小暮写眞館 (書き下ろし100冊)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (722ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062162227

感想・レビュー・書評

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  •  悪の教典の上巻を読み終わり、下巻を借りに行ったら見事に借りられていてorz

     がっかりしていたら図書館のおばちゃんが「これ!これ!」といって持って来てくれた。
     …いや私も読みたいとは思っていたけど、悪の教典みたいな暗くて重い本読んだ後だから、下巻がないなら他の本も読みたくなかったんだけどもね…ww

     断りきれずに読み始めたけど、半分くらいまで読んだら眠くて止まってしまったw
     なので、前半部と後半部で感じが違う印象になってしまった。

     10年5月刊。
     相変わらず図書館バンザイ!
     新聞か何かで見てから、もう1年くらいたったかと思ったけど、まだ半年か。

     読み終わった感想。

     せつなすぎる。

     途中で泣いて、ラストまで後半は泣き通しw
     高校生にはきつい現実だったろう…
     前半、カモメの名前あたりでは「高校生ってこんな大人な考え方するかなー」などと思ったけど、うーん。高校生だって大人と子供半分こだよな。
     
     1話:小暮写真館、2話:世界の縁側、までは、去年か一昨年読売新聞で連載してた時代物(最近本屋で単行本が平積みになってた)ような、境界あいまいな話でものすごく面白くて。
     あー、これすごく好み!主人公は高校生で、青春(死)してて、たぶん他人の抱えてるもののあとで自分の家のこと、家族のこと乗り越えて、前向きに終わるんだろうと、そんな予想をしていたんだけれども。
     
     いやー。ある意味予想は当たってたんだけれどもソーゼツだった。
     あまりに厳しい現実。
     ピカと話してるあたりで主人公英一が実はずっと抱えてたことが語られてそれで思い当たったことがたくさん。
     みんな、全員、苦しんでいたんだ、って。
     
     おまけに英一の気持ちと、垣本さんの家庭事情。
     さよならするしかなかったこと。行き先も告げずにいなくなられたこと。
     垣本さんも、英一に特別な気持ちは多少あったろう。心を開いたんだろう。
     だけど恋とかそういうものだったかな? ああいう日常になれてしまうと、そこまでは行けなかったのかも。
     再出発してほしい。
    引用:『逃げても逃げても、母親は母親だから。母親を殺しちゃいそうだと思った自分から、あんたは逃げ切れないから。殺してやりたいと思うほどのことをされたあんたは、今もそこに焼きつけられたままだから。どんなに頑張っても、自分の影を振り切って逃げることはできないから。』
     これはつまり英一にも同じことが言えたんだよね。
     いくら隠しても、自分だけは、知っている。
     あの夜、風子が苦しそうにへんな音をたてて息してたこと。
     怒られるかもしれないのが怖くて、心配だけど、ほっといたこと…………。

     英一の親の家族について。『親子にだって、相性はある。』
     その通りだよね。
     自分の大事な人を、自分の親が責める…その時の気持ちったらないだろうな。
     いくら相性があわなくても、事実、そいつが親であることは変わらないんだもん。
     そしてそのせいで「別れてくれ」って言われたら。
     親だからこそ、なおさらやりきれない。
     私でも、そうだろうな。そんな事情で絶縁することを約束したのに、死にそうだからって会いになんか、いけない、行きたくない。
     だけど、「死」が何をも許すことのできる、特別な条件だってこともわかってる。
     きらいな親でも、合わない親だからなおさら、昔のことを思い出すだろう。
    「理解しあえたら。」そういう気持ちって、普通より強いと思うから。
     死に目には会いたいと、思うだろうか?あってあげたいと?

     風子の件。
    『小さな子供が死んだら、理由が何であれ、それは親の責任なんだよ』
    『それじゃ、交通事故で死んでも?ヘンなヤツに殺されちゃっても?それでもみんな、親の責任なのかよ?』
    『その子の親は、そう感じるーーーということだよ』
     
     ピカの看病に疲れた母が眠ってしまう…………。
     ハッと気づいて、急変した風子を見た時の母を思うと、もう、他人事じゃなくて、たまらなくて本を閉じてひとしきり泣いてしまった。読み勧められなくて。
     ピカが胃腸炎だったこと、酷くうつる病気でなければ、きっと同じ部屋で近くに寝ていたろうし。
     インフルエンザにかかった子が、みんな脳症を発症するわけじゃない。しかも風子は4歳にもなっていた。たまたま、そういう、風子がかかってしまった。
     
     父親の家族(じじばば)が責めるのはまだわかる。
     だけど、他の嫁どもが責めることは理解しがたい。
     同じ母親だろ? 悪の教典じゃないけど、それこそ気持ちを推し量ることできないのか? 自分の子供を殺されたのと訳が違うんだよ?
     まぁ、これが、英一のいう「そういう人たち」ってことなのか。
     宮部さんの本には、すっごく影の濃い「そういう人たち」が時々出てきて、その差に苦しめられる。
     コゲパンに、ウソの告白をした連中もそう。垣本さんの母親と、そのろくでもない男達もそう。
     寒くなる。

     英一が、じいちゃんの納骨に参加して言いたいこと言ったことで、少しずつ変化してくのはよかったな。
     それも、また悪化するのではなくて、ほぐされていくところが。
     こんなんだけど、生きてるんだなぁ、っていうか…(臭)
     垣本さんが最後に写真、とってカメラ交換するところ、切なかった。
     映画をみているみたいな気持ちだった。
     大丈夫、大丈夫だって思えた。

     そういえばもう一つ。ユーレイについて。
     いるかいないかはわからない、コゲパンが言う「感じるだけ」私もそう思う。
     ユーレイがいるかどうかではなくてw
     強い想いが現象として現れることは、ある。あって欲しいw
     
     そういえばもう一つw
     4話での、小暮さんについての話、"楽園"で、絵を描いた男の子のお母さんの人生のことを思い出していた。
     どこの家にも、誰にも、何十年と生きて来た歴史があって、ドラマがあるんだ。
     生きたら生きただけ。

     最後に読み終わって本を観察してたら、帯の文句が目に入る。

    "もう会えないなんて言わないよ"


     深い!

  • 長かったー!
    まぁ、内容は、普通ですかね。

    高校生の少年が、心霊写真の謎などを解きながら成長するお話。

    私的には、風子ちゃんが亡くなったときの両親の心情に、ちょっと心動かされました。
    私ももしかしたら、あのとき死んでたかもしれないから。
    もしあのとき死んでたら、きっと母親は自分のこと責めたと思うし、父親は母のこと責めたと思うんだよね。ていうか結果的に私は一命を取り留めたけど、それでも父親は母親のこと責めたし。

    まぁなんとも言えない作品ですね。
    宮部みゆきさんの作品久しぶりに読んだけど、彼女こんな作品書く人だったのね。

    アマゾンで、“もう会えないなんて言うなよ。あなたは思い出す。どれだけ小説を求めていたか。ようこそ、小暮写眞館へ。”って書いてあって、それで興味持って読んでみたんだけど、それ全く関係ないよね実際wうーんでも良いキャッチコピーだ。すっかり騙されました。

  • 心霊写真、ホームドラマ+ほんのり初恋…かな?なんだかこの直前に読んだ「あんじゅう」の現代版を読んでいる気分だったけど、一気に読ませてもらいました。高校生の初々しさが読んでいて爽やかで楽しかったです。

    • ハムテルさん
      表紙の写真の意味が最後に分かるところなんてサプライズでしたね~。
      表紙の写真の意味が最後に分かるところなんてサプライズでしたね~。
      2011/10/03
  • 不思議な写真の由来を調べるうちに、その写真の関係者が心の奥に封印していたものを引き出すことになるのですが、引き出された方が心の重荷を説くようなすっきりした感じになっているので気持ちよく読み進めれました。
    封印をといた人たちの駅に止まっていた電車が再び線路を走り出すように・・・
    そしてラストの主人公とヒロインの番が巡ってきますが、痛快でもあり、切なくもあり、いとしくもありいろんな感情があふれてきます。
    本の装丁と本の内容との関係性がわかったときには感動がより深くなります。
    『小暮写眞館』大好きな作品の一つになりました。

  • やっぱり、私的には宮部さんは時代物の方が好きですね~。

  •  土地、古家あり。
     建物を潰してそこに家を新しく建て直すのがふつうだろうと誰もが思うような、古い写真館つきの土地を買い、しかも風情があっていいからとろくに改装もせず、店舗つきの住宅にそのまま住もうという。そんなことを思い立つ花菱家の夫妻は、ちょっと変わり者だ。
     そんな父母と、長男で高校生になったばかりの英一、次男で八歳の光。いまは四人で、写真館だった店舗付き住宅に住んでいる彼らだけれど、もともとは五人家族で、英一と光のあいだに長女の風子がいた。たった四歳で、インフルエンザ脳症で命を落とした女の子。

     ひょんなきっかけから、心霊探偵まがいのようなことを引き受けるようになった長男の英一を主人公に、四話構成のストーリーが進んでいきます。ままならない恋、友人の悩みや、家族のこと。そんなあれこれを抱えながら高校生活を送る英一の青春をコミカルに描く、日常の謎系ミステリ……が入り口だったのですけれども、一話一話で語られたエピソードが伏線となり、やがて絡まりあって大きなストーリーへ。
     最後はものすごい泣かされました……

     700ページと厚いのですが、読みやすく楽しいうえに、読みごたえたっぷりで(矛盾しているようですけれども)、読んで損はない一冊です。子どもたちも大人たちも、キャラクターがひとりひとり、とっても魅力的なんですよね。
     宮部さんの小説は、ストーリーテリングや読みやすさなんていう部分もすごいんだけど、とにかくキャラクターがいいなあと思います。

     もともとファンではありますが、個人的な宮部さんオススメ作品ベスト3に入りました。
     あとの二作は現代ミステリの『名もなき毒』、そのつぎが時代ミステリの『ぼんくら』。どれも切なく、ほろ苦く、けれど心温まる傑作です。

  • 「物語のすべてが詰まった700ページの宝箱」まさしくそのとおりの作品で看板に偽りなしさすが宮部さんといった作品でした。
    店舗付き住宅だった古い写眞館をそのままにして住むことになった花菱一家の物語。
    心霊写真の謎を解いていくという展開にホラーっぽいのかなっと思ったらそうではありませんでした。
    いつもながらに丹念にそして丁寧な描写を積み重ねながらゆっくりと物語は進行していきます。
    立ち上がりはちょっとスロースターターな宮部さんですが後半、やがて薬が効いてくるようにじんわりとやんわりと切なさ、あったかさが心に染みこんでいって胸がいっぱいになってしまう。
    親が子供を思う気持ち、子供が親を思う気持ち、人が人を思う気持ち、時を超えてつながりあう想い。
    そんなすべてのつながり、想いを大事にしたいと思わせてくれる作品でした。
    家族、青春、恋愛、ミステリー、ファンタジー、いろんな要素が詰まった物語。
    宮部さんならではのあったかな目線が心地よかったですね。
    英一をはじめとする登場人物の描写もお見事で特にピカちゃんがピカイチでした。コゲパンもよかったですね。
    まぁ実際にはいまどきこんな高校生はなかなかいてないんですけどね。

  • ミステリーじゃない宮部みゆきはじめて読んだかも。
    みんな前に進めてよかった。クモテツ好き。

  • 読み始めから、
    なかなかスムーズに進まない…
    真ん中あたりが非常に辛かったです。

    読み切った達成感もあまりなく、
    んー…なんか消化不良。

  • 700頁超の作品は、読み応え充分だった。
    以前にも、読もうとしたことがあったのに、なぜかその時は、1ページもめくることなく、手離していた。重たい本だけど、持ち歩いて読んだ。

    ラストの2 〜3ページでジーンと来た。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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