- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062565158
感想・レビュー・書評
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1985年8月12日に発生した日航機墜落事故。
この事故で亡くなった乗員・乗客520名の遺体の身元確認にあたった警察官による手記。
著者はこの時の身元確認班長であった。内容は、事故が報じられてから出動命令までの動きや、実際に身元確認体制を整えて指揮するまでの流れ、確認にあたって生じた問題点や、被害者遺族や確認にあたった人たちの心情等、多岐に亙っている。
章立ては以下の通り。
第1章 出動命令
第2章 大量遺体
第3章 最初の遺体確認
第4章 悲しみの体育館
第5章 看護婦たちの胸の内
第6章 指紋、歯が語る
第7章 身を粉にした医師の仕事ぶり
第8章 遺体の引き取り
第9章 過酷な任務
第10章 極限の日々
第11章 最後の最後まで
なんでもそうだが、まずは正確な情報を得ることが大切だという事を感じる。警察、自衛隊、日航ともに墜落場所の特定に時間がかかったようで、こうなると乗客の家族だってどうやって動きをとったらよいか分からず、不安になる心だけが膨らんでいったろうと思う。
事故が真夏に起こり、墜落場所が整備されていない山中といったこともあり、まず臭いが大変。確認場所となる体育館はマスコミ対策のために窓をカーテンで覆っている。風の通り道がない中、線香の煙と混ざったその臭いは想像を絶する。
だが、それ以上に身元確認に訪れた家族の悲しみを思うと、読んでいて辛くなる。
何度も出てくるが、基本的に遺体は離断遺体がほとんどだったという。しかもただの離断ではなく、まさに肉片しかないときもあったという。それでも全遺族に確認できたというのは、すごいことだと思う。この部分については、職業意識の高さということも理由に挙げられるのかもしれないが、読んでいて宗教観というものも背景にあるのではないかと考える。本文190頁から始まる「外国人犠牲者にみる宗教観の違い」には、「日本人は来世を信じ、そこでも生きると考える。…したがって、死んだ後も完全な死体が必要になり、死体を生きた人間と同じように扱うことにもなる」(194頁)とある。そういう意識があるからこそ、皮だけでも、肉片だけでも発見したものは清拭し、細かく識別したのだろうと思う。
自分の存在を、先祖によるものと考えるか、神に与えられたものと考えるかで、死生観が異なってくるのかもしれない。
本書は遺体の確認作業を記しているためか、作業内容については乗客の遺体を対象にして記されている。
では、乗員はどうだったのだろうか。この点については、司法解剖の部分で少し触れるのみである。
「災害や事故による人身事故に対しては、一応容疑として業務上過失を適用し、事件の証明や被害者の死因究明のために、責任者を含む何人かを司法解剖することになっている」(71頁)とあり、その結果5体の遺体について遺族より解剖の許可を得たそうだが、そのうちの4体は機長、副操縦士、航空機関士、アシスタントパーサー、つまり乗員だったのである。
本文には解剖結果についても記されているが、遺体の状況がどのようであったのかの描写はない。
唯一、機長について発見された遺体が一部であったことが記されているのみである(278頁)。
読了して思ったのは、災害で死者が出た時も大変だが、本書のように企業がかかわる事故の場合は、「遺体を搬入する人」「身元確認する人」「被害者遺族」「企業側の世話人」と非常に多くの人々が関わるということ。しかも全員が辛い思いをする。だからこそ、安全であってほしいし、事故調査もしっかり行われるべきだと感じた。
この点については、機会があれば2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故と比較してみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日航機123便墜落事故の遺体確認捜査責任者であった著者の手による、520名もの尊い命の記録。
著者があとがきで語るように、「多数の人間が一度に、大量の物体と化してしまう」のが飛行機事故の特徴である。
遺体は約4万平方メートルに拡散しており、遺体同士が「合体」してしまうほどの大惨事。
想像を絶する困難の中、「最後の一人まで確認を諦めない」という意思の元、警察と医師は奮闘することになる。
使い古された陳腐な言葉に思えるかも知れないが、それでも「命の大切さ」という言葉は、重い。 -
御巣鷹山での日航機事故の検屍にあった
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事故の悲惨さ、人の執念、行動力がひしひしと伝わってきた。最後まで遺体を探すおばあちゃんの話では涙が止まらなかった。
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今迄で一番衝撃を受けた本で何度も読んでいる本。
航空事故で突然亡くなった方々の遺体の検死というものを通じて、人間の生と死を考えさせられる本だ。 -
もっと早く読むべきだったと思った。1985年8月12日群馬県御巣鷹山に日航機が墜落し520人の命が失われた事故で、身元確認班の班長となった警察官による記録である。
事故後、次々と送られてくる遺体の数の多さ、状況の日を追うごとの凄惨さにまず驚かされる。その仕事は、夏の暑さと遺体の損傷の酷さとによって、大変さが増加の一途を辿る。それでも、著者が書き続けたのは、現場を知るものだけが確信を持っていえることを伝えたかったからだという。著者は、こうした事故を正しく伝えること、無言で亡くなっていった多くの人びとが遺したことを伝えることの重要さを感じ、多くの人に読んでほしいと願っている。 -
以前「沈まぬ太陽」を読みました。この本は、実際に遺体確認作業に関わった人たちの記録です。涙が止まりませんでした。
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日本有史の中でも最悪の事故に向き合った人の手記。
重い、重すぎる。 -
JAL123便の事故処理の記録。遺体の状況の悲惨さには,文章からだけど本当に圧倒された。多くの遺体について歯型による身元確認によらざるを得なかったことは,社会に衝撃を与えた。