- Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062645911
作品紹介・あらすじ
この戦争はなんなんや?──忘れられかけている太平洋戦争とその時代を、純粋な「少年H」の眼を通して現代に記した、著書初の自伝的長編小説。戦争のまっただ中を逞しく生きる悪童とその家族が感動を巻き起こす大ベストセラー作品。戦争を知らない少年少女はもちろん大人たちもぜひ読み継いでほしい名作!
感想・レビュー・書評
-
「欲しがりません勝つまでは」というスローガンなど一体本気で言ってる人間がいたのだろうかと思っていた。
当時の子供たちも疑いや不信を当たり前のように持っていたのだなと感じられた。子供の視線で語られる戦争の話は、悲惨さだけでなく、そのさきに希望があることを教えてくれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『少年H』下巻。
これを読んで「戦争とは何だったのか」がやっと分かった気がします。学校でも勉強したし、ヒロシマにもナガサキにも行きました。戦争を描いた小説もいっぱい読みました。戦争はダメです、悲惨ですと、表面上では理解していても、どこか他人事で自分とは違う世界のこと。そんな状態だったと思うんです。でも、読み終えた時、ストンと腹に落ちた気がしました。
子供の目から見た大人の愚かさ。戦争を続け、体面のために後に引けなくなり、周りが見えなくなっている軍人たち。自分が大人になったからなのか、大人側の考えていることも分かりますし、子供の目からはそう見えるんだよな、と改めて身を引き締める思いです。
それにしても少年Hの記憶力に脱帽。ん?ノンフィクションテイストだけど、敢えて「小説」とうたっているからには、脚色や作り話のところも多々あるんでしょうね。 -
戦争激化から終戦、そして周囲が激変していく様子に戸惑うHの下巻。
この時代の中学生はしっかりしているなぁ。
Hもそうですが、射撃部先輩・杉田さんが終戦を冷静に受け止め、銃の管理を任された身として何をすべきかを考え遂行しようとする姿勢はもう尊敬します。
こんな感想、小学生のころ読んだ時は抱えていなかったなぁ。
その頃は私も中学生になったらこんな風になるとでも思ってたのかな…w
二中の面々は先輩だけでなく先生もいろんな人がいるので読んでいておもしろかった。
田森教官の変貌ぶりはびっくりしたけど…w
後半、Hが精神的に不安定になった際の父の対応が素晴らしかった。
父の反応を見て、自分を客観的に見つめられるようになるHも流石です。
空襲で焼けてしまったミシンを修繕するシーンが素敵だったので、映画でどんな映像になっているのか楽しみ。
2013/08/10-12 -
この本中身が嘘だらけと悪名高いらしい。けど少年だったHからすれば小説に書いてあることが事実だったんだろう。お芝居とか小説は史実に忠実でなければならないという考え方はあまり好きじゃない。その時代に生きた人にとっては生きるのが必死でその人生を物語として楽しむ余裕はない。あとになって振り返って初めて物語となる。その時代の出来事に関しては捉え方は人それぞれ。この小説は嘘だらけといってもその程度の違いだと思うけどなぁ
-
文化的センスがある人は、論理的思考をしているのだな、とHの思考に新鮮味を感じた。
情報操作され、多くの人が極限に近く、自分の意思で物事を判断することが難しかったころも、Hは自分で考え、判断した。
下巻は特に、家族の関係がよく描かれていたように思う。
空襲から母と逃げ惑う場面で、父のミシンを家事から守ろうとする気持ちに涙が出た。
自殺する直前までいったはかない心理状態、母や父への反発、ちょっとしたことへのいら立ちも、思春期を経験した者はたいてい共感できると思う。
つらい夜間訓練、学校での一人暮らしは、なんでも受け止めてくれる存在や、愉快な仲間がいたから、乗り越えられたのだろう。
同じことは繰り返したくない。 -
少年Hがみた「太平洋戦争」は、今まで僕がみてきた「太平洋戦争」とは比べ物にならないものであったと実感した。
時代に「不都合なもの」となってしまったら、こういった物語も世の中から消えてしまうと思うと、とても怖くなってしまう。
読んでよかった。
また、読み続けていく必要がある一冊。 -
中盤くらいまではどんどん盛り上がっていく戦争の荒波に生きるのに必死な少年。
後半は、戦後のみんながどうしたらいいかわからない中、少年なりに模索して、やりたいこと納得のいくことを探していく。
とても共感がもてる。
思春期にありがちな心の揺れをとても細かく描いている。
筆者が、残しておきたかったという記録のようなものを感じさせられる。
-
あらすじも確認せず、
何気なく手にとった一冊。
毎週放送されるサザエさんのように、
少年Hの日常を短く綴った作品だと、
最初の頃は思っていた。
そのスタンスは最後まで同じだったが、
サザエさんのように身の回りで起きる小さな日常から
徐々に「戦争」という抗えない日常へと変化していく。
少年の目に写る「戦争」が、
とてもリアルな作品だった。