大震災の後で人生について語るということ

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062171397

感想・レビュー・書評

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  • 社会学

  • 橘氏の集大成的な本著。これまでの著書は冗談めいた絵空事も多かったが、本著はポスト3.11の生き方という切り口で戦後的な価値観の清算がより現実的なアプローチから力説されている。気付かされた点多し。

    「東北の被災地域では、家ばかりか会社ごと無くなってしまったひともたくさんいます。震災の年に就活をすることになったのも、被災して仕事を失ったのも、彼らにはなんの責任もありません。しかし再チャレンジを許さない日本の社会は、彼らの“自己責任”を問うのです。被災しなかった人間の既得権を守るために、被災者がより不幸になるのは、はたして正義にかなっているでしょうか。この理不尽な現実を正すために政府にできることは、まずは定年制の禁止、次に同一労働同一賃金の原則を方で定めること。そのうえで『解雇自由』の民法の原則に立ち返り、整理解雇を認めること。」

    「この国にはいま、政治を批判する怒りの声が渦巻いています。しかしそのひとたちは、伽藍の世界(住宅ローンなどでリスクを極大化した戦後の高度成長期に最適化されたポートフォリオ)に立てこもったまま、そんな国家に自分の人生の全てを預けようとしているのです。私たちにできることは、個人のリスクを国家のリスクから切り離すことです。」

  • 知識として知っておいて損はないかな。

  • これまでの著書の内容とほぼ同じだが珍しく政府への提言が含まれている。震災にはあまり関係なかったな。橘氏読んだことない人にはオススメ。

  • 人生設計のポートフォリオを見直してみよう。

  • 自分自身の人的資本を高める(知識、技能、経験、資格を高める)

    高度経済成長期まで有効であった日本社会の4つの慣習(家を買うこと、会社に定年まで勤めること、円資産を持つこと(預金または日本企業の株として)、定年後は年金で暮らしていくこと)が、現在では有効ではなく、むしろこれらの慣習にしがみつくことはリスクでというものである。そして、このリスクを回避するめに著者は大きく二つのことを勧めています。一つは、自社の倒産やリストラに備えて、転職をするために、社内でのみ通用する能力ではなく、社外の人からの評判や資格の獲得などによって自分の市場価値を高めておく。ということです。もう一つは、インフレや日本経済の悪化に備えて、世界株に連動するETFを資産の一部に組み込んでおくというものです。

  • 橘氏の考えは、残酷なようでいて、非常に現実的だと思います。
    言っていることは、非常にシンプルです。
    「何かに依存する」生き方はリスクが高いということです。
    確かに、多くの人は橘氏が提案するような生き方は、かなり難しいと思います。
    その生き方とは、氏曰く、自分自身の人的資本を高めること(知識、技能、経験、資格を高める)なおかつ、
    金融資本のリスクを分散することです。会社に従属し、不動産(住宅)を持つという生き方(今までの多くの日本人)です。

    しかし、こうした生き方では、ある「変化」(倒産、失業、病気など)が起こった時、
    最大のリスクになってしまうからです。

    94年時日本の世帯所得は640万円でした。それは15年では480万円になりました。
    不動産価格も大きく値下がりしています。明らかに日本人は以前よりも貧しくなっています。
    これから2030年にかけて、おそらく近代以降経験したことがない自体に日本は見舞われます(今も見舞われています)。

    人口は2500万ほど減り、そして労働者は1300万減ります。
    そして名目GDPを維持もしくは成長するために一人当たりの生産性を今よりも3割ほど上げなくてはいけません。
    ただ、全体的に所得が減ります。これが意味するのは、かなりの格差社会が誕生していくということです。

    ※今の日本の社会システムは今の大きな変化に対応するのが難しいのは、
     人口・労働人口が劇的に減少する自体を想定して作られていないからです。

    多くの人(中間層)が短期間で、貧しくなるという経験はしたことがありません(その逆はありました)。
    しかし今は、その中間層の多くが、貧しくなっていっています。
    これを社会学者は、日本が分断していると指摘していますが、
    個人的には、ここ10年で、日本は所得と能力で人を分ける階級社会になっていっているような気がします。

    今はその過渡期だと思っています。企業ならびに学校等で多くの場所で「選別」が行われているいるのではないかと思います。
    今、少なくない企業、職場内、学校内で起こっている事態は(精神疾患の増加、過激なリストラいじめ、自殺等)、
    目を疑うばかりです。

    より残酷な未来が訪れる中で、氏が提唱する、経済的に独立するためにはどうすればいいか?という一連のノウハウは、
    知っていて損ではないと思います。

  • 伽藍とバザールの比喩がわかりやすい。筆者の不安と注意喚起には共鳴するが、さて…

  • 人生設計とは、人生のポートフォリオを適切に管理すること。
    人的資本(働いてお金を稼ぐちから)を、金融資本に変えていくこと。
    働いて得たお金は、預金、株などの金融資産、不動産といった、金融資本に変えていく必要がある。
    日本にはマックジョブ(低賃金だが、責任や残業がない仕事)を長期安定的にやる仕組みがないので、稼ぐためには知的労働に従事するしかない。
    知的労働の世界で生き残るには、自分の能力を上げていく必要がある。
    こうしたことは大体実践出来ているような気がする。続けていけるよう、努力あるのみ。これから40代を迎えるから、正念場かも知れない。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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