文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (1408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062735353

感想・レビュー・書評

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  • 一番分厚い文庫本らしい本作を、圧倒的重厚感とともに読了しました。会話文主体でサクサク読めるとはいえ、それでもさすがに結構時間かかったす。登場人物がごっちゃになってくるっていうきらいはあったけど(美人姉妹なんか特に、誰が誰だか…)、それでもさすがに長い物語の中では、それなりの輪郭が掴めるようにはなったし、そんなに大きな問題ではなかった。色んな要素が絡み合いながら、最終的に中心に居座る蜘蛛に収斂していく展開は、ドキドキスリリングなものでした。京極堂が半分以上読み進むまで出てこなかったり、関口が最後の50ページくらいしか出なかったりっていう、違う意味での驚きもあり。女郎を題材に繰り広げられるフェミニスト論も興味深かったです。

  • 長いッ!長すぎるぞ!また引用が榎木津の台詞だし!

    今回は基督教系の女学校の呪いと、目潰し魔と首締め魔という二人の凶悪連続殺人犯、富豪織作家の謎と、男性主義と女権拡張論、蜘蛛の巣の如く張り巡らされた罠。巣の中心にいるのは誰だ…?
    キーワードは理と偶然と必然?

    各節前に時折挟み込まれる物語は、事件の核心にまつわるものなのだが、それが終盤にフラッシュバックの如く目の前に閃く。これはもはや伏線じゃなくて演出だ。小説としてはすごいことなのではないかと思う。
    普通の小説は、匂わせて思い出させることが多い気がする。でも百鬼夜行シリーズの伏線は匂わせない。閃かせる。それこそ、榎木津の不思議な力のように、数百頁も前のどこかで読んだその光景が燐くように目の前に鮮烈に浮かび上がる。
    京極堂が謎を解き明かすとき、私達はその情景をもう見ているのだ。

    最近百鬼夜行シリーズを貪るように読んでいるのだけれど、どの小説も読むのにすごい時間かかるのに、読み終わったあとその「フラッシュバックのもと」を探しに行かなければならなくて、それがとても楽しいから困る。

  • 終了日:2012・1・3、とにかくね、なんかね、前の4作に比べるとどうも、やわらかかったな…
    女権関連の話はとんでもなく心に痛いトピックだったけど(北米大学系リベラル高等教育の影響大アリ)。
    でも、なんか、あの桜色がスゴく強くて。
    解説もザッと読んだけど、やっぱり集大成というか、色々合わせたって感じ。ただ、もう前の4作の細かい内容とか忘れまくってるから困った。「狂骨の夢」と「鉄鼠の檻」がね、なんていうか、難解すぎた。姑獲鳥は2度ほど読んでるし、魍魎はアニメがあったし。この二つは大体覚えてる。
    でもそれでも、やっぱりすごかった。
    狂骨と鉄鼠に比べたら、読みやすかったのかな。
    なんていうか、事件は十分悲惨だし、つらいんだけど、なんだかやわらかかった。織作の女たちが揃って近寄りがたい感じがしたからかな。

    次女が黒幕だってのは私には珍しく早い段階でわかった。
    だって、読んでて生理的に辛いじゃない、茜さんって。
    葵さんの両性具有の下りはもちょっと活かせたのでは?と思ってしまった。
    とにかく最初は葵さんの論争が読んでて滅入ったけど、最後の最後の方ですっごい葵さんに興味を持った。もっと彼女の話が聞きたかった。
    でも碧が一番辛かったかな、読んでて。若い娘はそこまでいくか。
    一番哀れだったのは碧かも。
    真佐子さんも恐ろしかったけど。
    誰彼もが悲しかったけど、どうも女性の成せる技なのか、まあそこはやっぱり織作の神秘性か、悲しい、辛い、恐ろしいんだけども、なにか口当たりが桜色で霞がかかってた。

    杉浦も辛いけど、最後に美江さんが潔くてカッコ良かった。
    だからこの二人はまだせめて救いがあったのか。

    榎さんは珍しくしっかりしてた気がする。マスオロカはいい子だなぁ…
    青木ちゃんが好きである。愚直な青年はかっこいいよ!
    木場の旦那は相変わらずだけどかっこいいとこ見せてたじゃない!
    マチコサンはかなり胆の据わった人だなぁ。癒しの珍獣。
    いさま屋が好きすぎてどうにかなる。
    敦っちゃんと関くんと鳥ちゃんもちゃんと出て来てくれてうれしかったー!

    柴田の養子がこんな形でからんで来るとは。というか、過去の事件があちこちで入り込んできて困った。そんな細かいこと覚えてないよう!!と困った。

    京極堂は相変わらずだったなぁ…かっこよすぎるだろ…

    結論:放浪癖があったっていいじゃないか、いさま屋の嫁になりたい。

  • 読んだ感想は「難しい」の一言。
    絡新婦という中心人物が動かしてはいるけど、完璧なコントロールはできていない。
    ある事柄を引き起こすための複雑な人間関係にチンプンカンプン、事件を解決しようと動けば動くほど、相手の思惑の中。
    京極堂の憑き物落としで真犯人が「茜」とわかった後でも、祖母の「五百子」を洗脳していて、自分が真犯人と言わせるところも、どこまで仕組みを作っているのかと恐ろしい人だとつくづく思った。
    物語の形も最初に京極堂と茜の憑き物落としから始まり、そこに至るまでのあらすじという形が非常に綺麗。

  • 複層的に絡み合う物語
    相関図を作りながら読みました
    整理しながら読めてたので
    理解がしやすかったハズ?!
    さて、塗仏に移りますか

  • あなたが...蜘蛛だったのですね。

    舞い散る桜の中の二人の情景はとても美しく哀しく魅力的でした。
    累々たる骸が積み重なるお話のはずなのに美しく感じてしまう不思議...

    あちこちで起こる猟奇殺人に関係性が見い出せず、どう繋がるのだろうと思いましたが、もうそんなに繋がらなくても!という展開になってびっくりしました。
    早く桜のシーンに辿り着きたくてラストは一気読みしました。おもしろかったです。

    「鉄鼠」でも感じたけれど、あちこちとリンクしているのでいろんなものを読み返したくなります。原点はやっぱり「姑獲鳥」なのですねー。

  • 妖しく美しい。

    このシリーズで一番好きな話。
    最後まで読んで、また最初の一文に戻ってしまう。
    そしてまた読み始める。


    (購入)

  • 再読
    待望の新作が出たということで図書館にあったこちらを数十年ぶり?に読んでみた。
    うんちくが多いこの感じ懐かしい!
    以前より読書量が増えたからか、人生経験を積んだからか読みやすく感じたかな。
    でもこの作品は読みやすい方だというのも思い出した 笑

  • 京極堂では一番好きかもしれない。
    春、満開の桜の下、黒と桜色の色彩が交錯するところから物語が始まる。
    耽美や退廃とは違う張り詰めた美しさ。
    黒と桜紅の色彩の対峙。
    この最初の数ページで引き込まれます。

  • 特製の鑿で女の目をくり抜く目潰し魔事件と房総の富豪、織作家創設の女学校で起こる怪異事件。二つの事件は蜘蛛の糸のように様々なものを絡め取っていく。京極堂の動きすらも読み取る蜘蛛の正体とは……。百鬼夜行シリーズ5作目。
    すっごいものを読んだ……→

    過去作の関係者もどんどん出てくるし、今作の登場人物もとんでもないつながり方するし、とにかく登場人物の関係を把握するのが大変。でも、把握できたら後半の糸が纏まっていく感じはもう圧巻。アトラクションみたい(笑)軽い気持ちでメモ書いてたら、11枚分になりました。すごい世界観。

    人物一覧がないので、登場人物が過去作の話をするたびに魍魎やら鉄鼠やらを引っ張り出して読んでいたので、戦後日本の世界観にどっぷりハマれて最高でした。
    これだから京極堂シリーズはやめられない(笑)
    そして私の推しの榎木津がめちゃくちゃカッコいいです。今回出番多くて嬉しい。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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