デパートへ行こう! (100周年書き下ろし)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062157216

感想・レビュー・書評

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  •  真保裕一の原点かもしれない。デパートという題材の庶民性。少なくとも都会に住む人の思い出のなかにはデパートという名の、高級で煌びやかで、ちょっと手が届かないフロアの一角に、屋上遊園地やデパ地下の試食コーナーなど、庶民が入り込める余地がある。買い物に出かけるにしても、きちんと身奇麗にして出かけてゆかねばならない少し気取った、それでいて少し幸せと夢の溢れる場所。

     そんなデパートが今、日本各地で倒産し、閉店し、テナントビルやモールに変わろうとしている。そんな時代背景に対し、デパートが生んだ多くの人物への記憶や物語を、真保裕一は、たった一夜の深夜の老舗デパートに展開してみせた。寓話のような、童話のような、レトロでノスタルジー豊かな物語に。

     この作家、『誘拐の果実』『繋がれた明日』といったシリアスで緊張感に溢れたネクラ系の物語を紡いでもそこそこに巧く、そちらが本筋というイメージが強い嫌いもあるのだが、実は、『奪取』で見せたような明るく陽気で、それでいて社会への挑戦意欲に満ちた落ち零れたちの奮起といったものを書かせると、ぴか一である。

     さらに職業人のプロ意識を書かせてもすごい。さまざまな職業(SP、海難救助員、爆発物処理班、消防士)に携わる人で綴った作品集『防壁』は、優れた短編集だと思うし、小役人シリーズと言われた初期の作品にしても、職業を題材にした人間描写がこの人の原点なのではないだろうか。

     その意味で、デパートに関わる職業人たちと、デパートに拘る客たちの物語、それこそ彼らの人生の物語がクロスする場所として深夜のデパートを存分に使ったこの小説は、素晴らしい着想であるし、そこに働く職業人の人生というものは、やはり神保イズムというべきか、これぞ、というものが込められているのである。

     「名作『ホワイトアウト』を超える、緊張感あふれる大展開!」

     と帯にはあるけれど、『ホワイトアウト』のようなシリアスかつシンプルな冒険小説ではなく、どちらかというと人情ドラマの側面が強い。だからこそ、『ホワイトアウト』よりもずっと真保裕一らしい世界がこちらの小説に深く、印象的に拡がっているように思うのだが。

  • 創業精神の崩壊、不祥事も重なる経営難の百貨店。本店閉店後のある夜、目的を秘めた内外部の侵入者対警備員対経営者の物語。不祥事の曰くや個に病む面々が地中の蟻の巣の様な闇の中、時折ゴッツンコしながら偶然以上の繋がりに本質を見直す。デパートの一夜が語るお伽噺が聞く者全てに明るい朝を迎えさせた。

  • そうそう、昔は百貨店て特別な場所だった。大食堂のお子さまランチ。ズラッと並んだリカちゃん人形。入っただけでわァ~い!ってテンションあがってたなぁ。加治川の回想するデパートの思い出に激しく同意。
    色々詰め込み過ぎた感があり、これは一気に読まないと登場人物の関連図が混乱しそう。何と言うか、引っかかるように読みにくい文が所々にあった。一文を二、三度読み直して脈絡がつかめる感じ。デパート内部の状態があまり想像できなかったのが物足りない感じもある。恩田陸さんの『ドミノ』に似てると思った。

  • 一気読みしないと内容についていけなくなる。
    ちびちび読んでいたので...。

  • ホワイトアウトは、良いできだったので一応期待は高まる。
    映画はうーんだったけどね。
    今回はダムではなく、みんなが知ってるデパートでの、ホワイトアウトの「のんびり版」ですが、まあまあ飽きることなく読了。

  • てんでバラバラに集まった登場人物があるデパートで過ごす24時間を書いた、再生とか未来への希望といったお話ですが、登場人物が多すぎかなという感じ。
    後半からラストはよかったです。じんわり。

  • 東京の、ある老舗デパートを舞台に繰り広げられる人情話(?)。

    舞台となる老舗デパートは詳らかではないですが、何となく、日本橋の某三井系デパートの雰囲気もあり、あるいは、電鉄系デパートの嘗て日本橋に存在した支店の雰囲気もあり。恐らく、複数のデパートのイメージを重ねあわせたものではないかと思います。

    ストーリー自体は、途中で何となくの予想はつきます。そして、その予想を裏切らない筋で物語は進み、終わります。そういう意味では、意外性が無い物語ですが、逆に言えば、期待を裏切らない老舗デパートの雰囲気と言うと、格好良すぎでしょうか(笑)。

    それにしても、著者の真保裕一は多彩ですね。こう言う、ホンワカする物語を描いて見たり、あるいは、歴史モノを描いたり、ハラハラドキドキするサスペンススリラーを描いたり。そういう所が、この人の作品の魅力なのかもしれません。

    面白いです。ホッコリ、ホンワカする物語です。

  • いろいろな人物が交錯する三谷幸喜 の映画の原作のような印象を受けました。

  • 合併話で揺れる深夜のデパートで、いろいろな事情を抱えた複数の侵入者があっちでばたばたこっちでばたばた。
    この形式が好きなのですが、ちょっと騒がしすぎますかね~。
    でもさすがに上手いですね。
    後から、ああ、あのセリフ、これかって合点がいったりする。

    実は『ホワイトアウト』とか読まずに映画で見た口ですが、そろそろ読んでもいいかなー。
    この方何気にドラえもんやら鋼錬やらの映画脚本書いたりしてるんですよね。
    辻真先さんみたいだー。

    装幀 / 高柳 雅人
    装画 / いとう 瞳

  • 面白かった
    ドタバタ劇

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著者プロフィール

真保裕一(しんぽ・ゆういち)
1961年東京都生まれ。91年に『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞。96年に『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年に『奪取』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門、2006年『灰色の北壁』で新田次郎賞を受賞。他の書著に『アマルフィ』『天使の報酬』『アンダルシア』の「外交官シリーズ」や『デパートへ行こう!』『ローカル線で行こう!』『遊園地に行こう!』『オリンピックへ行こう!』の「行こう!シリーズ」、『ダーク・ブルー』『シークレット・エクスプレス』『真・慶安太平記』などがある。


「2022年 『暗闇のアリア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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