- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062748384
感想・レビュー・書評
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主人公は殺人の罪で服役していたが、仮釈放を許されて保護観察の身となっている男である。出所が許されたとはいえ、彼の前途は暗い。賠償金がまだ2700万も残っているのだ。
そこへ刑務官を名乗る男から依頼が転がり込む。ある死刑囚の冤罪を晴らしてほしいという。成功報酬は1千万。喉から手が出る金額だ。ただし、時間はあまりない。いつ刑が執行されるかわからないからだ。しかも、冤罪の証拠はこれから探さなくてはいけない。もちろん、「じつは冤罪ではなかった」という可能性もある。イチかバチかだ。
この設定がとてもハラハラする。「殺人を犯し、更生した人間」という主人公の内面も、丹念な取材を重ねたであろうリアリティを感じた。そして主人公が犯した殺人と、今調査している冤罪事件がやがて繋がる。この展開が面白い。
もうひとつ、個人的に強く印象に残ったことがある。依頼を持ち込んできた刑務官が、過去に自分の執行した絞首刑について、罪の意識に苛まれる部分である。この本を読んでから偶然YouTubeで、死刑執行がどのように行われるかを映像で解説した動画を見た。それを見て私はまるで自分が刑を実行する人間になったかのような錯覚に陥り、思わず目眩がした。それだけに、本書の刑務官のようなトラウマは実際にあると想像する。
正当な理由のある制度的な殺人でさえ、そこにかかわる人間は想像を絶する罪悪感に苦しむ。いま日本では安楽死が認められていないが、もし合法化されれば必ず「殺す人間」を作ってしまう。「安楽」という口当たりのいい言葉とは裏腹に、紛れもなくそれは「殺人」なのだ。本書と直接関わりはないが、その問題を考えざるを得なかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々に一気読みしてしまう面白さだった。
13階段というと怪談話を連想したが、死刑執行までの手順が13個ある、というのが一番の理由のようだ。忘れた頃にまた読みたい。
「裁判官が死刑判決を避ける一番の理由は、被告人が改悛の情を見せたかどうかなんだ」p84
刑罰は何のためにあるか? 応報刑思想と目的刑思想とがあり、その両者を止揚して現在の刑罰体系の基礎が作られた。カントは“絶対応報こそ正義である”と語った。
参照メモ/http://blogyang1954.blog.fc2.com/blog-entry-2207.html -
めちゃくちゃ面白かった!
死刑囚や刑務官の心情描写がとてもリアルで、死刑制度のことも大変興味深かったです。
謎が解明していく後半は一気読みでした。 -
記憶を失った死刑囚・樹原亮の冤罪を明らかにすべく刑務官・南郷と前科者・三上の謎コンビが調査を進め、一つずつ真相に近づいていく話
と、あらすじを述べたが中身はそんな単純ではなく、登場人物たち一人ひとりの心理描写が細かく描かれており、読みながらまるで映画を視ているかのような感覚が訪れる。
しかも、死刑制度に関する情報やそれに苦悩する南郷の話などを読むことで、死刑制度について考えさせられた。
話としては「真犯人は誰なのか?!」というようなフーダニットミステリー+αといった印象。
この小説は+αに無駄がなく、かつ、話としてきれいにまとまっているため読了感も良かった。
起承転結がしっかりしており、是非映画化してほしい!と思ったら、すでに反町隆史さん主演でされているとのこと。
早速見てみたいと思いつつ、今だったら三上を松坂桃李さん、南郷を内藤剛志さんでやってほしいなと思いつつ。
ちょっとページ数は多いですが、場面転換が多く良い意味で終始穏やかではないため、飽きずに読むことができると思います。
オススメの一冊です! -
面白かったし見事に色々騙された。どうなるんだろうとページを捲る手が止まらない。
死刑制度について、それを取り巻く法律について、考えさせられもした。
「死刑」と言葉で聞く機会はあれど、その実際の現場について知ることや想像することは今までなかった。でも制度として存在している以上、誰かがそれを行っているのだと思うとなんとも言えぬ複雑な気持ちになった。執行する刑務官の心情を思うと、なかなか思っている以上に大変な仕事なのだということ。自分にはとても務まらないな。。。
参考文献含め、その辺について自分でもちょっと調べてみたいと思った。 -
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その真相を突き止めるべく、刑務官・南郷と前科者の青年・三上は調査を始める。手がかりは甦った「階段」の記憶だけ。二人は死刑執行までに彼を救うことができるのか。傑作という評判通りの傑作だった。事件の謎に飲み込まれながら、続きが気になって読む手が止まらない!事件の実像が明らかになってくる後半、二転三転するストーリーはスリリングで素晴らしかった。
そして、この作品の持ち味はミステリだけではない。その中で描かれる死刑制度の在り方や、加害者・被害者感情などが絡まり合って、重厚な読み味になっている。南郷の過去、死刑執行の描写はその場に立ち会っているかのような臨場感で手が震えた。死刑の議論や意見はたくさんあるだろうけど、実際に執行している刑務官の責任の重さや人生を考えると言葉が出てこない。
「人が人を正義の名のもとに裁こうとする時、その正義には普遍的な基準など存在しない」
「あなたの生涯の罪、全能の神に背いたことを悔いますか」
「はい」
「われは、汝の罪を赦します」
その神の言葉を聞いて、南郷は頭を殴られるような思いだった。一六〇番の犯した罪を、神は赦したが人間は赦さない。
社会に生きてきて当たり前にある法と正義。法は完全ではないし、正義の形も人それぞれある。正義感の発散として、誰かを攻撃したり、自殺に追いやったりしてしまうことも現在では問題になっているよね。それを深く洞察するきっかけを与えてくれる本だと感じる。
犯罪者の更生に関しては現場の話が語られている『反省させると犯罪者になります』を合わせて読むと理解が深まると思う。被害者にとっては一生赦せるものではない。それでも法で定められた罪を償ったら、加害者は社会で生きていかなければならない。そのことは社会にとって大きな課題なんだよね。社会に負債がある人が社会のために生きることはできるのか。解説の宮部みゆき先生が書いていたこのテーマがまさに読者へと投げかけられているのだと思う。その物語の階段はまだまだ途中なのだと。 -
この話には完全な善人も、完全な悪人も登場せず、人間は誰しもそういう二面性を持ってるんだよなと実感してしまう話でした。
メインキャラ二人の友情も胸が熱くなります。 -
記憶を 喪失した 死刑囚(樹原)の、冤罪を晴らすべく、働く 三上純一 と 南郷。
死刑囚が 思い出した 記憶は、"階段"のみ…
… 極少ない 情報から、事件を探る。
1・記憶喪失の死刑囚、樹原の 単独犯行か?
2・第三者との 共同正犯か?
3・第三者が 主犯で、樹原は 従犯者なのか?
4・第三者の 単独犯行で、樹原は 罪を着せられた だけなのか?
こうした 4つの仮説を 立て、事件を追う中…
… 物語は、主人公も 含めた 登場人物、みんな疑わしく感じさせる。
もっと 暗い ストーリー を 覚悟したが…
… そんな感じも 無く、最後まで 面白かった。