

    心が疲弊してしまっているときの表現だとか、


    じっと回復する様子を待つ感じだとか。


    決して同じじゃないんだけど、もしかしたら、こんな感覚に近いのかもしれない。

    私は以前付き合っていた人に、とても身勝手な言葉を吐いていました。


    「ごめん、私今、頭がお留守なんだよ。」


    絵をよく描いている時期は、総じてそうなります。
    彼のことを嫌っているわけでは全くない。
    ただ、彼に神経を向ける余裕が、全くない。
    付き合っているから、無理にでも会って、「付き合っていること」を確認しなきゃと、頑張って会う。

    会って時間がたてば、社交性が戻ってくるけれど、
    会ってしばらくは、わたしは表情すら作ることができない。久しぶりに会えたのに、にこやかな歓迎ができないで、「あなたを迎え入れることのできる状態ではない」私と私の空間に、彼を招き入れる。


    結局私は、それに耐えられなくて…つまり人のことを第一に考えらない自分の身勝手さに耐えられなくて、6年付き合って昨年別れた。

    一緒になるって、話もした。
    彼なら許してくれるような気がした。
    でも結局のところ、私はそんな許し、欲しくないんだと思った。

    自分の我儘さと身勝手さを、私は誰にも許されたくなんか、ないのだと思った。面倒くさい話だが、私は自分の身勝手さで彼が犠牲にしてる何かがあるのだということに気付けないほど、身勝手になり切れなかったのだと思う。「それでもいい」と言われるのが、何よりもつらかった。


    私は多分、これからも一人で、この矛盾と面倒くささと、自ら引き起こした孤独を抱えて、生きていくんだろうと思う。


    それならば、もっと一人を楽しまなきゃなぁ。
    今、そう言い聞かせ、心が冷たさを失っていくのを、ある日立ち止まって動けなくなってしまった場所で、私は待っています。あと、少しだけ、もう少しだけ、時間がかかりそうです。




    なにはともあれ、このエッセイを読み、村上さんの創作に没頭する時の心理状態を垣間見ることができて、少し嬉しかった。

  • 村上春樹ワールドは私には理解しがたいことがほとんどなのだが、これはとても好き。
    ギリシャに行ってみたくなる。
    そこで流れている空気に触れてみたくなる。

  • 村上春樹の旅エッセイ、また読んじゃいました。
    今回はイタリア・ギリシャを3年かけて旅した記録の本です。(何度か拠点は移してるけど3年もいるから旅っていわないかな?)
    彼の見てる視点や感性が面白いし、ユーモアもあってくすっと笑わせられる文章のセンスも軽快さもいい。とても面白かったです!

    私はハルキストではないのだけど、それでも、この旅の間にノルウェイの森が生まれたんだということも知ってなんだか感慨深かったです、って20年以上前の話なんだけどね
    それから、当時の原稿は全て手書き、出来上がった原稿は編集者に紙で渡す、これ以降の原稿はだんだんワープロを使って、という時代の流れもみえて、そういうのも面白かった。昔は今と比べ物にならないくらい大変だったのねー

    それと、今、債務危機で世界を揺るがしてる両国について、なるほどね、やっぱりね、とうなずけちゃうお国柄、というかお人柄が見え隠れして、そういう意味ではタイミングよくこの本読めたかなって思いました(笑)

    2冊続けて彼のエッセイを読んだら、ちょっと彼のファンになってしまった☆

  • 高評価のレビューに惹かれて読んでみましたが、流石はベストセラー作家です。どっぷりと春樹ワールドに浸かれました。鞄に入れて旅行に行きたくなる気持ちがよくわかります。

  • 村上春樹さんがヨーロッパで生活をしていた時の事柄を綴ったエッセイ。

  • 旅に出たくなります。
    村上春樹みたいに小説家になって外国に住みたくなります。

  • イタリア、ギリシャの生活が見えてきた気がする。改めて、日本人のマジメぶりに気付かされた。

  • エッセイ集。
    苦悩する村上春樹がとても人間らしい。
    村上春樹はエッセイが面白いと思う。

  • とにかくクスッと笑ってしまう。イタリア、ギリシャに旅行に行きたくなってくる

  • イタリアにて読了。作者の思考と旅路を辿れた気がした。30年前とはイタリアも変わっていると感じた。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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