OUT 下 (講談社文庫 き 32-4)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734486

感想・レビュー・書評

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  • とんでもないものを読んでしまった。読了後、自宅の床にごろんと四肢を放り出し放心状態だった。この作品が好きだなんて、誰彼構わず言うことは絶対にできないけれど、後半からの緊張感、何が起こるのだという先を読む期待にも似た緊張感がたまらない。弥生も邦子もヨシエも大嫌いなのは、わたしが雅子に似ているからなのか。

  • 上巻を読んだ後、「獣の奏者」を読んでいたので、ちょっと遅くなってしまった。

    女性の犯罪者が主人公のストーリー。
    貧困が人間を狂気にさせる。
    悲惨、最悪、どん底な世界に入りたい方はどうぞ。
    文章力は流石です。

  • 雅子が何故あそこまでやさぐれてしまっているのか興味がある。自分たちの行動が佐竹の悪意を呼び起こし、自分たちが狙われていても雅子は冷静に対応していた印象。
    一般の主婦があの境地に達するにはそれ相応の経験がないと行き着かない気がする。
    もう少し雅子の背景が語られたら、彼女に感情移入ができたと思う。

  • 女達のクライムサスペンス

    一度闇落ちすると止められなくなる

  • おもしろいという割にはそうでも、、、

  • ミニコメント
    夜の弁当工場で働く仲間の日常が壊れていくサスペンス

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/364475

  • 帯にはついに第二の次第解体とあり、上を読んだだけでは誰が死ぬことになるのか、なぜそうなっていくのか想像もできないが、さすが桐野作品と言えようか、期待、想像を超える展開が待っている。
    ラストまでどうなるのか、死ぬのか生きるのか読めない展開が非常に面白い。

  • 20年ぶりの再読。最後まで読んでみて、佐竹という人物に抱いた感情がドラマを見た時のそれとは少し異なることに気づく。原作の佐竹の方が何故か人間味があるように感じたのは、ドラマの柄本明が怖すぎたからかもしれない。
    4人の女のうち3人は実にわかりやすく人物描写がされているが、主人公である香取雅子という人物が最後まで掴みどころがなかった。結局、かのじょはなぜ山本弥生のために死体損壊・遺棄を手伝ったのだろう。少し消化不良ではあるが、やはり抜群に上手い物語構成と筆致であっという間読んでしまった。

  • 桐野さんの1997年の長篇で、国内のミステリの賞を受賞し、彼女を有名にしたエポックメイキングな作品と思われる。
    読み始めて驚いたのは、先に読んだ『グロテスク』(2002年)が女性の独白体によるユーモアを孕んで自由闊達な、戯作風の文体の豊かさを呈していたのと正反対の、シリアスで重苦しい雰囲気が全編に漂っていることだ。この『OUT』より前の短編集『錆びる心』も『グロテスク』の方に近い、緩いウェットさを感じさせたので、このドライさは意図したものである。
    『グロテスク』と同様に、主要な人物として4人の女性が登場するが、こちらは年齢は30代から50代とまちまちな、経済的にも家庭生活の上でも厳しい状況に置かれた主婦たちだ。
    主婦であると同時に貧困な労働者であるというシチュエーションは、中流階級が没落した近年の日本では非常に普遍的な「普通の」状況だろう。さらに家庭崩壊や過重な介護等で彼女たちはあえいでいる。
    そうした余裕の無さと、殺人と死体のバラバラ切断・遺棄という重大な犯罪が、必然的にこの作品を重苦しくしている。特に前半は読むのが苦痛に感ぜられていた。ここには遊びの要素も無い。
    この作品が『グロテスク』と呼応していると思ったのは、『グロテスク』でユリコ、和恵を殺害することになる中国の青年チャンのアラビアンナイトのような幻想的な経歴談が挿入されていたように、本書で主人公雅江らと対立することになる男性佐竹が、異常性欲を軸とした神話的な物語を背負っている点である。
    生活の苦しい4人の主婦が、自らの苦境を脱して「OUT」の方向に突き抜けようとしているのに対し、佐竹は登場の時から既に「OUT」の側にいるという構造になっている。
    結末部分で雅子と佐竹が奇妙な「合一」を果たすのは極めて神話的とも言える象徴性を表しており、この部分を受け入れられるかどうかが、読者の本書に対する評価を分けることになるだろう。
    暗く重い作品で、読んでいて辛くなってくるのだが、最後は何か救われるような気分になる。もっともそれも「象徴レベル」でのことなので、リアルから象徴性へと昇華するこの文学的構造を読者がどう受け止めるかという問題になるだろう。
    私は桐野夏生さんのこの作品を、『グロテスク』と同様に、優れた「純文学」としてとらえる。もっとも、彼女の「最高傑作」ではないような気がしており、更に他の作品も鑑賞したいという欲求に駆り立てられる。

  • それぞれの人生を生きていた女たちが、ある殺人をきっかけに、地獄への道を共に歩むようになる。
    欲望、居場所、利用するものされるもの…
    別の道を歩んでいた人々の人生が収斂されていく様は、圧巻。良くも悪くも、人との出会いは、小さな偶然によって形成される。そこに、リアルがある。
    頭の回る女性から、献身的な女性、欲に呑まれる女性、さまざまな「女」を鮮やかに描き上げる作者の、人間観察力が素晴らしい。
    ラストシーンは、個人的にあまり好みではなかったが…
    手に汗握る物語だった。

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著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

桐野夏生の作品

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