13階段 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
4.07
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本棚登録 : 14284
感想 : 1605
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062748384

感想・レビュー・書評

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  • 「死刑制度」をテーマにしているので、最初から最後まで緊張しながら読み進めました。
    とある死刑囚の冤罪を晴らすべく、調査を進める2人。ラスト100ページくらいで一気に話が進むので、そこから一気読み。明かされる真相には驚愕しました。
    知らなかった職業や制度などがたくさん出てきて、とても勉強になりました。

  • 冤罪によって死刑執行をあと数ヶ月でむかえる受刑者を救うために、現役、かつ、元刑務官と服役を終えた青年が活躍するストーリー。面白かったです。
    舞台は千葉県の勝浦周辺で、海と山のある風景としてイメージがしやすく、いかにもありそうな山道などが物語の中で多く出てきます。また、刑務所の中の生活や死刑執行の細かな手続きと描写は、日常からは想像のできない内容ですが、本書を通して如何に厳しく一般から離れているかが良くわかります。
    エンディングの収まりもしっくりときて、かつ、冤罪の持つ恐ろしさ、官僚事務手続き無機質な感触、人の持つ復讐心等、ミステリーの物語の中に色々と詰まっていて大変楽しめました。

  • 凄い...絶賛されている理由が分かった.
    2転3転するが、途中で投げられたピースを予想の何段階か上で組み立てられて圧巻!!だった.
    凄い...

    (Twitterで話題?になってる死刑スイッチについての議論に対して、普通は押せないだろと改めて思えるなどした(これを読み返した時に謎なので消そう))

  • かなり久しぶりに再読。昔読んだ時に非常におもしろかった記憶があったが、やっぱりおもしろかった。
    死刑囚や刑務官が登場人物として出てくる話のため、普通に生活していては中々知ることのできない事も知れて興味をそそられる。
    人間の色んな感情が交差して物語が作り上げられており、最終的に一気に回収されて気持ちがいい。
    ただ、決して明るい話ではなく深く考えさせられる部分もあり、心に重く沈む渾身作。

  • 死刑囚の冤罪をはらすべく看守と傷害致死の前科持ちの2人が動く小説。展開の面白さに読み出したら止まらない。殺人が起こす被害者と加害者の家族への影響には想像もつかない。最後南郷はどうなったんだろう、と考えることがいい読後感となった。

  • 2004年に出版された文庫本ですが、令和に読んでも古くささを感じない骨太な作品でした。
    刑務官と前科者のバディが、ある死刑囚の冤罪を証明するために奔走します。死刑制度運用の不完全さを真正面から取り上げたうえでエンターテイメントに昇華させた著者の腕に脱帽。死刑囚舎房や執行場の描写にはその場の空気を感じさせるリアリティがあります。
    散りばめられた伏線を回収にかかる終盤の展開の目まぐるしさには思わず手に汗握ります。
    文章にとっつきづらいところもなく自然に没入できます。いちばん気に入っているのはやはり最終章の独白でしょうか。すべてが良い方向に決着するわけではなく、かといってこの結末が悪いわけではなく、どう解釈し味わうか…非常に楽しめた作品でした。
    巻末に宮部みゆきさんの解説が付いているのもポイントです。

  • 「冤罪事件の再調査を手伝ってくれないか」
     盛り場でのいざこざから、不可抗力ながらも相手を殺してしまった三上純一は、刑務所からの仮出所が決まった。帰宅後、服役先の松山刑務所の刑務官であった南郷から、法律事務所での仕事の誘いを受けた。
     捜査対象は、千葉の房総地方で起きた老夫婦殺害事件。被告である樹原亮は、犯行時の記憶がなかった。脳の障害である「逆行性健忘」により、思い出すことが出来ないでいた。唯一「階段」の記憶が残っているが、それが無罪の証拠になるには程遠く、いくつかの疑問点も、罪を覆すまでの材料とはならず、「死刑」判決が結審された。再審請求も棄却され続け、確定後7年の時が過ぎ、死刑執行の日も近いと予想される。
     冤罪である可能性を信じる支援者からの依頼により、南郷と純一は、事件の舞台である千葉県房総地域に向かった。そこは、純一が犯した事件の被害者が住んでいた街であり、純一が学生時代に補導された街でもあった。
     記憶の無い樹原の冤罪を晴らすため、新証拠を探すための再調査が始まった。

    ◇◆-------------------------------◆◇
     現代の死刑執行時には、13階段は使われていないそうです。が、奇妙な符合も。死刑判決から執行へのプロセスとして、既定の手続きが必要となる中で、13人の権力者からの決裁が必要だそう。一人、また一人と判子を押していくごとに、死への階段を上がっていく姿とダブります。
     古くより、地獄への階段として13段を踏み進めていく様は、死刑への恐怖を語る上での代名詞的存在でありました。
     死刑へのカウントダウンがプロットなのだろうかと、ページを捲ります。
     読み進めて早々に、本書は、ミステリと言うよりも、社会派の色が濃い作品であると気付きます。
     中心軸は、真相を暴く「推理小説」であることは間違いありません。それ以上に「死刑制度」にかかわる様々な視点、感情、葛藤など一方向に止まらない多方向からのアプローチは、小説(エンターテイメント)の枠には収まらない大きなテーマで描かれた作品。重厚感あふれる展開は、最後まで濃厚なテンションを保ったまま続きます。

     死刑という重いテーマに真っ向から向き合い、一つの死刑判決に携わるそれこそ多種多様な立場の人間たちの生き様が、描かれています。
     必要悪(私見)とはいえ死刑執行という荷が重すぎる役目を、粛々とこなす刑務官の姿は、固唾を飲んで読み耽る緊張感溢れるシーン。ボタンが押せない心理は、人間として理性を持って生まれたきた生き物からすると当然な事でありながら、業務上押して然るべきである理不尽さも同居しているのですね。
     閻魔大王の手先たるかの刑務官でありますが、実の所、死刑執行を望んでいないのではないか。本当は、改悛し娑婆に戻り真摯に罪に向き合うことを渇望しているのでしょう。
    「とにかく、おめでとう」
     死刑執行ギリギリで再審が決定した樹原に対する刑務官の言葉である。居並んだ刑務官全員が、微笑みの中で再審決定を通知する場面からも、その本音が垣間見えます。
     それにしても、「被害者側が全て善人ではない」が、本作でも顕著に。本作にて亡くなった人間のほとんどが、クズの類(老夫婦の奥さんの方は不明)ばかり。被害者感情ってのも、どこまで真実なのかは、現実の世界でも?なのでしょう。残念な最後を迎えても、実際に地元では清々したぐらいのことを裏で囁かれているかもしれませんし、、、

     さて、読み進めていくと、フーダニット、ホワィダニットも深みのある本格派。真犯人に辿り着くまでに、二転三転当たり前のどんでん返し。構成が巧みで、表現も上手ですね。
     最初から、純一怪しくね!?
     と思わせつつ、息子(発端の老夫婦殺人事件)が怪しいよな。となり、もしかして冤罪なんじゃ無くね、、、とも思いつつ(健忘は嘘。精神状態や疾患と刑罰の妥当性にフォーカス)、南郷って双子だよなと思ってみたり、でもやっぱり純一かよ~ってなります。
     P304における犯人の曝し方は、十角館(改訂版)のソレと同手法なので、確定でしょ。。。
     からのいやいや実は、、、の流れ。
     これはズルい。出版社が同じなので、わざとこの手法を取ったと。編集担当さん確信犯ですよね(笑)

     読み終わってみると、序盤から伏線が張り巡らされていて、それが最後にはしっかり回収されています。秀逸。
     社会的に重いテーマを読者に投げ掛けつつ、一方で純粋な推理小説として進行するストーリーは、正に二刀流。どちらも大谷某並みのМVPクラス。
     日本の小説史に残る名作と言って差し支えないでしょう。

  • おもろいおもろいおもろい

  • この小説は「一度社会の規律に背いた者が、再び社会復帰する事の難しさ」や「罪を裁く事の難しさ」であると思います。これらのテーマに沿い、元刑務官と殺人者と弁護士が手を組み、冤罪で死刑判決を受けた人を極刑前に救い出すというストーリーです。設定が難しく感じますが、作者のデビュー作とは思えない筆力で、読み始めるとスラスラ読む事が出来ました。
    途中ダレる部分もなく、最初から最後まで非常に面白かったです。

  • 基本的に一度読んだ本は読まない。
    この本は時間をおいて3度読んだ。
    私の読書人生の中で唯一の本

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著者プロフィール

1964年生まれ。2001年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。著書に『幽霊人命救助隊』、『夢のカルテ』(阪上仁志との共著)など。2011年、『ジェノサイド』で第2回山田風太郎賞を受賞。自著のドラマ化『6時間後に君は死ぬ』では脚本・監督も務めた。

「2012年 『グレイヴディッガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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