袋小路の男

著者 :
  • 講談社
3.46
  • (80)
  • (147)
  • (285)
  • (35)
  • (8)
本棚登録 : 894
感想 : 230
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062126182

作品紹介・あらすじ

指一本触れないまま、「あなた」を想い続けた12年間。"現代の純愛小説"と絶讃された表題作、「アーリオ オーリオ」他一篇収録。注目の新鋭が贈る傑作短篇集。第30回川端康成文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 距離感の物語か、これは。とにかく、自分が日向子の立場なら耐えられん。アーリオオーリオだけでよかったな。

  • 『袋小路の男』と『小田切孝の言い分』は高校のイケてる先輩に恋した女の十数年間の話。
    大学に進学して普通に就職した地味な女と小説家になろうともがきながらバイトする男。ふたりは付き合っていないし、セックスもしない。男が入院したときは毎週末、女は東京まで通う。

    『アーリオ オーリオ』は清掃工場の制御室で働くおじさんが兄の娘の女子中学生と文通する話。
    女子中学生は未来を思う。男は過去の恋愛を思い、遥か彼方にある星々を思い、存在しない星を思う。

    -----------------------------------------------

    『袋小路の男』と『小田切孝の言い分』で描かれる男女関係では、必修科目みたいにセックスする必要はないのだと教えてくれる。
    『アーリオ オーリオ』では自分を好きになってくれた女性を、開いた窓から飛び込んできた蝶と表現する。そして、ふたりの関係が終わったあとは、開いたままの窓から出て行ってしまった蝶が戻ることは二度とない、と表す。

    間違ってるかもしれないけど、誰かの価値観ではなくて自分の価値観にしがみつこうとする感覚がすごくいいと思った。やるせない感じがたまらない。

  • この文体結構好きだな。俺もサプライズがない平穏な毎日が送りたいだけなんだ。少し村上春樹の雰囲気を感じた。事件はおこらないんだけど。

  • 最初の話だけだと、どうにもならない相手を思い続けるどうしようもない自分。でもそうするしかないんだ。みたいな、下手したらちょっとイタい女の話かとも思われかねないけれど、次の話があることで純愛感が出てくるというか。2人はきっとずっとこのままなんだろうけれど、それが正解なんだなと納得できました。

    3作品とも、穏やかでじんわりとしみる作品でした。

  • 日向子が袋小路の男にずっと惹かれ続け、叶いもしない気持ちをずっと持ち続け、誰かと付き合うことを浮気と呼ぶ。袋小路の男・小田切はそんな日向子に触れもしない。最後はきっと男女の関係になるのだろうと思って期待する気持ちは見事に裏切られた。もどかしい。
    アーリオオーリオは綺麗なお話だった。中学生と手紙の交換…無邪気で危なっかしい感じが伝わってくるし、可愛いと思った。

  • 「袋小路の男」絲山秋子著、講談社、2004.10.29
    166p ¥1,365 C0093 (2022.06.01読了)(2006.07.09購入)(2006.01.26/10刷)
    三つの短編が収録されています。「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」は、登場人物が一緒なので、合わせて一つの作品といいのかな、と思います。
    男女で在っても、人間と人間として色んな関係がありうるのかなと思います。だから、小田切孝さんと大谷日向子さんのような関係もありうるのかなと思います。
    「アーリオ オーリオ」を読むと、作家の方は色んな事を調べながら書くんだろうな、と思います。プラネタリウムとか天体のこと、清掃工場のこと、若者のこと、など。
    三つの作品の中では、「アーリオ オーリオ」が一番興味深く読めました。

    【目次】
    袋小路の男
    小田切孝の言い分
    アーリオ オーリオ

    (アマゾンより)
    大型新人作家による話題の川端康成賞受賞作。
    高校時代に出逢った「あなた」とは指一本触れないままの12年間、袋小路に住む男にひたすら片思いを続ける女を描き、選考委員に絶讃された究極の「純愛小説」。

  •  高1の大谷日向子は袋小路に住んでいる高2の小田切孝にぞっこん。袋小路の男は、成績優秀、彼女もいるのに、ソープランドに行ってばかり。そんな男に思いを告白。下着が増えた。小田切と会うたびに新しい下着をつける習慣がやめられない。決して見られることなどないのだが。腋と足のうぶ毛を剃る。私に色気がなかったのか。18年間、何もなかった。絲山秋子「袋小路の男」、2004.10発行。

  • 純文学というのは正直体質に合わないのですが、たまに妙に心地よく読めてしまう人がいます。最近発見したのですが絲山秋子さんはその一人です。そもそも芥川賞取っているので発見もへったくれもないのですが、僕的には発見。
    本作は、一人の男と18年身体的接触が無いまま執着ともいえる関係を続ける女と、プライドを保つために、自分に執着する女を縛り付けておくために、細い希望をちらちらと見せる作家志望の男。
    表題作は女が出会いから10数年執着し続ける姿を描き、2話目は男と女がどう思いながら18年を過ごしていたかの対比です。こういうの結構イライラする性格なのですが、すっと水を飲むかのように受け入れられました。なんでだかは難しいので分かりません。性的な接触が無くてもつながっていられるという所が受け入れられたのかも。
    3作目のアーリオオーリオが一番好きでした。世間的にはうだつが上がらない叔父と、叔父を慕う姪との手紙のやり取りが可愛い話です。姪のほんのりとした恋心を感じてしまうのは僕だけでしょうか?

  • ★2008年7月4日 53冊目読了『袋小路の男』絲山 秋子著 評価B

  • ??袋小路の男、小田桐孝の言い分:袋小路の家に住む男との袋小路の関係。ハンサムな小田桐に激しく惹かれた日向子だが、話したりデートはしてもらえるものの、一貫して彼女にはしてもらえず。ストレートに迫っても日向子にはわからない理屈ではぐらかされてしまう。他の男に走れば察して頻繁に連絡してくるが、戻ってくるとまた素っ気なくされる。けれどもお互いの考えてることはだんだんとわかってくる。そして、もう一編で、小田桐側の言い分、日向子からすれば勝手な言い分が語られる。最後の背中を向けたところに、長い付き合いから喜んでることを感じ取るシーンがいいな、と思う。最後まで詰まらなそうだけど、ちょっとずつちょっとずつ距離を縮めて行く感覚。以下備忘録。あなたが持っている最後の担保はカッコよさなのに、そんなのはひどい、裏切りだ/もっとも豊かな愛は時の仲裁に服するものである/おまえと縁を切るつもりはないけれど、俺は本当にいろんなことを諦めているんだ。これで答えになるのかな/けど追い詰めたりしない。しずかな気持/??アーリオオーリオ:清掃工場に勤める、理系のこと、特に星座が好きな主人公が、中学生の姪をプラネタリウムに連れていき、そこから文通がはじまり。人との関わりが苦手な三十代といろんなことに疑問を持ちストレートにぶつけてくる十代のやりとり。しつらえはほぼ違うのに、理系の父と娘のやりとり、池澤夏樹「ヤー・チャイカ」似た、涼やかな読後感。「人間は何もかも説明しようとするが、宇宙空間に言葉や数式は転がっていない。」

全230件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

絲山秋子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×