- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062630863
感想・レビュー・書評
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あの日なら、僕はすべてを捨ててしまうことができた。仕事も家庭も金も、何もかもをあっさりと捨ててしまえた。――ジャズを流す上品なバーを経営し、妻と二人の娘に囲まれ幸せな生活を送っていた僕の前に、十二歳の頃ひそやかに心を通い合わせた同級生の女性が現れた。会うごとに僕は、謎めいた彼女に強く惹かれていって――。日常に潜む不安と欠落、喪失そして再生を描く、心震える長編小説。
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不倫話。島本さん謎くて好き。
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お酒と音楽と一人っ子。
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初めて村上春樹を読みました。
中学生の頃にノルウェイの森を少し読んで、肌に合わずに早々に閉じた覚えがあったので、ネットで「春樹初心者ならこの本から!」と薦められていた本書を手に取りました。
結論から言うと、本書も楽しむ事はできませんでした。
私は「いい本の条件とは何か」という永遠の命題に、「登場人物が魅力的な事」と答えます。
それは例えば、東野圭吾の「容疑者Xの献身」、伊坂幸太郎の「砂漠」、有川浩の「旅猫リポート」、重松清の「青い鳥」などといった作品の事です。
前置きが長くなりましたが、私が本作を楽しめなかった理由はそこにあります。
主人公はどこまでいっても被害者意識と自己愛を拗らせているだけのようにしか思えませんでした。
彼はどこまでいっても自己中心的で、自分の欲のために周囲の人を踏みにじり、それがさも運命であったかのように大仰に自己正当化します。挙げ句の果てに出てくる言葉が「僕は傷つけたくて傷つけてるんじゃない、でもそうしないわけにはいかないんだ」だというんですから、全く盗人猛々しいとはこの事かと呆れさせられます。
主人公が嘆いているのは、自分が自分の望まない事をしているという「主観」であって、相手の悲しみへの「共感」ではないんだな、と思いました。
残念ながら本書は好きになれませんでしたが、村上春樹自体は、もう少し読んでみようと思います。 -
この作品を最後に、それ以降の新作を読むのをやめたきっかけの一冊
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作中に何度も登場するスタークロスト・ラヴァーズを聴くと衝撃を受ける。これを聴いて入ってくるものがたくさんある。
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「国境の南、太陽の西」感想
主人公の中に存在するシミをじっと眺めているかの様な話だった。
サラッと内容だけならただの不倫小説である。
しかし、一々謎が多く考えさせられてしまう。 -
率直さ
他人との関係にも現れる独りよがり
メタフォリカルでも示唆的でもない世界に生きている自分には
それはそれで新鮮にストレートでさしこまれた
恋愛の話とも思えるし失われた個人的な可能性の話とも思える
全体としてはただの自惚の強い男の話なんだけど潮の満ち引きのように感情が揺り動かされてほとんど涙ぐみそうになる
ハードボイルドとかロマンチストとかじゃなくただただ独りよがり
社会の原理に飲み込まれることで世界が悪い方向に向かう
ボガートのようなタフガイではないからレノックスのように決定的に欠落していないから
ほとんど虚勢だけど『アラビアのロレンス』を愛してるよ
独りよがりに生きることに対する諦め、区切り、人のありようを直視する
裏表紙待望の文庫化をアピールするには文庫化から時間経ち過ぎてる